エアコン需要が増え続けるなかで電力消費量を抑制していくには、再生可能エネルギーの普及に加えて省エネエアコンの普及が重要であると、国際エネルギー機関(IEA)が2018年5月のレポート「The Future of Cooling」で提言しています。
そのためには、メーカーによる省エネ製品の開発だけでなく、消費者にとって省エネ製品を選びやすくする適正な省エネ基準が必要です。
ダイキンはIEAの提言以前から、電力需要の増加が予測されるインド・アセアン地域の新興国で省エネ性の高いインバータエアコンを提案してきました。
また、さまざまなステークホルダーと協力し、省エネ推進のための基準づくりにも取り組んでいます。まだエアコンが普及途上で適正な省エネ基準のない新興国では、運転時の電力消費量の大きいエアコンも市場で流通しており、エネルギー問題の要因になっているからです。
基準づくりの一例として、インドでは、政府機関へ期間効率の計測方法などの技術的な支援を行ったことが、エネルギーラベル制度の導入につながりました。これにより、外気温に応じて最適な運転をするインバータエアコンの省エネ性能を消費者が認識できるようになり、電力需要の低減につながっています。
2020年7月、ブラジルでエアコンの省エネ基準が改正されました。同国と日本の産官学にNGOを加えた連携によって実現したもので、ダイキンも参画しました。
ブラジルでは、経済発展に伴う電力不足が懸念されているにもかかわらず、安価で電力消費量の大きいエアコンが普及しています。これは、長年改正されずにいた従来の省エネ基準では市場の9割の製品が最高ランクに分類され、省エネ性能の優劣を消費者が判別できなかったためです。
そこで、性能の違いを明らかにすべく、ダイキンと現地の大学、NGOなどが実証試験を2018年1月に開始。インバータエアコンによって電力消費量を約6割抑制できるという結果を得ました。
さらに2018年3月、独立行政法人国際協力機構(JICA)がこの活動を民間連携事業に採択したことをきっかけに、日本政府との連携がスタート。ダイキンは大使館や経済産業省などとともに実証試験の結果を示しながらブラジル政府へ基準改正の必要性を訴え、日本での視察や技術指導を実施。課題と対策について繰り返し話し合いの場を持ちました。約2年にわたるそうした活動が、ブラジル政府の新たなエネルギーラベル導入につながりました。
エアコンは世界の人々の暮らしに不可欠である一方、多くの電力を消費し気候変動に影響を与えます。だからこそ、ダイキンが世界中で省エネ製品の開発や普及に取り組み、「2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ」の環境ビジョン達成をめざすことが重要だと考えています。
ダイキンは今後も世界各地で専門的知見を生かして情報提供や技術支援を続けていきます。さまざまなステークホルダーと協力し、自社だけでなく市場や地球環境も持続可能なしくみづくりに取り組むことで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
JICAの事業で実施した日本視察や実証試験によって、ブラジル政府機関の代表者たちがエネルギー効率やインバータエアコンによる効果について理解を深めることができました。さまざまな技術的インプットが、ブラジルの省エネ政策の改善につながりました。
気候社会研究所(iCS)
エネルギー効率化イニシアチブ コーディネーター
Kamyla Borges 氏