人間は体の中で熱を生み出し、体の外に熱を逃すことで、体温を一定に保つ生き物。
夏は、血管を広げて熱を運びやすくしたり、
汗をかくことで体の表面から熱を逃がしています。
しかし体のまわりの温度が高くなると熱が体の中に入ってしまったり、
さらに深刻なことに体が作った熱を外に逃がしづらくなってしまうのです。
その状態が続くと体にさまざまな不調が起こります。
これを「熱あたり」と呼びます。
ダイキンはこれまで、エアコンで室内の空気を冷やして体のまわりの熱を取り、
体内の熱を外に逃がしやすくしてきました。
しかし最近の地球沸騰化とまで言われる猛暑の影響で、
体の不調を訴える人が増え続けています。
そこでダイキンは、室内の空気を冷やすことはもちろん、
室内室外を問わず、効率よく体から熱を逃す方法をはじめとする
熱あたり対策をお伝えしていきます。
たとえば、熱を体の外に逃すために、ちゃんと汗をかける体の作り方。
睡眠時に熱を逃すエアコンの使い方など。
熱あたりに関する情報を発信し、対策を普及する。
それが「みんなで熱あたりしない夏プロジェクト」。
みんなで「熱あたりしない夏」
プロジェクトはじまります。
私たちが暮らしの中で感じる「暑い・寒い」や「温かい・冷たい」は、私たちの体とその周りにある「熱」が関係しています。冷たい飲み物がぬるくなったり、温かい料理が冷めたり、体が濡れて寒く感じたりすることもあります。こうした温度の変化は、空気中や人、物体の中にある熱が移動することで起こっています。熱には温度が高いところから低いところに移動する性質があり、物体は、液体から気体になるときにまわりの熱を吸収します。このような熱の移動を普段意識することは少ないかもしれませんが、「熱」は私たちの体と暮らしに密接にかかわっています。
私たちが健康に暮らすには体温の維持が大切で、特に脳や臓器などは「深部体温」を一定に保ちながら正常に働いています。 人は「深部体温」の維持に必要な熱を体内で生産(産熱)し、余分な熱は体の外に逃がしています(放熱)。暑いときには積極的に放熱し、寒いときには放熱を抑えます。私たちは状況に応じて「放熱量」をコントロールしながら、脳・内臓・筋肉の働きに適した温度を保って暮らしています。
人体には、状況に応じて「放熱量」をコントロールできるよう、血流量や汗の量を自然に調整する仕組みが備わっています。
私たちの血液は、熱を運びながら体じゅうを流れています。血液が皮膚に近い血管を通ると、運ばれてきた熱は体温より温度が低い体の外に出ていきます。暑くなると、皮膚に近い血管を拡張させ血流を増やし、体の外に出す熱の量を増やします。
私たちは、暑くなると汗をかき、体の表面に出た汗は蒸発していきます。
汗が液体から気体に変わるときに熱が吸収され、蒸発していく汗とともに体の外へ出ていきます。暑いと汗の量が増えるのは、より多くの汗を蒸発させて、体の外に出す熱を増やすためです。
大阪国際大学 名誉教授
井上芳光 先生
人が生きるために「熱」は必要不可欠です。日々の食事から得られるエネルギーのうち約2割は体を働かすために使い、それ以外の約8割は熱になっています。人は、この熱を使って体温を維持し、過剰な熱は体の外に逃がしています。日頃、自分の体の中で熱が生まれたり、体の外に熱が出て行ったりしていることはイメージしづらいかもしれませんが、こうした体内の熱をコントロールする仕組みは、健康的な暮らしにとって大変重要です。
私たちは、食べ物や飲み物で「食あたり」や「水あたり」を起こすことがあるように、「熱」の影響で体調を崩すこともあります。その代表例が「熱中症」ですが、実は、熱による体の不調は熱中症になる前から現れます。公的機関より発表される熱中症の患者数は、熱が人に及ぼす不調のうちの氷山の一角で、さらに多くの人が熱による体調不良を引き起こしていると言われています。ダイキンの調査※でも、2024年の夏には、20歳以上の日本人の半数以上が熱による体調不良を経験していたことがうかがえる結果となりました。こうした背景の中、ダイキンは、医療従事者・生理学者・物理学者などの様々な専門家からのアドバイスいただき、潜在的な熱中症を含む熱による体調不良の諸症状を「熱あたり」と呼び、「熱あたり」の啓発に取り組んでいます。
私たちは、体に熱がたまりやすい環境にいると、皮膚の血管を拡張させたり、汗をかいたりして積極的に放熱します。放熱は自律神経によってコントロールされています。そのため、暑い中では気付かないうちに自律神経に負担がかかり続けます。また、体内の水分も汗となって減っていきます。こうした熱による自律神経の疲労と脱水は、人体の放熱機能を低下させ、「熱あたり」につながります。
「熱」の影響は、主に脳や消化器、筋肉の症状に現れます。初期段階に現れるのは、「疲れが取れない」、「寝た気がしない」、「食欲がわかない」などの症状です。こうした症状は、仕事や勉強、スポーツなどのパフォーマンスを低下させ、生産性や生活の質の低下にもつながります。ダイキンの調査※では、熱あたりを経験した人のうちの約6割が、仕事や勉強、運動などの日常のパフォーマンスの低下を実感しています。「熱あたり」は比較的軽い症状から始まりますが、油断は禁物です。そのままにしておくと、より重い症状の「熱中症」につながる場合もあります。また、軽い症状でも長く続けば、いわゆる「夏バテ」になってしまうこともあります。
レベル | 症状 | 必要な対応 |
---|---|---|
Ⅳ度 |
|
医療機関ですぐに体を冷やすなどの集中治療 |
Ⅲ度 |
など |
入院 |
Ⅱ度 |
など |
医療機関で診断・治療 |
Ⅰ度 |
など |
体を冷やす、水分・塩分補給などの応急処置 →よくならなければ医療機関へ |
日本救急医学会
「熱中症診療ガイドライン 2024」をもとに整理
https://www.jaam.jp/info/2024/info-20240624.html
など |
涼しい室内で水分や栄養をとり、 十分な睡眠をとる |
済生会横浜市東部病院
患者支援センター長
谷口英喜 先生
通常、人の体温や深部体温は、脳や消化器、筋肉が効率的に働くことができる温度に保たれています。特に暑くなると、人の体は体温や深部体温を保つため、自律神経を活発に働かせて血流を変化させたり汗を出したりして放熱に努めます。こうした中では、自分でも気づかないうちに疲労が蓄積したり水分が不足したりすることがあり、そのまま「熱あたり」を引き起こしてしまう場合もあります。「熱あたり」は熱中症や夏バテに至ってしまう前の警告のようなものでもあります。軽い症状のうちに、涼しい環境で自律神経を休めたり水分を摂ったりして体を回復させることが大切です。
大阪国際大学 名誉教授
井上芳光 先生
「熱あたり」がより進むと、「熱失神」「熱痙攣」「熱疲労」「熱射病」からなる「熱中症」へと繋がります。暑いときほど体は放熱を促そうと皮膚血管を拡張し、それが血圧の低下ひいては脳血流を減少してめまいや失神を伴う「熱失神」を起こします。多量発汗時に水のみ補給して血中の塩分濃度が低下し過ぎると、筋けいれん(熱痙攣)が起きます。発汗による脱水と皮膚血管拡張に伴う循環不全がより進むと、頭痛・吐き気などの症状を呈する「熱疲労」が誘発されます。そして、深部体温が過度に上昇して(42〜43℃)、脳機能に異常をきたして体温調節が破綻した状態が「熱射病」で生命の危険を生じます。こうした症状に至らないためにも、体と熱の関係を知っておくことは大切です。
ダイキンの調査※では、2024年の夏、20代から60代以上の日本人のうち、どの世代でも60%以上の人が「熱あたり」を経験しており、世代を問わず、熱による体調不良への意識が必要だと言えそうです。「自分は大丈夫」と油断してしまうと、「熱あたり」の症状が進行して熱中症を引き起こしてしまう可能性もあります。今後、「熱あたり」で病院にかかったり「熱中症」で救急搬送されたりする人が増加すると、医療現場がさらに逼迫することが懸念されています。
済生会横浜市東部病院
患者支援センター長
谷口英喜 先生
夏になると「熱あたり」による体調不良や熱中症の方が急増します。一方で、病院には病気やケガの患者さんがいつも通り訪れます。医療現場のリソースは一定なので夏は大変忙しくなります。普段健康な皆さんは、ぜひ「熱あたり」や熱中症にならないように気をつけてください。そうすることが、自分の健康を守るだけでなく、医療現場を守る手助けにもなります。私たち一人ひとりの小さな心掛けが、社会全体の医療の質と安全を支えることにもつながっていきます。
2025年3月、ダイキンでは、夏場の熱による体調不良の実態と日常生活や社会活動・経済活動への影響を全国47都道府県で調査しました。
詳しくはこちら「熱あたり」対策には、熱をためない「体づくり」と「環境づくり」が大切です。ここでは、効果的な熱あたりの対策方法をご紹介します。
人の体は、春から夏にかけて、放熱しやすいように血管を拡張しやすくしたり汗をかきやすくしたりするなどして、暑い夏の到来に備えます。体が徐々に暑さに慣れていくことを「暑熱順化」といいます。
近年では、気温が上昇する時期が早まったり、寒暖差が激しい日が続いたりするようになったことで、体が暑さに慣れる前に不調を感じる人が増えていると言われています。
こうした気候変動の影響からくる「熱あたり」対策のため、意識的に暑熱順化に取り組んでおくことも大切です。暑熱順化には、ウォーキングやジョギング、筋トレやストレッチ、入浴などで汗をかく方法があります。汗をかきやすい体にしていくには、2週間ほどかかると言われています。本格的な暑さが始まる前から暑熱順化に取り組んで、「熱あたり」になりにくい体をつくりましょう。
臨床教育開発推進機構 理事
三宅康史 先生
近年、4月や5月からでも真夏日が観測されるようになりました。春先の暑さに慣れていない身体にとって、急な暑さや強い日射の中で過ごすのは大きな負担で、「熱あたり」の危険性も伴います。早めの暑熱順化、すなわち早めに暑さに慣れておいた方が安全です。また、真夏になったら暑さを避けるようにすることも大切です。「熱あたり」を予防するためには、暑さに慣れておくことに加えて、エアコンなどを使った暑さを避けるための環境づくりも大切です。
体にたまった熱を逃がしやすい室内環境づくりには、血液によって体表近くまで運ばれた熱が体の外に出ていけるよう、室温を下げておくことが欠かせません。また、汗の蒸発によって放熱しやすい湿度を保ったり、適度な風の流れをつくったりすることも大切です。こうした「熱あたり」対策には、室内の温度や湿度をコントロールできるエアコンの活用が大切だと言われています。エアコンの使用を我慢したりせず、上手な活用を心掛けましょう。
夏場の冷房時は、室温が28℃程度になるような設定温度で運転し、湿度調整もできるエアコンの場合には、湿度60%以下を目安に設定しましょう。室内の温度や湿度がどうなっているか分かるよう、見えるところに温湿度計を置いておくことも安心につながります。
なお、エアコンをつけても湿度があまり下がらない場合は、除湿機との併用もおすすめです。温度や湿度のコントロールに加えて、扇風機などを使って室内に適度な風の流れをつくることも効果的です。
暑い夜、体調に違和感なく入眠したにもかかわらず、朝起きた時に倦怠感などの体の不調を感じることがあります。寝室が暑いままだと、寝ている間も自律神経が働き続けて放熱を促すため、自律神経への負担からくる疲労や発汗による脱水で、翌朝には「熱あたり」になってしまう場合もあります。特に熱帯夜は、扇風機をつけたり窓を開けたりするだけでは十分に涼しい環境がつくれない可能性があります。エアコンを使用するなどして寝室環境を快適にし、寝る前にしっかりと水分補給を行うことが重要です。
臨床教育開発推進機構 理事
三宅康史 先生
「熱あたり」を予防するためには、睡眠をしっかりとって体を回復させることが重要です。熱帯夜の暑さで目が覚めてしまったり、寝付けなくなったりすると、「睡眠の質」が低下して体を十分に回復させられなくなってしまうこともあります。翌日に疲労と熱あたりリスクを持ち越さないためにも、過ごしやすい睡眠環境づくりを意識して、質の良い睡眠がとれるように心がけましょう。
近年、暑くなったときにエアコンが使えることを確認するための「エアコン試運転」が普及しはじめています。エアコンが必要な時に使えないという状況にならないよう、本格的に暑くなる前の4月~6月前半に試運転をしておくことが大切です。また、その際に、エアコンのフィルターが汚れていないか確認したり、室外機の周辺に障害物が置かれたりしていないかも、あわせて確認することをおすすめしています。フィルターの汚れや室外機周辺の障害物は、エアコンの消費電力を増加させ、ムダな電気代の原因になってしまう場合があります。また、フィルターの汚れは、嫌なニオイの原因になることもあります。
「エアコンのしくみと電気代の関係」はこちら
東京曳舟病院 副院長
三浦邦久 先生
エアコンを使わずに「熱あたり」になってしまう人の中には、高齢者を中心に「電気代が気になる」という人や、「吹き出す風で気分が悪くなる」と言う人が多く見られます。こうしたお宅でエアコンを拝見すると、フィルターが汚れて目詰まりしてしまっている場合が多く見受けられます。フィルターの汚れが原因で必要以上に電力がかかったり嫌なニオイがしたりして、エアコンの使用を避けてしまっているようです。エアコンをお手入れし、きちんと使える状態にしておくことも大切です。
エアコンは世界に広く普及していますが、とくに暑い国々の経済発展にも大きく貢献してきました。たとえば、東南アジアで最も発展した国の一つであるシンガポール。シンガポール建国の父、故リー・クアンユー元首相は「この100年で最も影響力のある発明はエアコン。シンガポールの発展はエアコンなしにありえない」と語っています。暑すぎて仕事に集中できない環境の中、公務員が働くビルでいちはやくエアコンを導入し、人々の生産性を上げ、効率的な政府を作り上げたそうです。
エアコンを使うときの節電の工夫は、電気代を抑えるだけでなく、世界的に注目されているカーボンニュートラル実現にも貢献する取り組みです。エアコンは、家電製品のうちで最も多くの電力を消費すると言われている機器で、電力需要に伴うCO2の排出にもつながります。そんなエアコンに起因するCO2排出のうち、約9割は「使うとき」のものです。ダイキンはメーカーの責任として、エアコンを作るとき・運ぶときのCO2排出削減にも取り組んでいますが、一人ひとりが取り組む節電も、環境負荷を抑えるために大切な工夫です。
「エアコンのことから考える みんなのカーボンニュートラル」はこちら空気の可能性を信じ、追い求め、
新しい価値をくわえて
これまでになかった空気を、世界へ届けます。