頂点部は換気や採光のための開閉可能な天窓になっており、ストーブのエントツを出すこともできる。
四季を通じて快適な、遊牧民の住まいの知恵
モンゴル高原に点在する丸いテント。遊牧民が住む移動式住居「ゲル」である。
ゲルは中心の2本の柱によって支えられた構造で、屋根部分には放射線状に梁が渡され、
これに羊の毛で作ったフェルトをかぶせればほぼ完成。壁の外周部の骨格は木を組み合わせた
蛇腹式のため設置も解体も容易で、親戚一同が総出で作業すれば1時間ほどで出来上がる。
寒い時はフェルトを二重巻きにする。中央部に置かれたストーブは煮炊きと暖房を兼ねるので、氷点下まで冷え込む夜も夕餉の匂いとぬくもりに包まれる。暑いときはフェルトの床部分をめくり、高原の澄んだ涼風を取り入れるなど、四季を通じて快適に過ごせるよう工夫されている。
マンションが林立する首都ウランバートルでも、今なおゲルで暮らす家族も多い。大自然に生きてきた人々の知恵を大切に受け継ぐこと。それが究極のエコにつながっているのかもしれない。