活動レポート
2014年4月-2015年3月の活動レポート
河畔林の再生作業では大きな一歩を踏み出しました
カツラの森、命あふれる川の復元事業
岩尾別川沿いにカツラの苗木を植えました
岩尾別川沿いにかつての森をよみがえらせるため、過去3年間は、苗木がエゾシカに食べられてしまうのを防ぐ柵を川沿いに設置したり、カツラの苗木を苗畑で大切に育てたりしてきました。そして、2014年5月、とうとうカツラの苗木177本を柵の中に植樹し、「育て」「植える」という一連の作業が形になりました。
雨の少なかった6~7月ごろは週に1~2回ほど水撒きをしましたが、それ以降は適度な降雨もあり、順調に生育していることが確認されています。冬には記録的な降雪があったものの、シカが柵を越えた形跡はありませんでした。
新たな防鹿柵の設置も進めており、2014年にはダイキン従業員を含むボランティアが参加して、200メートル分が完成しました。
ボランティアのご協力のもと、苗木を植え込みました
9月ごろの苗木の様子。順調に枝葉を伸ばしています
岩尾別川に設置した防鹿柵
自由な川の流れを取り戻すため、人工の土手を撤去しました
昔の河川整理で造られた土手は、川幅を狭めるだけでなく、水が自由に流れる邪魔をします。本来の岩尾別川の姿を取り戻すために、 2014年7月に人工の土手を撤去する工事を行いました。
土手があったところに水が流れるようになったり、下流へ向かって2股に分かれたりと、自然な流れの川へと変化しつつあります。
生態調査の結果を報告して専門家の意見を聞いています
豊かな森と川をよみがえらせる取り組みとして、岩尾別川の周辺に棲んでいる生き物たちを調査し、現在の森の姿を明らかにしようとしています。その調査の結果を、2015年2月の報告会で共有し、この調査にかかわる多くの関係者と意見を交換しました。
たとえば、岩尾別川にはオショロコマ(イワナの仲間)などの魚が数万匹のレベルで棲んでいることがわかりました。また、魚の行き来を妨げる人工の魚止め(ダム)より上流にも、魚たちが棲むのにより良い環境が残っています。やがて上流と下流を魚たちが行き来できるような環境になれば、魚たちにとってさらに棲みよい環境になるかもしれません。
知床の人とヒグマの共存事業
既存の電気柵を整備しつつ、新たな区間への設置を完了しました
ヒグマたちが冬眠から目覚める雪解けの季節から、彼らが再び眠りにつく秋の終わりごろまで、ヒグマたちが人の生活圏に出てこないように電気柵を稼働させています。
2014年は、7月まで順調に稼働していたものの、8月に知床半島を襲った集中豪雨による土砂崩れが羅臼町の各所で発生しました。一部の道路が通行止めになるほどで、あちこちで土砂崩れがラインを切断してしまったり、電源となるソーラーパネルが土に埋まってしまったり、川の増水で流されてしまったところもありました。こつこつと修理をすすめ、8月中にはすべて通電できるようになりました。
12月には羅臼市街地の北側に新たな電気柵の設置を開始しました。作業は順調に進み、根雪が深くなる1月下旬までに完成させることができました。春に雪が解けてから通電を開始しています。
また、山で暮らす動物たちに対する電気柵の効果をくわしく調べるため 、センサーカメラを2地域に2基ずつ設置しました。
ベビーラッシュの2014年。ヒグマたちの親子関係が明らかになってきました
ヒグマたちの遺伝子を分析したり、GPSによる行動パターンを調査したりすることで、知床半島の西側のルシャ地区には10頭あまりのメスが定住していることが判明してきました。2014年春には 、驚くべきことに、そのうちの7頭のメスが16頭の子どもを産んでいました。通常、ヒグマの子どもは1頭や2頭であることが多いのですが、3頭もの子どもを連れているメスグマもいました。子どもたちが今後どのように行動していくのかは、これからの興味深い観察テーマです。
そして、北海道大学獣医学部野生動物学教室によって行われた遺伝子分析によって、ヒグマたちの親子関係も明らかになってきました。これだけ多くのヒグマたちの血縁関係がわかっている地域は、世界でもほとんどありません。
最も頻繁にみられるメスグマ5頭と、彼女らの子どもたち
クマたちの家族関係
※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。