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空気とくらし

熱中症の困りごとと解決法
空気の困りごとラボ

熱中症の困りごと

家の中でも熱中症になる ! ?

総務省消防庁が発表したデータによると、全国で6月から9月の期間に熱中症で救急搬送された人数は2010年以降に大きく増加し、毎年4万人以上にのぼります。特に記録的猛暑となった2018年には9万人を超え、2019年、2020年にも6万人を超えるなど、熱中症患者は後を絶ちません。

こうした熱中症は屋外で発生しやすいと思いがちですが、実は室内でも油断できません。総務省消防庁によると、熱中症発生場所のうち最も多いのは約4割の「住居」で、2022年は39.5%となっています。

そこで今回は、住まいの中でも発症しやすい熱中症について、その主な原因と対策についてご紹介します。

熱中症のポイント

熱中症の主な原因は高温多湿

熱中症は、真夏に発症するイメージですが、まだ体が暑さに慣れていない時期にもなりやすいといわれています。特に熱中症の主な原因となる高温多湿の環境には注意が必要で、湿度が高く蒸し暑い6月頃の梅雨時や、本格的に暑くなり始める7月頃でも、熱中症になってしまう場合があります。それでは、何を目安に注意したら良いのでしょうか。

日常生活における熱中症予防指針

環境省は、熱中症のリスクを評価する指標である「暑さ指数(WBGT)」の活用を推奨しています。暑さ指数(WBGT)は、熱中症のリスクを増大する要因である「気温」「湿度」「日射・輻射」「風」をもとに算出する値です。これを気温と湿度から簡易に推定できる方法として、日本生気象学会は「室内用のWBGT簡易推定図 Ver.4」を紹介しています。こうした指標を目安にしながら、温度や湿度に気を配りましょう。



熱中症は命にかかわることも

厚生労働省人口動態統計に示される熱中症による死亡者数は1994年以降増加しています。毎年平均で600人以上の方が亡くなり、近年では1,000人以上が亡くなる年が続いています。

特に注意が必要とされているのは65歳以上の高齢者です。2020年には、熱中症死亡者のうち65歳以上の方が占める割合は86%に達しています。高齢者は、暑さを感じる感覚器の機能が低下し、暑さを感じにくくなると同時に冷房による寒さを感じやすくなります。そのため、エアコンを使うことに消極的な高齢者が多いと言われています。一方で、熱中症死亡者のうち、90%以上がエアコンを使っていなかったという実態もあります。熱中症対策にはエアコンを使うことが大切で、中でも高齢者は注意が必要ということが伺えます。



熱中症の対策検証

温度が同じでも湿度が下がると涼しく感じる

環境省が推進する “クールビズ”をきっかけに、夏場の室温は「28℃」を目安にすることが定着しつつありますが、湿度の違いによっては28℃を暑いと感じる人もいます。また、先述のWBGT簡易推定図にもあるように、室温が28℃でも湿度が高いと熱中症への警戒が求められます。そこで、同じ28℃でも湿度が違うとどのように暑さの感じ方が変わるのか、実際に熱中症対策の可能性はあるのかを検証するため、横浜国立大学教授田中英登先生監修のもと、20代から60代の男女12名(男性6名、女性6名)を対象に、「室温28℃/しつど85%」と「室温28℃/しつど60%」にて、サーモグラフィを使った可視化検証試験を実施しました。


サーモグラフィを使った可視化検証試験の結果

  • 温度28℃/しつど85%の環境で皮膚温度の上昇を確認した後、温度は変えずに湿度を60%に減少させると、12名中10名の手部や顔部の皮膚温度が顕著に低下しました。
  • 主観的感覚では、湿度の低下に伴い、快適性が向上する傾向が確認されました。

「湿度が20%変われば、体感温度は約4℃変わります」

今回の可視化検証試験では、同じ温度(28℃)でも、湿度が高い(85%)と暑く不快に感じ、湿度が低い(60%)と快適に感じる様子が男女ともに観察されました。このようになる理由は、湿度が低いと体温調節のために発せられた汗が蒸発し気化熱により体温を下げるのに対し、湿度が高いと汗が蒸発しにくく、十分に体温を下げることができずに更に汗をかき、より暑く感じてしまうためです。湿度が20%違うと体感温度は4℃違うと言われています。つまり、温度を変えなくても湿度をコントロールすることで、熱中症対策や男女の温度に対する性差の解消につなげることができます。

エアコンが苦手な高齢者は暑さ対策に扇風機を使用することも多いのですが、室温や湿度が高い状態で扇風機を使うと、室内の暑い空気を長時間受け続けることになり、それが原因で熱中症になることもあります。普段から温度と湿度をチェックして、湿度が高い日にはエアコンの使用を心がけるようにしましょう。


実験監修
横浜国立大学 教育学部教授
田中 英登 先生

医学博士。1983年筑波大学大学院修士課程健康教育学科修了。大阪大学医学部助手、横浜国立大学助教授、米国デラウェア大学客員研究員を経て、2004年より横浜国立大学教育人間科学部教授。専門は環境生理学(温熱環境)、運動生理学。

熱中症の対策方法

室温28℃&湿度40~60%が目安

温湿度計を使うなど、日頃から温度だけでなく湿度も把握するように心掛けてみましょう。湿度が高い日は要注意。湿度が65%を超えると熱中症への警戒が必要になってきます。人によっては「電気代がもったいない」「暑いけれど我慢すればいい」「温度も湿度も高いけれど暑いと思わない」と感じることがあるかもしれませんが、できるだけエアコンの使用は控えないように心掛けましょう。エアコンや除湿機を積極的に活用して室温を下げながら、湿度も40~60%にコントロールしていきましょう。



政府も熱中症の予防を強く啓発

政府は、年間1000人を上回っている熱中症による死亡者を2030年までに半減させることを目標に、熱中症対策への取り組みを2023年からさらに強化しています。その一環として、「熱中症予防サイト」を通じて熱中症の予防を強く呼びかけています。


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