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マレーシアから生まれた、ダイキンの新しい表現

ASEANの生活に向き合った「Air Creator Series」の舞台裏

マレーシアを拠点に、ASEAN地域でのプロダクト開発を担うDRDM(Daikin Research & Development Malaysia)。このチームが手がけた「Air Creator Series」は、エアコンと空気清浄機をアプリでつなぎ、一つの空気環境としてコントロールするという新しいシステムです。プロジェクトに関わった3人のデザイナーが、何を考え、どう動いたのかを聞きました。

ASEANの多様性と向き合う6人のチーム

Ben Ong:

DRDM(Daikin Research & Development Malaysia)は、ダイキンのASEANにおけるデザイン拠点です。この地域に合った革新的なソリューションを生み出すことを役割として、デジタルとフィジカルの両方の接点にわたって活動しています。

私たちの仕事は、製品そのものだけではなく、体験やサービスを通じて新しいデザインの価値をつくること。この10年間で、住宅用の壁掛け型エアコンから、業務用の天井カセット型エアコン、大型の床置き型システムまで、幅広いデザインに携わってきました。

この地域で暮らす人々から得られるインサイトとデザインへの情熱。その二つを掛け合わせることで、多様なASEAN市場のニーズに応え、ダイキンの製品に新鮮な視点をもたらすことを目指しています。

マイナーチェンジではなくゼロから

Ben Ong:

私たちが今回手がけた「Air Creator Series」は、直感的に使えるアプリを介して空気清浄機とエアコンをシームレスにつなぐ、新しい製品エコシステムです。若い世代にとって理想的な生活環境を、これまでにないワクワクする方法でつくり出すことを意図しました。

DRDMのデザイナーにとって、特定のターゲット層に向けた製品をゼロから開発するというのは、とても貴重な機会でした。マイナーチェンジの枠を飛び越え、既存の常識に挑み、まだ満たされていないユーザーのニーズを新しいデザインの機会と捉えることで、日常生活におけるエアコンの役割を定義し直すことができました。

単に若い世代向けに見た目を整えるのではなく、新しい世代にとってもっと身近で、親しみやすいと感じられる製品体験をつくることが目標でした。

Alya:

ASEANには多様な民族、文化、習慣が存在します。だからこそ、最終的なデザインの形を決めるには慎重な検討が必要でした。

市場検証の段階では、異なるデザインの方向性を示す複数のプロトタイプを、4カ国のユーザーのもとへ実際に持ち込みました。反応をその場で観察し、比較することで、どの市場でも共通して強く支持されたデザイン原則と、地域によって分かれる好みの違いを見極めることができました。

こうしたプロセスを経たことで、ユーザーの嗜好について私たちが抱いていた思い込みを見直すことができました。社内の視点だけに頼るのではなく、市場からの直接のフィードバックでデザインの仮説を確かめ、根拠を持って最終的な方向性を決める。この検証が重要な意思決定のステップとなり、最終デザインが実際のユーザーの好みに根ざしたものであり、多様なASEAN市場で確かな価値を持つという強い確信を得ることができました。

「新しさ」と「ダイキンらしさ」のあいだで

Ben Ong:

製品のかたちの検討は、若い世代が身の回りのものをどう捉え、どう関わっているのかを理解することから始まりました。彼らの生活環境、日々の習慣、抱いている憧れ、そして自然と惹かれていくデザインの傾向を分析。特定の形から入るのではなく、彼らが「これは自分のための製品だ」と感じられるデザインとは何かを、まず知りたかったのです。

その結果、かなり幅広い形状、プロポーション、カラーを探ることになりました。いくつかの方向性でユーザー調査を実施してみたところ、「もっと個性的で、これまでの枠にとらわれないものが欲しい」という意向が浮かび上がってきました。ここから、より丸みを帯びたフォルムや落ち着いたダーク系のトーンを探ることになり、単なる実用品ではない、表現力を兼ね備えた製品へとつながっていきました。

Alya:

デザイナーとして最大の課題は、「新しさ」と「ダイキンらしさ」のバランスを見つけることです。ダイキンには、シンプルで機能的という日本のデザイン原則に根ざした、確立されたデザイン言語があります。私たちはそこから離れたかったわけではなく、異なる世代に向けて解釈し直したいと考えました。どうすればダイキンが積み上げてきた信頼感を損なうことなく、もっと表現力のある製品をつくれるのか。私たちにとってダイキンの信頼性はデザインの品質そのものであり、その上に立ってはじめて実験ができる土台のようなものです。

最終的な方向性は、その二つの組み合わせになりました。柔らかく特徴のあるフォルムでありながら、しっかりとした存在感と、変わらない安心感のあるデザイン。コントラストの効いたカラーの掛け合わせと、繊細な曲面で和らげたソリッドで自信のある本体の造形によって、それを表現しています。根底には信頼感があり、見た目にはこれまでより際立った個性がある。ダイキンの新しい表現が生まれたと感じています。

機器を操作するのではなく、過ごし方を選ぶ

Sarah:

「Air Creator Series」のコアであるアンビエント体験設定の背景には、「機械を操作すること」から「体験を創出すること」へ移そうという考え方がありました。温度・風量・湿度・空気質などをユーザーにいちいち調整させるのではなく、「睡眠」「集中」「リラックス」「フィットネス」といった、暮らしのシーンに基づいた体験としてイメージしてほしいと考えました。

課題の一つは、「Air Creator」の体験が本来は複数の製品が連携してはじめて完成するものである一方で、多くのユーザーは1台から使い始める可能性が高いという点でした。そこで、それぞれの製品が単体でも十分な価値を提供しながら、エコシステムの中ではさらに高い機能を発揮できるように設計しました。単体での使いやすさとつながった時の一体感のバランスをとることが、プロジェクトを通じて最もこだわったことの一つです。

当初からのゴールは、ユーザーが「2種類の機械を操作している」のではなく、「一つの空気環境を整えている」と感じられるようにすることでした。そのために、ユーザーのニーズや暮らしの中での行動、室内の快適さに対する要望を調べると同時に、一連の製品エコシステムとどう関わるのかを探っていきました。そこから生まれたのが「AIR CARD」というコンセプトです。個別の機器を制御するのではなく、「睡眠」「集中」「フィットネス」「チルアウト(くつろぎ)」といった暮らしの体験を選ぶ。それに合わせて、システムがエアコンと空気清浄機をコントロールし、望ましい環境をつくり出すのです。

プロジェクトを通じて、UI/UXチームとプロダクトデザインチームの緊密な連携が欠かせませんでした。ユーザー体験、製品の機能、そしてブランドのビジョン。この三つをすり合わせることで、実際の製品とデジタルのインターフェースがどちらもなめらかに機能するようにしていきました。結果として完成したのが、個々の製品ではなくユーザーの暮らしを中心に据えた、統合された「Air Creator」というエコシステムです。

国や世代を越えた先に

Sarah:

このプロジェクトで最も印象に残っているのは、タイ、日本、マレーシアの優秀なチームと一緒に仕事ができたことです。分野も背景も異なる人たちとの協働は、学び、成長し、プロジェクトを多角的な視点から捉えるための貴重な機会になりました。

そして「Air Creator」を通じて、デザインが単一の製品を超えて、暮らしの体験をつくることにまで踏み込めるのだと学びました。これからは、デジタルの製品とフィジカルな製品をなめらかなエコシステムへと融合させ、日常に価値をもたらすような取り組みに、さらに挑戦していきたいと考えています。

Alya:

「Air Creator」プロジェクトは、私がジュニアデザイナーとして関わる機会を得た最初期のプロジェクトの一つで、特別な意味を持っています。さらに、この製品は私自身の世代を念頭に置いてデザインされており、個人的にも共感できる製品であり、その誕生に関われたことを誇りに思っています。

これから先も、ただ空気を冷やす、きれいにするということを超えた方法で、ユーザーにとっての価値を生み出し続けたいと考えています。私にとって「Air Creator」は、そのための第一歩になりました。ユーザーとその暮らし、そして製品が日常で果たす役割について、より深く考えるきっかけをくれたからです。今後も、ユーザーを中心に据えたリサーチとデザインを通じて、探求し続けたいと思います。

Ben Ong:

最も記憶に残っている瞬間の一つは、「Air Creator Series」がついに発売され、ローンチイベントでユーザーの反応を間近で目にしたことです。デザインに自然と惹きつけられ、新しい空間体験を興味深く見つめていたのです。これだけの関心を寄せていただけたのは大きな手ごたえでしたし、私たちの仕事が、若い世代にとってダイキンというブランドと出会う機会になったことを実感できました。

そしてもう一つ、このプロジェクトを通じて、日本やASEAN地域の優秀なチームと連携する機会を得られました。これまでとは違う思考を求められ、文化を超えて協力し、既成概念に挑む、とても意義深い道のりでした。最終的にこのプロジェクトは私たちのチームにとって大きな節目となり、DRDMとして初めて「Red Dot Design Award」を受賞することができました。

これからは国境を越えたコラボレーションにさらに取り組んでいきたい。人間中心のイノベーションに重点を置くことで価値ある機会を見つけ出し、最高のお客様体験を生み出していきたいと考えています。

Red Dot Design Award 2026
2026年度デザイン賞受賞

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