急速な変化を繰り返す現代においては、人々の空気に対する価値観や、それに応えるデザインのあり方もまた変わっていきます。先端デザイングループの長治雅彦が、近未来における空気の可能性と、デザイナーが大切にすべき感覚について語ります。
空気の可能性は、時代によって変化してきた
私が入社した当時のダイキンは、部屋の温湿度をコントロールする空調機メーカーでした。しかし、2015年のTIC(テクノロジー・イノベーションセンター)設立や、「空気で答えを出す会社」というコーポレートメッセージと共に、私たちの姿勢も大きく変わりました。空気には世の中を変え、顧客を感動させる大きな可能性が秘められている」ということに、気づき始めたのです。
現在では、温湿度コントロールによる住空間での快適性にとどまらず、屋外でも快適に過ごせる空気や、花粉やウイルスを排除し、慢性的なストレスを軽減させる空気など、空気の可能性について社内外のあらゆる場所で議論されるようになっています。こうした変化を踏まえ、私たちのデザインや製品も進化を続けています。
例えば、2019年に発売された「アウタータワー」は、近年の猛暑を背景に、真夏の暑い屋外でも快適に過ごしてほしいという想いから生まれた商品です。昨年の大阪・関西万博では、屋外にいながら涼を取れる休憩所「氷のクールスポット」を設置しました。
さらに先日、東南アジア地域において、Z世代をターゲットとしたルームエアコンと空気清浄機をセットにした「Air Creator series」を発売しました。これは、眠りやリラックスといった日々の生活シーンに合わせて、顧客が好きな香りを選べる商品です。これらはどれも、従来の住空間における快適性を超えた、新しい空気の価値を提供する商品や場所であり、そうしたものが少しずつ世の中にリリースされるようになってきています。
AI時代にこそ求められる「現場での五感」
社会環境や人々の価値観が大きく変わる中、私たちデザイナーには何が求められているのでしょうか。顧客のインサイトを見つけ、空気とデザインの力でどんな価値が提供できるのかを考えるためには、AIがこれだけ浸透し始めている世の中だからこそ、現場へ足を運び、自ら情報を取得することがこれまで以上に重要になると私は考えています。
現場で起きている事象や空気感を五感で感じ、そこで見つけた小さな違和感を課題として設定し、解決していく。これが今の時代におけるデザイナーの重要な役割ではないでしょうか。先日、こうした内容を含めたワークショップをメンバー全員で行いました。早速現場に足を運び一次情報を取りに行く動きが見られるなど、個人としての意識が少しずつ変化してきているのを感じており、今後は組織的に、チームとして日常の業務の中に落とし込んでいけるよう取り組んでいきます。
世界中にいる顧客を一人でも多くファンにする
私が目指すのは、世界中にいる顧客を一人でも多く「ダイキンのファン」にすることです。そのために、世にリリースするダイキンの商品、サービス、活動の一つひとつを丁寧に取り組み、ダイキンデザインの存在感をさらに高めていきたいと考えています。
社会的な責務としての環境対応はもちろんのこと、世の中を変え、顧客に感動を与える可能性を秘めた空気の力で、顧客に幸せ(ウェルビーイング)を提供していくこと。ダイキンは世界中でビジネスを展開しているのが特徴であり、国や地域によって顧客のインサイトも異なります。だからこそ、その場所やそこで暮らす人々が必要とする空気を五感を使ってしっかりと見極め、提供し続けていきたいと思います。
