デザインの力で見えない空気を「見える化」する。空間の中で空気がどう流れて、どう移り変わっていくかを視覚化したメディアアート作品が"Visualization of Air Conditioner"である。慶應義塾大学環境情報学部でビジュアライゼーションや形状モデリングを研究するクリエイター、脇田玲氏と共同で開発。2016年7月から、1年をかけて完成した。
見えない空気や温度を視覚化する方法としては、これまでにもサーモグラフィーなどのテクノロジーが使われてきた。しかしこの"Visualization of Air Conditioner"では、「見えない空気を愛されるものに」というダイキンデザインが追求するフィロソフィーのもと、鑑賞者が作品を見ているだけで空気の心地よさを感じられる、「圧倒的に美しい表現」にこだわった。
もともとルームエアコンの開発で使用されてきたシミュレーションデータの数値情報を、デザインの力で芸術的な表現に転換することで、初めてそのような情報に触れる人でも深い感動を味わうことができる。それが、この作品の最大の特長である。
開発に関わったデザイナーの想い
「ちょっとした実験をしまして、この流れる光の粒子は室内の花粉を表現しているんですよ、と説明すると鑑賞者は思わず顔を背けます。逆に、加湿している水の粒子ですというと、心地良さそうにしている。見えない空気を見える化すると、身体的な反応や行動を促すという発見がありました」
従来のルームエアコンのリモコンでは、例えば暑いときに室内温度28℃を26℃に設定したり風向きを変えたりすることで、人は空気を操作していた。しかし本来人が望むのは、リモコンの数値や羽根の方向をコントロールすることではなく、空気が変わることで空間がより心地よくなることであるはず。
そのような発想から"Visualization of Air Conditioner"を空調のインターフェースとして活用すれば、美しく視覚化された光のイメージを通じて、人はより身体的で直感的な方法で空気を操ることができるかもしれない。
見えない空気と人の関わりの新しい時代が、ここからはじまる。