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空気とくらし

専門家に聞きました

様々な専門家の
統合知で
「熱あたり」問題に取り組む

済生会横浜市東部病院
患者支援センター長

谷口英喜 先生

「熱あたり全国調査」の意義

以前から、病院で「熱中症」と診断される方以外に、もっと多くの人々が、熱が体にたまることで起こる様々な体調不良を経験していると予想されていましたが、それらの症状である「熱あたり」をこれほど多くの人(63.1%)が経験していたことは驚きです。今回は2024年の夏に関する調査でしたが、複数年で考えると国民のほとんどが「熱あたり」を経験しているといってもおかしくない結果といえます。もうひとつの驚きは、「熱あたり」経験者に世代差がなかった点です。つまり、どの世代も「熱あたり」のリスクがあるということになります。高齢者だけでなく、健康に自信がある若い世代も「熱あたり」には注意が必要といえるでしょう。

今回の全国調査で、今まで明らかになっていなかった「熱あたり」経験者を初めて定量化(規模の可視化)できたことは、今後、ますます厳しくなると予想される暑熱環境に、社会全体で、そして生活者一人ひとりがどう「適応」していくか、真剣に考える機会となることを期待します。

一人ひとりが「熱あたり」を
意識し適切に対処すべき理由

「熱あたり」の問題点は、第一に体の健康問題ですが、「よく眠れない(寝た気がしない)」「疲れがとれない」「食欲がわかない」などの比較的軽い症状のため、「暑いせいで」とは思っていても、その原因が「体にたまる熱による自律神経の疲れや脱水症状」だとは認識されていないことです。そのため適切な対処がされず、日常の仕事や勉強、スポーツや家事にいたるまで2次的な影響を及ぼし、パフォーマンスや生活の質が低下することです。国民の6割を超える人が「熱あたり」を経験しているとしたら、個人の問題にとどまらず、社会全体で考えればその経済的損失はさらに大きなものになる可能性があります。

この「熱あたり」プロジェクトに取り組む意義

この取り組みは、一般の生活者には今まであまり知られていなかった人体と「熱」の関係に着目し、様々な分野の専門家と企業が「熱あたり」の実態を通じて協創し、暑熱環境への適応・対策を世の中に問いかけることに大きな社会的意義があると考えています。

また、私のような医療現場に従事する者にとっては、この取り組みを通じて、多くの国民が「熱あたり」対策を意識してくれることで、病院にかかる熱中症患者を減らせることにもつながり、その分、他の患者さんのケアができるので、大きな意義を感じています。

谷口英喜 先生 Profile


1991年福島県立医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部附属病院にて臨床研修を開始。その後、麻酔科に所属し、救命救急センターや集中治療部にて経験を積む。2001年に神奈川県立がんセンター麻酔科医長に就任。2009年より神奈川県立保健福祉大学にて准教授として教育・研究に従事し、2011年には教授に昇任。2016年には現職の済生会横浜市東部病院の患者支援センター長および栄養部部長に就任し、東京医療保健大学大学院の客員教授としても活動。2019年慶應義塾大学麻酔科学教室の非常勤講師を務める。2020年からは済生会横浜市東部病院の医師支援室室長として医師のタスクシェア推進にも尽力している。脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ・ラジオなどを中心に多数出演(2024年9月末で累計350本以上出演)。その他、雑誌Yahooニュースをはじめ。多くの解説記事を掲載。『いのちを守る水分補給: 熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社/2023)、『熱中症からいのちを守る』(評言社/2024)など著書多数。2023年から、医療従事者の生涯教育サイト『谷口ゼミ』( https://taniguchi-seminar.com/ )を開塾。現役の麻酔科医師であり、各種専門医を取得、医学博士。

専門家に聞きました

生理学、物理学、社会環境学、医療現場など、この取り組みにご協力いただく様々な分野の専門家に、熱をコントロールすることの重要性や暑さと熱の問題にどう適応していくべきか、また、このプロジェクトの意義について、お話を伺いました。

大阪国際大学 名誉教授 井上芳光 先生「人体と熱の関係を理解し汗をかける体づくり」
東京理科大学 創域理工学部 社会基盤工学科 教授 仲吉信人 先生「社会活動持続のためにも暑熱環境への適応」
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長 谷口英喜 先生「様々な専門家の統合知で「熱あたり」問題に取り組む」
臨床教育開発推進機構 理事 三宅康史 先生「「熱あたり」への対策意識を高め「熱中症」を減らす」
伯鳳会東京曳舟病院 副院長 三浦邦久 先生「「熱あたり」対策に取り組むことが、生活者も医療機関も救う」

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