Theme 1|知財職を選んだ理由
田中
就活の時は、研究職と知的財産(以下、知財)職を迷ってました。
研究は、大学では自由にやりたいようにできたので好きでしたが、会社ではお金や商品化の問題で自由に研究できないのではないかと懸念していました。一方で、知財職は色んな研究に携われる職業であることや、知財そのものが会社の武器になることに面白さを感じて、最終的に知財職を選びました。
岩田
わかります!自分も企業の研究は自由にできないイメージがありました。知財職なら手に職をつけられるんじゃないか?と思って選びました。あと研究の話を聞くのが好きというのも理由の一つです。知財職は色々な研究内容を聞く場面がありそうだと考えていました。他社の知財系インターンに1週間参加して、ある程度仕事のイメージができたのも飛び込むきっかけになりました。
熊崎
そうなんですね。私は就活を始めた頃、研究開発職の方のお話を伺う機会があって自分に合わないように感じました。それで研究開発職以外で大学院まで学んだことを活かせる仕事を探していました。そのときふと、中学生の頃色んな職業の本を読み漁っていた中に弁理士の本があったことを思い出して、今の私に合うかもしれないって思ったんです。それがきっかけですね。
Theme 2|現在の担当業務・専攻と担当分野の一致
クリアランス調査:自社が開発する商品が他社の特許などの知的財産権を侵害していないか確認する調査。
他社機調査:他社の空調機を分解して、当社の特許に抵触していないか確認する調査。
岩田
僕は化学系の出願・権利化業務を担当しています。
他には海外のどの国に出願すべきかを事業部と検討したり、クリアランス調査をおこなったりしています。知財の業務以外では飲み会の幹事をやることもあります。
熊崎
私は同じく出願・権利化業務を担当していますが、空調関連の特に要素部品を担当しています。勉強のため要素部品に限らずいろんな分野の出願をちょっとずつ担当しました。
クリアランス調査や他社機調査にも関わってます。最近はグローバル知財会議の準備にも携わりました。
田中
熊崎さんと同じで、空調関連の出願・権利化業務を担当していますが、その中でも特に基礎研究、研究開発を担当しています。
クリアランス調査や他社機調査もおこなうことがあるけど業務全体としては出願・権利化業務のウエイトが一番大きいです。
熊崎
二人もクリアランス調査を行っているけど、クリアランス調査ってもっと年次が上の方しかやらないと思ってなかった?私は、一年目でもどんどん関わらせてもらえるのって結構意外でした。
二人は何か入社してから知財の業務でイメージと違うと感じたことってありますか?
田中
僕は特許を活用するとか、権利化する以外に社内の人のための制度があることをあまり知らなかったです。
岩田
社内向けの制度って職務発明について補償金を支払う制度と、差別化技術や事業貢献が期待される技術等を発明した従業員を表彰する制度のこと?
田中
そう。そもそも何のための制度なんだろうと思ってました。今はどっちも創造活動の活性化のための制度だと理解していて、制度の対象になる特許について実際に製品に使われているのか、どんな技術なのかなどを評価する業務にも携わっています。
岩田
確かに管理業務的な側面って就活の時は印象になかったですね。
僕は「グローバル拠点の支援」の具体的なイメージがなかったです。実際に何回も海外拠点に出張して現地に入り込んで知財活動してるって聞いたときは驚きました。
ところで、二人は大学では化学系の専攻ですが、機械系や電機系の特許を担当するのは大変じゃないですか?
熊崎
基本的な専攻は一致してないけど、化学工学を専攻していて熱力学や流体を学んでいたから、その知識が風の流れや熱の移動といった技術の理解に役立っています。でも通信とか電気回路とかの電子系の出願は結構勉強に苦戦していますね。
田中
機械系の知識はほぼゼロで入社してから学び始めました。もう本当に全てが初めてで自分で調べたり、発明者の方に話を伺ったり文献を読んだりしながら担当しています。
僕は分析化学を専攻していたけど、仕事に直結するような分野ではないから就活のときから専門は気にしていませんでした。
熊崎
私は元々就活の時から機械系をやりたいと思ってました。化学系は目に見てわからないけど、機械系は目に見えて動いているところがわかることに魅力を感じていて、就職してから勉強頑張ろうと。
田中
なるほど。岩田くんは化学専攻だったから苦戦せず取り組めました?
岩田
僕も最初は結構苦戦しました。大学で低分子の有機化合物の化学反応について研究していたけど、フッ素化学や高分子化学は大学で授業を受けたこともなかったから配属当初は大変でした。
社内資料とか本とかでも勉強したけど、開発の方々が気さくに教えてくれるので質問も大事だなって日々感じています。
Theme 3|知財部の教育
熊崎
入社前はここまで一対一でメンターがしっかりついて指導頂けるっていうイメージはなかったです。配属当時は毎日朝夕2回の打合せをしていただいて、朝はその日一日でやることを確認し、夕方は業務報告とその日出てきた疑問を質問していました。
田中
配属当時は一緒に指導してもらってましたね。今はどうですか?
熊崎
今では定例の打合せは週1の業務報告だけですが、業務報告以外にも出願・権利化業務を行う中で都度口頭や打合せを通して相談しています。
田中
僕も似たような進め方ですね。普段の業務について相談するのはもちろんのこと、知財担当としての考え方も学ばせていただいています。
岩田
どんな指導ですか?
田中
例えば、発明者との打合せでメンターが「他社は同じようなことを実施しているのか」と発明者に質問していて、その質問意図について、「発明を広く守るためには、他社が実施していることを知財担当が聞かないといけない」と指導を受けました。他社に実施させないために出願するっていう意味合いを学び、それ以来自分でも意識して聞くようになりました。
岩田
なるほど。確かに大事な視点ですね。
業務相談だけじゃなくて、技術背景を解説してもらって発明の理解を深めることもよくあります。
田中
技術理解を深めるって話だと、僕と熊崎さんは社内で空調基礎の講座を受けさせてもらいましたね。実機を用いて説明してもらえて一年目から空調の基礎知識が身につきました。
熊崎
技術の面でのサポートも手厚いけど、私たちは理系だったから法律の勉強についてサポートする仕組みがあって助かっています。
一年目からJIPA(日本知的財産協会)の研修や外部の弁理士通信講座を受講させてもらって。
岩田
社外のセミナーでも行きたい!って手を上げると結構気軽に参加させてもらえますね。
田中
そうですね。あと入社してから驚いたのは海外の特許事務所の方々が来社されたときに各国の特許法の改正や判例についてセミナーしてくれることです。
実際にその国で実務をされている方から教えてもらえるから贅沢だなと感じます。
岩田
確かに。それに海外の方と話す機会があると、社外で英会話レッスンを受講させてもらっているのが役立ちますよね。
熊崎
セミナーではないけど、法改正とか知財関連のニュースがあると部内でメールが流れてきていち早く情報をキャッチできるのもありがたいです。
Theme 4|印象に残った仕事
岩田
出願を権利化する仕事は楽しいですね。特許庁からの拒絶理由に対して意見書案を検討していたとき、当初は、説得力のある反論が思い浮かびませんでした。発明者と議論を重ねた結果、「技術的にはこう解釈するのが自然」「先行文献とは実験条件が違う」など、主張の材料を聞き出せました。このとき、パズルのピースがはまる感じがして楽しかったですね。
田中
わかる!権利化業務で、意見書とか補正書の内容を考えていくところは面白いよね。審査官が言っている内容を当然理解しないといけない。それプラスで、発明の本質から何か主張できることはないかっていうのを、発明者の人と話しながら探っていくっていうのが面白いと感じます。
熊崎
二人とも権利化業務が楽しいと感じているんだね。私は、他社機調査も面白いと思っています。特許と製品とを見比べていく中で、特許で使用されている用語の意味とか、製品を言葉でどう表現すべきなのかとか、そういうところに関して学ぶところが多くて楽しいです。
岩田
実物を見られるのはいいですね。侵害立証も比較的しやすそう。
田中
ところで、この仕事をしていて、「大変」とか「難しいな」って思うときはあります?
岩田
期限の近い案件が重なったときは大変でした。田中くんは?
田中
会議のファシリテーションですね。発明者とか特許事務所の人と仕事をするときって知財の人が間に立つことが多いので、ゴールに向けて進めるようなファシリテーションが必要ですけど、慣れていないのもあって難しいと思っています。熊崎さんは何かある?
熊崎
うーん、従来技術と新しい発明との差異があまりないように見える案件の出願業務ですね。そのときは検討を重ねてなんとか出願したけど、大変でした。
岩田
差異がないように見える出願は多いと思うけど、どんな検討をしましたか?
熊崎
やっぱり図面だけじゃわからないことがあって。実物を見せてもらいながら、発明者の人になんでこの構造を採用したのかというところの背景ごとも改めて聞くようにしました。二人も同じような経験ない?
田中
僕も空調分野を担当しているのでよくわかります。やっぱり実物を直接見る機会があるっていうのはすごくありがたいです。化学では図面や実物を見ることはあまりないと思いますがどうしていますか?
岩田
新しい物質・材料がどんな物性・特性をもっているかを理解するために、実験データを見せてもらいます。従来技術からの変更点がわずかであっても、実験データで顕著な効果の差が認められれば特許になる可能性が高まります。
田中
なるほど。空調などの機械系と化学系では同じ業務でも違いがあって面白いですね。