気候変動への対応
ダイキンは、グローバルに事業を展開する空調機器メーカーとして、人々に安心で快適な空気を提供しながら地球温暖化という課題を解決するために、エネルギー消費量を抑制することを使命と考えています。そのために製品のライフサイクルごとに環境影響を定量的に評価し、電力消費の少ない製品やサービスを開発するとともに、製品の組み合わせによる建物全体のエネルギー最適化などを進めています。
製品のライフサイクルごとに環境影響を定量的に把握するLCA(ライフサイクルアセスメント)の手法を用いて、エアコンの温暖化影響を評価しています。
エアコンによる温室効果ガス排出量は、使用時の影響が最も大きく、次いで冷媒による影響が大きくなっています。そこで、この2点の環境影響低減に最も注力。消費電力を低減できるインバータ技術の搭載に加え、低温暖化冷媒R32を採用し、その特性を生かした省エネ化を進めています。2020年度はライフサイクルCO2排出量を10年前に比べ、住宅用で19%、業務用で26%削減しました。
エアコンにおいて、設計から製造、使用、廃棄に至るライフサイクルのうちCO2排出量が最も多いのは使用段階です。そのため、ダイキンでは、製品の環境自主基準において、使用段階における省エネ性の項目をより厳しく設定し、製品の省エネルギー性向上に注力しています。
店舗・オフィス用エアコン「スカイエア」シリーズ「EcoZEAS」の8HP/10HPクラスについて、省エネ性能を高めて2020年4月に発売しました。
低温暖化冷媒R32を採用し、使用する冷媒の量を減らしました。また、高効率スイング圧縮機を搭載することで運転時のエネルギー消費を抑え、APFを従来機と比べて17%向上させました。
また、北米向けVRV用BSユニットでは、連結方法を従来の並列から直列に変更することで、製品単体だけではなく空調システム全体でもライフサイクルCO2の削減を実現しています。
2018年7月発売の業務用マルチエアコン「VRV6」は、オールマイクロチャネル熱交換器を採用し、高い省エネルギー性能を発揮する製品です。同年8月には、低温暖化冷媒R32を業界で初めて採用した「GREENマルチ」を発売。この製品の地球温暖化係数(GWP)×冷媒量は、従来のR410A冷媒を用いた2011~2013年機種の平均値に対して約79%削減可能。これは、キガリ改正の2029年目標達成に相当する数値です。
2020年4月には新機種「VRV X」を発売しました。マイクロチャネル熱交換器の冷媒流路を溝付きにすることで表面積を拡大。これにより熱交換効率を高め、業務用マルチエアコンにおいて業界トップの省エネルギー性能※を実現しました。また「VRV X」は、室外機の構造を改良し、近年相次ぐ猛暑や地震・台風への耐性を高めた製品です。
「VRV X」に採用した熱交換器の構造
ダイキンの考案した「レトロフィットメンテナンスプラン」は、既設の業務用マルチエアコンの省エネ性を向上させるサービスです。平成28年度省エネ大賞 製品・ビジネスモデル部門 経済産業大臣賞を受賞しました。
レトロフィットシステムは、空調機の頭脳にあたる「制御基板」と、心臓にあたる「圧縮機」を最新の部品に交換することで、交換前に比べて年間13%の消費電力削減を実現します。同システムで使用する部品の重量は、業務用マルチエアコンを更新する際の3分の1以下であり、省資源にもつながります。
サービス提供開始以来、対象機種の拡充を進めており、2020年度は4シリーズをラインアップに加えました。2021年度は冷暖同時運転が可能な冷暖フリーシステムの空調機へも対象機を拡充する予定です。
TOPICS
全熱交換器ユニット露出設置形「ベンティエール」は、小規模空間に設置できる業務用換気機器です。室内の冷気や熱気を逃がさないエネルギー回収装置を内蔵しており、既設エアコンの省エネ性を落とすことなく効率的な換気を実現します。一般的な換気機器を設置する場合と比較して、消費電力の増加を約26%抑制※できます。その省エネ性能と、既設建物に後付けで簡易に設置できる点が評価され、2020年度省エネ大賞において製品・ビジネスモデル部門の「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。
カフェなどの内装にも馴染むデザインにしたことで、露出設置形でも店舗に採用しやすく、換気について利用客に説明しやすいという効果もあげています。
露出設置形「ベンティエール」の設置例
2020年12月、空調機の新たな遠隔監視サービスとして「Ene Focus α」をリリースしました。遠隔監視データをもとにユーザーごとに応じた省エネ運用スケジュールを自動化し、定期的にお客様へ運用改善を提案することで、空調使用における継続的な省エネを図ることができます。
「DESICA(デシカ)」は、水配管を必要とせず除湿と加湿ができる調湿外気処理機です。高効率の水分吸着材と熱交換器を一体化させた「ハイブリッドデシカ素子」を搭載し、エネルギー消費量を従来の調湿外気の約6分の1(当社試算)に低減しました。
2012年秋には新築戸建住宅向けに住宅用全館調湿・換気ユニット「DESICA HOME AIR」を発売。1台で延床面積120~200平方メートルの住宅の24時間換気が可能で、一年中、すべてのお部屋を快適にコントロールすることができます。この製品は業務用「DESICA」と同様、水配管がなくても除湿と加湿が可能。床置形のため、お客様が簡単に高性能フィルターの交換・清掃ができるなどメンテナンス性にも優れています。高品質な空気環境を省エネルギーで実現する本機は、すでに多くのご家庭で採用されており、高い評価をいただいています。
エアコンは豊富なラインアップから選べ、多彩な組み合わせで温度と湿度のベストバランスを保ちます。
ダイキンは8~30馬力クラスの空冷中小型チラーをフルモデルチェンジし、低温暖化冷媒R32に転換した製品を2021年2月に発売しました。同馬力クラスの製品にR32を採用するのは業界で初めてです。
従来のR410A冷媒よりも地球温暖化係数(GWP)の低いR32を採用するだけでなく、オールアルミ製マイクロチャネル熱交換器によって冷媒充填量を大幅に削減し、業界トップクラスの環境性と省エネ性を両立しました。
工場で需要の多い空冷中小型チラーに、日本国内で初めてR32を採用することで、産業用途における環境負荷低減と省エネ促進に貢献していきます。この製品は、コンパクトエアハンドリングユニットと組み合わせることで、コロナ禍のなかでセントラル空調市場においてニーズの高まる換気量増加も実現することができます。
「空冷ヒートポンプチラー10馬力(左)、30馬力(右)」
2019年11月に発売した省エネ住宅対応型ルームエアコン「うるさらX Aシリーズ、DXシリーズ」は、2019年度省エネ大賞において製品・ビジネスモデル部門の「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した製品です。
近年増加する高断熱の省エネ住宅では、外気温の影響を受けにくいことからエアコンにかかる負荷が低く、圧縮機が低速運転する時間が長くなります。受賞製品は、低速運転時にも高効率で動作する独自の圧縮機を搭載。一次エネルギー使用量を最大13%削減します。また省エネ住宅では、夏場に冷房を強めると冷えすぎる、冬の暖房時に吹き出す風を冷たく感じるといった課題がありました。これらの課題を、進化させた除湿・気流制御の機能で解決しています。
「うるさらX」