
1987年創部のワコール女子陸上競技部(通称:スパークエンジェルス)様に、ダイキンの低酸素システム「OXORA」を導入いただきました。選手寮に併設されたトレーニングスペースに低酸素ルームを構築された背景や運用状況について、チームディレクターの高尾憲司さんにお話を伺いました。
チームディレクター 高尾 憲司様(スポーツ健康科学博士)
高地環境でトレーニングをするために、わざわざ海外へ遠征するといった流れが昔はありましたが、多大なコストや労力、時間をかけて海外へ行き、決して整っているとは言えない環境下で一時的な高地トレーニングをするのは効率的とは言えません。
その点、OXORAがあれば環境が整っている日本で継続的な低酸素トレーニングができるため大きな魅力を感じました。
練習の量やペースは一人ひとりに合わせて組んでいるため、低酸素システムも選手の状態に応じて使用しています。たとえば、週に2回ほど行う追い込むためのハードな練習で体を追い込みきれなかった選手には、単純に走り込みを追加するだけでは故障につながってしまうため、OXORAを使った効率的な追い込みを追加しています。気圧はそのままで酸素濃度だけを調節するため、追い込んだトレーニングをしても疲労が残りにくく、高山病のリスクもありません。気圧を変えないため、部屋の出入りが自由なのも便利ですね。
また、疲労骨折をしてトレーニングができない選手でも、足に負担をかけず心肺機能にだけ負荷をかけたトレーニングができるので、回復までの間のパフォーマンス維持に役立つ点も高評価です。
故障した選手は回復までの期間、どうしてもトレーニング量を減らさざるを得ません。そうなると当然パフォーマンスも低下するため、足が治っても復帰までに時間がかかってしまいます。そこをOXORAでパフォーマンス維持できるのは、選手にとっても心強いと思います。
日本は疲労骨折する女子選手が多く、そこには栄養面の問題など、さまざまな要因が絡んでいますが、過剰トレーニングも原因のひとつです。追い込むためのトレーニングは必要ですが、足に負荷をかけすぎて故障してしまっては意味がありません。でも、OXORAがあれば、効率的に心肺機能に負荷をかけたトレーニングができるので、故障の低減にもつながります。
高地環境でのトレーニングが効率的にできるだけでなく、高地生活によって赤血球数を増やし、低地トレーニングによって持久力の向上を目指す「Living High,Training Low」を手軽に実現できる点もおもしろいと感じています。実際に選手たちは低酸素空間で雑談したり、ゲームをしたり、眠ったりすることで、日常の中に高地生活を取り込み始めています。今後、選手たちのパフォーマンスにどのような変化が出てくるのか、データを取りながら研究を進めていき、スポーツ科学の側面からもチームの強化をはかっていきたいと考えています。
