ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン)は、ウイルスの感染経路の一つであるエアロゾル感染について、室内のエアロゾルの拡散状況を低コストかつ短時間で簡易的にシミュレーションするシステム(以下、簡易シミュレーション)を独自開発し、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)と共同で、室内に拡散するエアロゾルによるウイルス感染リスクを評価する手法としての有効性を確認しました。
エアロゾル感染対策において、換気や空気清浄機等による気流・空気質制御の重要性が高まっています。これまで、エアロゾルの拡散による感染リスクの評価にはスーパーコンピュータを用いても時間がかかるのが一般的でした。そのため、オフィスや学校など、様々な空間ごとに適した空調システムの配置を短期間で検証することが困難でした。ダイキンは低コストかつ短時間で様々なパターンを検証できるシミュレーション方法を確立するとともに、そのシミュレーション手法を用いて室内での空調システムの適切な配置および稼働条件を導出するための検証を実施しました。
本検証では、産総研内のクリーンブース(4m×3.5m×2.4m)内でエアロゾルを吐き出す感染者と非感染者の対面での会話を想定し、実測でのエアロゾル濃度とダイキンの簡易シミュレーションデータとの比較を行いました。さまざまな空調システム条件下での検証により、以下の結果が得られました。
これにより、低コストかつ短時間で、さまざまな建物や空間の条件にあわせた空調システムの提案の活用につながると考えています。
ダイキンは戦略経営計画FUSION25の重点戦略テーマとして「空気価値の創造」を掲げ、新たな空気価値のひとつとして医療施設・オフィス等でのエアロゾル感染リスクを低減するソリューションの提供を目指しています。実際の施設における換気状態の見える化や換気不足対策案の結果予測、感染予防に最適な機器の選定パターン等をシミュレーションによって表現することで、より分かりやすく定量的な提案ができるソリューションの構築をめざします。
本検証では、感染者がマスクをしていない状態を想定し、換気装置と感染者の位置に対して、空気清浄機の有無や設置位置および空調機の併用やUVストリーマ除菌ユニット(中性能フィルタ付)の有無など17 のケースで詳細に評価しました。その結果、ダイキンのUVストリーマ除菌ユニット(中性能フィルタ付)を装着した空調機と最適な位置※1に配置した空気清浄機を同時に30分間稼働させた場合、室内全体のエアロゾル濃度を最大88%低減し、非感染者が曝露する範囲におけるエアロゾル濃度を最大94%低減する可能性があることを確認しました。
図1 クリーンブースにおける試験風景
図2 クリーンブース内の機器の配置
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 プレスリリース URL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250519/pr20250519.html