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空気とくらし

専門家に聞きました

「熱あたり」対策に
取り組むことが、
生活者も医療機関も
救う

伯鳳会東京曳舟病院
副院長

三浦邦久 先生

「熱あたり」という身近に感じる概念を広めることで、「熱中症」を予防していく

熱中症患者は、自分が熱中症になるとは思っていなかった人がほとんどです。室内でも熱中症なることをテレビで見ていても、自分には関係ないと思っていて、ましてや命のリスクまでは考えが及んでいません。特に今の高齢の方は気密性の高い住宅で暮らしてこなかった世代ですので、窓を開けて風を通せば、暑さは我慢できるという記憶を神話的に信じている、思い込んでいるところがあります。

今回、裏付けとなる全国調査をもとに、病院で診断される熱中症とその一歩手前の熱による体調不良も含め、昔から言われる「食あたり」や「水あたり」のように広く「熱あたり」と呼ぶことで、生活者自身が自分にも心あたりがある健康問題として受け止め、これまで以上に意識的に対策行動をとってもらえるようにしていきたいと考えています。

「熱あたり」対策は、体に熱をためない室内環境づくりから

室内での「熱あたり」対策は、こまめな水分補給は言うまでもありませんが、基本的にはエアコンで部屋を涼しくし、体に熱をためない室内環境にすることです。そのためにはまず、目につくところに「温度湿度計」を設置して、自分の感覚で「暑い寒い」「我慢できる」を判断するのではなく、室内の温度湿度をいつでも正しく確認できるようにしましょう。

その上で、適切にエアコンを使用することです。もし室温が設定温度通りになっていて寒いと感じる時は、上に何か着る(服を着ても冷たい空気を吸うことが重要)。日中、寒い時は服装で調節し、夜、寝ているときに寒ければ、タオルケットや薄手のかけ布団をかけて寝ることが大事です。高齢の方に限らず、冷房の効いた状態でしっかり睡眠をとって休むことは、疲労の回復につながるという点でとても重要です。特に、熱帯夜でしっかりと眠れない場合は、タイマー運転ではなくつけっぱなし運転にしましょう。

これまで、エアコンは快適な室内環境をつくる家電の位置づけでしたが、暑さが年々厳しくなる中で、「からだの健康調整器具」ととらえる方がいいと思います。

「熱あたり」プロジェクトに取り組む意義

以前から医療現場では、病院を受診していない熱による体調不良者がたくさんいると推測しており、「(熱中症)0次患者」や「隠れ熱中症」というような言い方をしていましたが、今回の全国調査で、おおよそ3人に2人が何らかの「熱あたり」を経験しているという実態が判りました。この実態を社会全体で認識し、このプロジェクトだけでなく様々な機関を通じて、「熱あたり」対策が浸透することを期待します。私たちのような医療現場に従事する者にとっては、この取り組みを通じて、多くの生活者が「熱あたり」にならないよう気をつけてくれれば、病院にかかる熱中症患者を減らせることにもなり、その分、他の患者さんのケアができるので、大きな意義を感じています。

三浦邦久 先生 Profile


北里大学医学部卒業。東京大学第1外科で研修し、順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座助手を経て、順江会江東病院麻酔科部長から副院長へ。順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座稲田主任教授下で客員准教授。順天堂大学医学部附属静岡病院に勤務していた際にはドクターヘリに搭乗し、富士スピードウェイで開催された日本GTやF1を医療チームとして支えた。また、東京マラソンなどのスポーツイベントにも救急医として参加。日本救急医学会専門医など資格多数。役職として、東都大学臨床教授、第59回日本高気圧潜水医学会学術総会 会長、東京都医師会 外国人医療対策委員会 副委員長、東京消防庁救急相談センター 医長、三菱製鋼本社産業医ほか多数。

専門家に聞きました

生理学、物理学、社会環境学、医療現場など、この取り組みにご協力いただく様々な分野の専門家に、熱をコントロールすることの重要性や暑さと熱の問題にどう適応していくべきか、また、このプロジェクトの意義について、お話を伺いました。

大阪国際大学 名誉教授 井上芳光 先生「人体と熱の関係を理解し汗をかける体づくり」
東京理科大学 創域理工学部 社会基盤工学科 教授 仲吉信人 先生「社会活動持続のためにも暑熱環境への適応」
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長 谷口英喜 先生「様々な専門家の統合知で「熱あたり」問題に取り組む」
臨床教育開発推進機構 理事 三宅康史 先生「「熱あたり」への対策意識を高め「熱中症」を減らす」
伯鳳会東京曳舟病院 副院長 三浦邦久 先生「「熱あたり」対策に取り組むことが、生活者も医療機関も救う」

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