専門家に聞きました
済生会横浜市東部病院
患者支援センター長
谷口英喜 先生
東京理科大学
創域理工学部
社会基盤工学科 教授
仲吉信人 先生
気象庁は今年、最高気温が35℃以上の「猛暑日」に加えて、40℃以上の日を「酷暑日」と定めました。その背景には、暑さがますます厳しくなっていることがあります。
そこで、仲吉先生に「猛暑日」と「酷暑日」における体の奥の温度(深部体温)の変化をシミュレーションしていただきました。その結果から、体の奥の温度の上昇には気温だけでなく湿度の影響も大きいという可能性が示されました。
谷口先生からは、そもそも体の奥の温度が上がるとどうなるのか、そしてシミュレーションの結果を踏まえ、体から熱を逃がすことの重要性とその対策について解説いただきます。
谷口英喜先生
通常、人の体温や体の奥の温度は脳や消化器、筋肉が効率的に働くことができる温度に保たれています。しかし、夏に気温や湿度が高くなると、体に熱がこもりやすくなります。その結果、体の奥の温度が上がり、体がだるくなる、頭が重くなる、食欲が落ちるといった不調が現れることがあります。
さらに、気温40℃という体温を超えるような環境では、じっとしていても体の中に熱がたまりやすく、体の熱を外へ逃がしにくい状態になります。このような状態が長時間続くと、体に大きなダメージを受けるおそれがあります。
仲吉先生は暑熱環境下における「体の奥の温度(深部体温)」の変化を人体熱収支シミュレーションによって可視化する研究を行っています。
研究について詳しくはこちら
今回、過去の気象データに基づき、気温と湿度の設定を「猛暑日」は35℃、55.0%、「酷暑日」は40℃、33.7%に設定し、どの程度、体の奥の温度の上昇に違いがあるのかをシミュレーションしました。
シミュレーションデータ提供と可視化監修:東京理科大学 仲吉信人教授(データ&グラフ作成:ダイキン)
仲吉信人先生
気温40℃、湿度33.7%の酷暑日と、気温35℃、湿度55.0%の猛暑日に約20分早歩きすると、体の奥の温度は38.5℃まで上がる結果となりました。どちらの環境も上がり方にはほとんど差がみられません。このことから、湿度が要因で、気温が35℃であっても、気温40℃の環境と同程度まで深部体温が上昇する可能性があることがわかります。「40℃より気温が低いから、体への負担も小さい」とは限らないため、35℃程度の日でも十分な注意が必要です。
早歩きなどの運動をすると、体の中で熱がつくられます。体は汗を蒸発させることで熱を外へ逃がしますが、空気中の水蒸気の量が多く、汗が蒸発しにくい環境では、体内に熱がこもりやすくなります。今回のシミュレーションで温度が5℃も高くてもほとんど差がないのは、空気中の水蒸気の量(比湿※)がほぼ同じ(40℃のほうがやや低い程度)だったからです。暑さによる体への影響は、気温だけで判断するのではなく、空気中の実際の水蒸気の量(比湿)にも目を向け、総合的に考える必要があると言えます。
さらに、体内にたまる熱の量は、気温や湿度だけでなく、日差しの強さ、風の有無、服装、歩く速さ、歩行時間、体調などによっても変化します。外出や運動をする際は、気温だけで安全性を判断せず、湿度や日差し、風なども確認し、こまめな休憩や水分補給を心がけることが大切です。
谷口英喜先生
今回のシミュレーションでは、気温35℃、湿度55%の環境で約20分歩いた場合、湿度の影響で汗が蒸発しにくくなり、体内に熱がたまっていくことが示されました。
ということがよくわかる結果になりました。湿度が高い環境では熱中症の発症リスクが高まるため、気温だけでなく湿度の高さにも注意しましょう。
体の奥の熱の影響は、時間が経つほど臓器への障害として現れやすくなります。重要なのは体の奥の温度を早く下げることです。
特に猛暑日や酷暑日のように厳しい暑さの日は、わずかな時間でも体の奥の温度が上昇する可能性があります。
夏の猛暑日・酷暑日を乗り越えるためには、体に熱をためない行動が大切です。
| 性別 | 男性 |
|---|---|
| 身長 | 175cm |
| 体重 | 70kg |
| ①猛暑日 | 33℃/55.0% |
|---|---|
| ②酷暑日 | 40℃/33.7% |
| 4.8METs(早歩き) |
| ①猛暑日 | ②酷暑日 | |
|---|---|---|
| 人体への入力短波放射 | 550W/m-2 | 550W/m-2 |
| 人体への入力長波放射 | 560W/m-2 | 560W/m-2 |
| 人体周りの風速 | 1.6m/s | 1.6m/s |
| 人体周りの気温 | 35℃ | 40℃ |
| 人体周りの湿度 | 55.0% | 33.7% |
シミュレーションの湿度設定について
空気の可能性を信じ、追い求め、
新しい価値をくわえて
これまでになかった空気を、世界へ届けます。