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低落差水車/低落差のマイクロ水力発電システムで、さらなる市場の拡大を狙う!
FEATURE
2024.09.30
以前ご紹介したダイキン工業のマイクロ水力発電システム(※1)。新規事業として同社の総合力を結集したテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)初のプロジェクトだ。本記事では、そのシステムをさらに改良し、エネルギー効率を高めた低落差水車/低落差タイプについて紹介しよう。本発電システムの普及に向けて、設計・施工などのビジネス展開を推進するTIC発のスタートアップ DK-Power(※2)の安井義貴氏、 流体設計を担当するTICの丸山要氏、本プロジェクトを取りまとめている同 山本直樹氏に話を聞いた。
マイクロ水力発電システムをゼロベースで開発
――お三方のこれまでのご経歴について教えて下さい。
丸山:私は2011年に新卒で入社し、エアコンに使われる送風機の研究開発に従事してきました。流体設計の知識を生かし、送風機と並行してポンプや水車も開発してきました。
山本:私は2019年からの転職組になります。転職前は、火力発電や原子力発電向けのタービン発電機の開発に9年ほど携わっていました。2011年に東日本大震災が起きて、原子力発電事業が厳しい状況となり、さらに2015年のパリ協定の影響を受けて火力発電事業にも厳しい状況になる中で、再エネに興味をもつようになりました。そんな中、ダイキンが今回のマイクロ水力発電システムの開発者を募集していたので、これまでの経験生かしマイクロ水力という新たな分野でチャレンジしてみたいと思いジョインすることにしました。
安井:私は2006年に入社しました。大学時代は建築系の研究室で、結露や湿気の研究を行っていました。省エネ設計をより深めたいと思い、ダイキンでゼロエネルギービルディングや再生可能エネルギーの研究を行いました。その後、マイクロ水力発電システムの事業化にめどが立ったことでDK-Powerを立ち上げ、設立当初より事業化に携わってまいりました。現在はDK-Powerの技術全般の責任者です。水道局の条件に合う発電システムの設計を行い、水道局への導入提案や発電所の建設、発電開始後の維持管理など発電事業全般を行っています。
――低落差水車/低落差タイプのマイクロ水力発電システムを開発することになった経緯について教えて下さい。
丸山:私は2011年に新卒で入社し、エアコンに使われる送風機の研究開発に従事してきました。流体設計の知識を生かし、送風機と並行してポンプや水車も開発してきました。
山本:私は2019年からの転職組になります。転職前は、火力発電や原子力発電向けのタービン発電機の開発に9年ほど携わっていました。2011年に東日本大震災が起きて、原子力発電事業が厳しい状況となり、さらに2015年のパリ協定の影響を受けて火力発電事業にも厳しい状況になる中で、再エネに興味をもつようになりました。そんな中、ダイキンが今回のマイクロ水力発電システムの開発者を募集していたので、これまでの経験生かしマイクロ水力という新たな分野でチャレンジしてみたいと思いジョインすることにしました。
安井:私は2006年に入社しました。大学時代は建築系の研究室で、結露や湿気の研究を行っていました。省エネ設計をより深めたいと思い、ダイキンでゼロエネルギービルディングや再生可能エネルギーの研究を行いました。その後、マイクロ水力発電システムの事業化にめどが立ったことでDK-Powerを立ち上げ、設立当初より事業化に携わってまいりました。現在はDK-Powerの技術全般の責任者です。水道局の条件に合う発電システムの設計を行い、水道局への導入提案や発電所の建設、発電開始後の維持管理など発電事業全般を行っています。
――低落差水車/低落差タイプのマイクロ水力発電システムを開発することになった経緯について教えて下さい。
山本:水力発電システムでは、水の落差と流量の掛け算で出力エネルギー(発電量)が決まります。落差が大きいほど、あるいは水量が多いほど出力が大きくなります。従来は落差が大きく、流量が少ないところで発電し、22kWと75kWの出力を得ていました。というのも、それまで利用していた汎用ポンプを逆回転させて使う「ポンプ逆転水車」では、落差が小さく、流量が多い場合には仕様的に運転できなかったからです。そこで新たな水車を開発して市場ニーズに応えようとしていました。
山本:水力発電システムでは、水の落差と流量の掛け算で出力エネルギー(発電量)が決まります。落差が大きいほど、あるいは水量が多いほど出力が大きくなります。従来は落差が大きく、流量が少ないところで発電し、22kWと75kWの出力を得ていました。というのも、それまで利用していた汎用ポンプを逆回転させて使う「ポンプ逆転水車」では、落差が小さく、流量が多い場合には仕様的に運転できなかったからです。そこで新たな水車を開発して市場ニーズに応えようとしていました。
丸山:最初の市場調査では22kW~75kWゾーンでニーズの高いことが分かりましたが、さらに精査すると低落差水車/低落差(有効落差16.5m)で22kW(年間発電量177MWh)の市場も見えてきたので、新たに開発することに踏み切りました。
――以前のシステムは市販ポンプを使うことでコストを抑えていました。
今回はあえてプロペラ水車を新規設計することで、性能面の向上を狙ったということでしょうか?
山本:はい。性能向上を目的として、ゼロベースでプロペラ水車を設計・開発しました。もちろんコストも可能な限り下げられるように努力しました。水道局の施設にある管水路で使うという点は以前のシステムと同じですが、落差が小さいところでの発電を可能にしたのです。
マイクロ水力発電システムの具体的な構成としては、永久磁石同期発電機とAC/DC変換する発電機一体型コントローラをシステム上部に搭載しています。この発電機から下側の機構部を今回あらたに設計し直しました。
今回はあえてプロペラ水車を新規設計することで、性能面の向上を狙ったということでしょうか?
山本:はい。性能向上を目的として、ゼロベースでプロペラ水車を設計・開発しました。もちろんコストも可能な限り下げられるように努力しました。水道局の施設にある管水路で使うという点は以前のシステムと同じですが、落差が小さいところでの発電を可能にしたのです。
マイクロ水力発電システムの具体的な構成としては、永久磁石同期発電機とAC/DC変換する発電機一体型コントローラをシステム上部に搭載しています。この発電機から下側の機構部を今回あらたに設計し直しました。
通常の設計ではポンプ内の流路は水平で、その流れに沿ってシステムを設置するのですが、ここでは内部で流路を曲げ、水平方向から垂直上向きに一度水の流れを変えた後に、下側に水を落としてプロペラ水車を回す構造にした点が、従来との大きな違いです。流路を縦軸にすることで効率よく水を流せるように工夫し、システムの設置スペースが小さくなるようにました。
数千ものシミュレーション結果から導いた高効率のプロペラ水車
――一度水を上げるために流路を曲げると、そこで圧力損失が発生してエネルギーロスにつながらないのでしょうか?
――さらに何か工夫された点はありますか?
丸山:もちろん曲がった管内を水が通るため圧力損失は起きます。しかし、それよりも軸流が曲がりながらプロペラ水車に当たって、偏流を起こしてしまうほうが大きな問題になりました。その偏流をなくすために、曲げた管に水が入る前に「ガイドベーン」を取り付けて整流化したことが大きなポイントですね。
また、エネルギー効率を高めるプロペラ水車の設計にも工夫を凝らしました。初めての設計だったので、大規模なパラメータスタディを実施し、繰り返しシミュレーションを行って、2000~3000のパターンから最も性能の良いものを見つけ出し、一発でプロトタイプを製作しました。
丸山:もちろん曲がった管内を水が通るため圧力損失は起きます。しかし、それよりも軸流が曲がりながらプロペラ水車に当たって、偏流を起こしてしまうほうが大きな問題になりました。その偏流をなくすために、曲げた管に水が入る前に「ガイドベーン」を取り付けて整流化したことが大きなポイントですね。
また、エネルギー効率を高めるプロペラ水車の設計にも工夫を凝らしました。初めての設計だったので、大規模なパラメータスタディを実施し、繰り返しシミュレーションを行って、2000~3000のパターンから最も性能の良いものを見つけ出し、一発でプロトタイプを製作しました。
また、エネルギー効率を高めるプロペラ水車の設計にも工夫を凝らしました。初めての設計だったので、大規模なパラメータスタディを実施し、繰り返しシミュレーションを行って、2000~3000のパターンから最も性能の良いものを見つけ出し、一発でプロトタイプを製作しました。
山本:コスト面でいうと、ケーシングについては、既存の規格化されている配管を組み合わせて設計しています。これにより安価に製作できるようになりました。先ほどの曲がった配管も規格品です。意外に難しかったのは、組み立てを簡単にする構造でした。いくらシミュレーションでうまくいっても、やはりモノとして具現化するには大変でしたね。
実際の水道施設への導入も大成功、全国展開を目指す
――マイクロ水力発電のビジネススキームについても教えて下さい。
安井:基本的なスキームとしては、水道局から発電システムを設置する場所と流れる水のエネルギーを借用して、そこで得られた電気を電力会社に売り、その収入の一部を水道局に還元するという形です。水道局にとって、費用負担なく環境貢献できる「水道局負担ゼロ」のビジネススキームを展開しています。
低落差タイプも既に実際の水道施設へ導入しています。栃木県企業局の北那須浄水場から折戸調整池に流入する水量と受水圧を有効活用し年間177MWh発電して、約98tに相当するCO2を削減できるようになりました。実際の水道施設への導入が初めてだったこともあり、従来機よりも大きく、大流量を流すということで、施工面・制御面でたいへん苦労しましたが、2024年春の発電開始から6カ月以上が経過し、順調に稼働しています。費用負担なく環境貢献できるということで、栃木県企業局からも大変喜んでいただいています。
――今後の事業展開について教えてください。
安井:以前のシステムは全国の自治体(水道局)60カ所に導入実績があります。おかげさまで、この分野では日本一になれたと自負しています。ただ日本のマイクロ水力発電として圧倒的なNo1.になるためには、今後も発電システムの導入を増やしていく必要があると考えています。
国の水循環政策本部事務局(※3)では、現在の市場規模の20倍以上ものポテンシャルがあると見ているようです。さらに今回開発した低落差水車/低落差タイプのシステムは、水道施設以外の市場への拡大に寄与してくれるものと期待しています。より良いシステムに仕上げていきたいですね。
国の水循環政策本部事務局(※3)では、現在の市場規模の20倍以上ものポテンシャルがあると見ているようです。さらに今回開発した低落差水車/低落差タイプのシステムは、水道施設以外の市場への拡大に寄与してくれるものと期待しています。より良いシステムに仕上げていきたいですね。
丸山:私はマイクロ水力発電以外の研究もしているのですが、やはり流体力学の知見や経験を生かして、グローバル企業として地球環境に優しい製品を世界に広げていきたいという気持ちがあります。空調だけでなく、地球環境に優しい再生可能エネルギーという観点でも積極的に手を広げたいですね。
――最後に、これからダイキンに入りたいと考えている若手技術者や中途技術者にメッセージをお願いします。
山本:ダイキンはエアコン企業という認識があるかもしれませんが、私のように水力発電を進める部門もあります。本当に何でもチャレンジさせてもらえる企業なので、ぜひ我々の仲間になって下さい!
丸山:そうですね。自分から声を上げると任せてもらえる会社だと感じています。仕事を進める上での裁量範囲も広くて、やる気とやりきる気持ちがあれば、いろいろなシーンで活躍できます。興味のある方は、ぜひ入社して頂ければと思います。
安井:単に技術開発だけでなく、当社のようにお客様とコンタクトを取って、新規ビジネスを展開していくなかで、全体のプロセスを経験できることも魅力的な側面です。また、技術開発発で新規事業までやらせてもらえるのは他社ではなかなか無いと思います。出る杭を伸ばすというダイキンの文化の素晴らしいところですので、新たに事業を開拓したいというフロンティア精神にあふれる皆さんにはダイキンはピッタリだと思います。
山本:ダイキンはエアコン企業という認識があるかもしれませんが、私のように水力発電を進める部門もあります。本当に何でもチャレンジさせてもらえる企業なので、ぜひ我々の仲間になって下さい!
丸山:そうですね。自分から声を上げると任せてもらえる会社だと感じています。仕事を進める上での裁量範囲も広くて、やる気とやりきる気持ちがあれば、いろいろなシーンで活躍できます。興味のある方は、ぜひ入社して頂ければと思います。
安井:単に技術開発だけでなく、当社のようにお客様とコンタクトを取って、新規ビジネスを展開していくなかで、全体のプロセスを経験できることも魅力的な側面です。また、技術開発発で新規事業までやらせてもらえるのは他社ではなかなか無いと思います。出る杭を伸ばすというダイキンの文化の素晴らしいところですので、新たに事業を開拓したいというフロンティア精神にあふれる皆さんにはダイキンはピッタリだと思います。
※1. これがダイキンの総合力 TICで初めて事業として結実したマイクロ水力発電システム
※2. 企業情報
※3. 内閣官房水循環政策本部事務局
Yoshitaka Yasui
株式会社 DK-Power 取締役
2006年4月入社。大阪府出身。
再生可能エネルギー(水力、太陽光)に係わるエンジニアリングを担当。
豊富な現場経験を活かして、少しでも多くのクリーンエネルギーを生み出して、地球環境の改善に寄与していきたい。
株式会社 DK-Power 取締役
2006年4月入社。大阪府出身。
再生可能エネルギー(水力、太陽光)に係わるエンジニアリングを担当。
豊富な現場経験を活かして、少しでも多くのクリーンエネルギーを生み出して、地球環境の改善に寄与していきたい。
Kaname Maruyama
テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師
2011年4月入社。山口県出身。
送風機の高効率・静音化技術を担当。
技術開発を通して社会に貢献するため、常に技術を磨き続けたい。
テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師
2011年4月入社。山口県出身。
送風機の高効率・静音化技術を担当。
技術開発を通して社会に貢献するため、常に技術を磨き続けたい。
Naoki Yamamoto
テクノロジー・イノベーションセンター
2019年8月入社。奈良県出身。
マイクロ水力発電に関する機械関連技術、システム全体取りまとめを担当。
これまでの経験と培ってきた技術を活かし、エネルギーの観点から社会に貢献していきたい。
テクノロジー・イノベーションセンター
2019年8月入社。奈良県出身。
マイクロ水力発電に関する機械関連技術、システム全体取りまとめを担当。
これまでの経験と培ってきた技術を活かし、エネルギーの観点から社会に貢献していきたい。
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