ダイキン工業株式会社

2015年度:環境

日本の環境技術をグローバルスタンダードに──地球温暖化影響の抑制に貢献する新たな市場環境を創り出す

DAIKIN’S APPROACH

エアコンの気候変動への影響を緩和する環境技術を普及させるために

エアコンは人々に豊かで生産性の高い暮らしを提供する一方、冷媒として使用されるフロンと電力消費に伴う気候変動への影響は看過することができない社会課題です。特に経済成長が見込まれる新興国ではエアコンの需要の拡大に伴って温暖化影響も深刻化すると予測されています。こうした国・地域に低温暖化冷媒や省エネ性の高いエアコンを普及させていくことは、地球全体の温暖化抑制にきわめて有効であると考えています。

ダイキンは世界で唯一、エアコンと冷媒の両方を手掛けるメーカーとして、冷媒と電力消費の両面から、気候変動への影響緩和に努めてきました。具体的には、従来冷媒に比べて温暖化影響が小さいR32を採用したエアコンを全世界に展開していくとともに、省エネ性能が高いインバータ機についても、普及が進んでいない国々でのインバータ比率の向上に取り組んでいます。

世界の温室効果ガス排出量の削減量予測
(住宅用エアコンの場合)

世界の温室効果ガス排出量の削減量予測(住宅用エアコンの場合)

2010年の世界の温室効果ガス排出量:490億t-CO2   (IPCC第5次評価報告書、第3作業部会報告書)

注)ローレンスバークレー国立研究所 「Benefits of Leapfrogging to Superefficiency and Low Global Warming Potential Refrigerants in Room Air Conditioning(2015)」より、当社作成。

新たな市場環境の創出によって現地市場、事業、環境がともに「win-win-win」となる関係づくり

新しい低温暖化冷媒や省エネ技術を普及していくためには、環境影響の抑制効果を訴えかけることはもちろん、安全性・経済性に対しても正しい理解を促していく必要があります。市場の既成概念を変え、新技術を適正に評価・活用できる仕組みを整えて、新たな市場環境を創り出していくことで、ようやく市場に受け入れられる技術となるのです。それは1企業だけで進められるものではなく、現地の政府や業界団体、現地メーカーや据付業者など多様なステークホルダーと協働することで実現できるものです。

ダイキンは、日本政府や国連機関、国際機関と協力しながら、環境技術をグローバルに普及し、それにより新たな市場創出を進めています。新市場を整備することによって、ユーザーに環境性能の高い製品を早くお届けできるだけでなく、現地の技術レベルが向上し産業の発展につながります。さらに当社にとっても事業成長の機会が創出でき、環境影響の抑制にも貢献するという、現地市場、事業、環境の三者に利益をもたらす「win-win-win」の関係づくりをめざしています。

環境配慮技術の普及に向けた新市場創出へのアプローチ

環境配慮技術の普及に向けた新市場創出へのアプローチ

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政府や国際機関と協業した新興国での技術支援を各地で展開し低温暖化冷媒を全世界で普及させる

DAIKIN’S PERFORMANCE

低温暖化冷媒R32の普及に向けて全世界で基本的な特許を無償開放

R410AをR32に転換した場合、2030年の温暖化影響を約8億t-CO2抑制

オゾン層破壊と地球温暖化につながる従来の冷媒は「モントリオール議定書」「京都議定書」によって使用が規制されており、次世代冷媒への転換が急務となっています。次世代冷媒の選択には、環境性・安全性・経済性などを総合的に評価するのはもちろん、エアコン・給湯機・冷凍機など用途に応じた適材適所の選択が必要です。ダイキンは、国際的な議論を踏まえ、独自の評価・検討を重ねた結果、現時点で住宅用・業務用エアコンの冷媒としてR32が最適と判断し、全世界での普及を推進。2015年度末現在、世界48カ国でR32を採用したエアコンを650万台販売しています。

さらなる普及に向け、各国のメーカーがR32エアコンを製造できるよう、2011年には、新興国で、R32を用いたエアコンの製造・販売に関わる延べ93件の基本的な特許を無償開放しました。さらに2015年9月には、その範囲を全世界に拡大。規制強化が進む先進国でも基本的な特許の無償開放に踏み切りました。今後、先進国の従来冷媒であるR410AがすべてR32に転換されれば、転換しなかった場合に比べ、2030年におけるHFCによる温暖化影響を、CO2換算値で約8億トン(19%)削減できると予想しています。

ダイキンが考える冷媒選択の方向性

ダイキンが考える冷媒選択の方向性

注)ダイキングループが現在販売している代表的な製品についての冷媒選択の方向性を示しており、その他の製品では上図で示す冷媒以外も使用される可能性があります。例えば、当社では製造しておりませんが、ウインド型エアコンや住宅用冷蔵庫には炭化水素系冷媒(R600a、R290など)、カーエアコンにはHFO系冷媒が使用できる可能性があります。

インドで、現地の課題を解決し、R32を普及させる新たな市場環境を創造

R32という新しい冷媒の普及には、ダイキンが製造・販売するだけでなく、現地の理解と技術が必要です。多くの新興国では、微燃性のあるR32が強燃性のプロパンと同じように考えられ、燃焼性が少しでもあると使用できないと判断されていました。

そこで2012年度、日本の経済産業省の「地球温暖化対策技術普及促進事業」を受託したダイキンは、インドの4都市8カ所でR32インバータエアコンの実証実験を実施。適切に扱えばR32が問題なく使用できることや、インバータとの組み合わせで従来機に比べて30%以上のCO2排出量を削減できる可能性を示しました。さらに、2013年12月にはインド政府関係者やインド冷凍空調工業会などを対象にセミナーを開催し、実証実験の結果やR32のメリットを説明し、R32への理解促進を図りました。また、現地のエアコン据付・サービス技術者3,600名に対してR32を適切に扱うための研修を実施することにより、技術レベルの向上につながりました。

その結果、インドでは2014年にダイキンがR32エアコンを発売して以降、現地メーカーも含めて年間販売台数の10%以上がR32エアコンです。

政府・業界と協働での技術支援をタイで、マレーシアで展開

マレーシアでの技術支援

マレーシアでの技術支援

インドでの取り組みによって、日本政府や現地国政府、国際機関と連携しながら、現地の課題を明らかにしてR32を普及させていくための経験やノウハウを蓄積することができました。これらの実績を踏まえて、2015年度からはタイでも、世界銀行とタイ政府からの要請を受けて経済産業省が立ち上げた支援プロジェクトに参画し、4月から現地メーカーを対象にR32への転換に向けた技術支援などを実施。続いて2016年2月には、マレーシア政府の要請によりマレーシアでも同様の支援を開始しています。

このように流通開拓や販売活動だけでなく、技能者の育成や規格づくりへの支援など市場環境を整備してきた結果、R32エアコンの世界展開による地球温暖化抑制への貢献が評価され、平成27年度省エネ大賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。

ダイキンの方針を明示して、世界で冷媒の環境影響抑制に貢献

住宅用・業務用エアコンではR32の普及促進に世界的に取り組んでいますが、ダイキンの方針は、R32だけでなく、「適材適所の冷媒を選択すること」です。こうした方針を明示し、冷媒を選択する際の判断材料としてもらうため、2015年12月に「ダイキン冷媒ポリシーペーパー」を発行しました。「冷媒選択の多様性」「機器ごとの用途に応じた適材適所の選択」といったダイキンの冷媒選択の考え方とともに、冷媒のライフサイクル全体にわたる環境影響の低減をさらに推進する姿勢を表明しました。

エアコンのリーディングカンパニーとしての方針を明示し、今後さらに重要度の増す冷媒の適切な回収・再生に向けて、さまざまなステークホルダーを巻き込みながら、適切な制度やインフラの確立などの仕組みづくりに取り組んでいきます。

ダイキングループのR32エアコン累計販売台数

ダイキングループのR32エアコン累計販売台数

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省エネ性能評価基準等の整備を支援して、新興国の政府・業界団体とインバータ機の認知浸透へ

インバータ技術の普及に欠かせない性能を評価する基準の整備 

経済発展に伴う深刻な電力不足と地球温暖化対策の加速という課題を抱える新興国では、省エネ性の高いインバータ機の導入が望まれています。インバータ機とは空調機の電圧・電流・周波数をコントロールするインバータ技術を搭載したエアコンのことで、非インバータ機と比べ、消費電力を約30%削減できます。日本ではすでに100%普及していますが、例えば、日本・中国を除くアジアでのインバータ機比率は2割程度であり、世界に目を向けるとまだ普及は進んでいません。

その理由の一つに、インバータ機の省エネ性能を評価する仕組みが整備されていないことが挙げられます。エアコンの省エネ性能を評価する指標として、以前は、気温の変化を考慮せず一定の効率でエネルギー消費量を計算する定格負荷評価が一般的でした。しかし、温度変化に応じて最適な状態で運転するインバータ機の性能は、定格負荷評価では適切に評価できないため、日本の空調業界が中心となり期間効率評価への変更を働きかけ、2013年には国際標準であるISO規格となりました。この新しい指標の採用が始まりつつある新興国で、ダイキンは評価基準の整備を支援しています。

世界の住宅用エアコンのインバータ機比率(2015年)

世界の住宅用エアコンのインバータ機比率(2015年)

注)住宅用エアコン:ウインド・ポータブルを除く住宅用ダクトレスエアコン。北米のみ住宅用ダクト型エアコンを含む。  
(一社)日本冷凍空調工業会データを参考に当社作成。

インド政府を支援し、省エネ性能を適切に評価する指標・ラベルを導入

例えばインドでは、冷房運転の期間効率評価であるCSPFの導入支援に2013年度から取り組んできました。日本の経済産業省や(一財)省エネルギーセンター、日系の他社メーカーとも協力し、インド政府に対してCSPFの有効性を説明。また、評価機関に対して期間効率の計測方法を指導するなど、技術的観点から制度づくりを支援した結果、2015年度にCSPFを評価基準とした、インバータ機を適正に評価する任意のエネルギーラベル制度が新たに発足。ダイキンのルームエアコンが最初に新ラベルを取得しました。

さらに、インバータ機のエネルギーラベル制度の導入がすでに決定されているアセアン地域では、2016年度も引き続き、(一社)日本冷凍空調工業会の取り組みに協力してCSPFへの理解を促し、各国で統一した制度の導入に向けて支援をする予定です。規格化やエネルギーラベル制度によって、インバータ機の認知が広がり、省エネエアコンが普及することで、エアコンに起因する温暖化影響の抑制につながることが期待されます。

インバータ機を適正に評価する指標に基づいた新しいエネルギーラベルが貼付されたエアコン(インド)

インバータ機を適正に評価する指標に基づいた新しいエネルギーラベルが貼付されたエアコン(インド)

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エアコンと冷媒の両方を開発する唯一のメーカーとして、ライフサイクル全体での温暖化影響を削減する

NEXT CHALLENGE

さまざまなステークホルダーと協働で新たな市場環境づくりを今後も推進

エアコンの地球温暖化への影響をダイキンの冷媒技術とインバータ技術の双方で抑制するため、日本政府や各国政府、国際機関、業界団体など、さまざまなステークホルダーと連携してきました。その取り組みにより芽吹いた新たな市場環境の創造は、少しずつ軌道に乗り始めています。

ダイキンでは、今後もさまざまなステークホルダーを巻き込みながら、こうした環境技術の普及に向けた制度づくりやインフラの整備などを推進していくことで、自社だけでなく、現地市場、事業、環境がともに利益を享受できる「win-win-win」の関係を構築していきます。そして、エアコンと冷媒の両方を開発する唯一のメーカーの使命として、ライフサイクル全体での温暖化影響の削減をめざします。

評価指標の導入は、気候変動の緩和とインドの持続的発展に貢献します

評価指標の導入は、インドで省エネエアコンの普及を加速させるための重要なステップでした。ピーク時の電力負荷を減らすのに加え、気候変動の緩和に大きく貢献します。空調業界と政府が緊密に協力しながら規格を開発しました。エアコンの効率を高め、インドの持続的発展に貢献したダイキンの支援を評価しています。

インド電力省 エネルギー効率局 書記官ーSanjay Seth 氏

インド電力省
エネルギー効率局 書記官
Sanjay Seth

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