コロナ禍において、中止となってしまった、「Salone del Mobile.Milano(ミラノサローネ 国際家具見本市)」。今回、その中の「ミラノデザインウィーク」で披露する予定だった展示について、デザイン・イノベーション・ファーム・Takramの緒方壽人氏と、ダイキンのテクノロジー・イノベーションセンターで、ブランドデザイン担当する太田由美が語りました。
出展中止の経緯
毎年4月にイタリア・ミラノで開催される家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」にともない開催される、世界最大規模のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」。数多くの企業が、ブランドのコアアイデアを発信する場として出展することでも知られ、デザイン界からも高い注目を集めています。
ダイキンも「人と空気の関係」や「風を感じる」インスタレーションを通じて、空気についてさまざまなメッセージを発信してきました。
2020年はTakramとともに、空気を見つめ直すインスタレーション「Every Air」を出展する予定でしたが、コロナ禍により中止となりました。
伝えたい事を、テクノロジーを使って表現する
ブランドデザイン担当 太田由美(太田):
ミラノデザインウィークには、世界中から高感度層が集まるので、展示の美しさやコンテクストが重要になります。
今回の展示はコンテクストを大切にまたテクノロジーを美しく表現できるTakramさんに我々ダイキンが日々向き合っている「空気」についてTakramさんの視点から表現してもらいたいと思い依頼いたしました。
Takramディレクター 緒方壽人(緒方):
今回は、コンセプトから具体的な内容まで、本当にゼロから関わらせていただき、ぼくたちにとっても大事なプロジェクトになりました。
ダイキンさんのイメージは、デザインとエンジニアリングを分けずに、いろいろなプロジェクトを持っている会社。ご依頼を受けたとき、テクノロジーを美しく見せるのももちろんですが、それよりもまず、ダイキンさんが本当に伝えたい事を、どうやってテクノロジーを使って実現するかという部分で力になりたいと考えました。
あたり前にある空気を見つめ直す
緒方:
今回のお話をいただくまでは、空気についてそんなに深く考えたことはありませんでした。リサーチしていくにつれて、空気の質や湿度、温度や流れなど、一言に空気といっても、本当にいろいろな切り口があるということに気づかされたのです。
ぼくたちは毎日、当たり前に空気を吸って生きています。しかし、よく考えてみれば、それは本当に、有り難いことなのです。
“有り難い”とは、有るのが難しいと書く。空気というものは、改めて考えるとまさにそういう存在なのだと感じました。
リサーチでも、一番強く感じたことなので、そこが伝えられるといいなと思いました。
太田:
ダイキンは空気について世界で一番考えている会社なんです。と緒方さんに話をしたら、一般の方たちは今でこそはコロナの影響で空気に関心がありますが、コロナ前だったので、その時は誰も「空気」に関心なんてないですよね。とご指摘をもらいました。そこはまず大きな気づきでしたね。
ミラノデザインウィークの出展は単発ではなく長期的に計画していたので、一年目はその「空気に興味を持ってもらおう」というのが始まりでした。
緒方:
長期的なビジョンで考えていきたいというお話だったので、今回の展示では、まず空気に対して、興味や関心を持ってもらおうと考えました。展示コンセプトは「Every Air」。あたり前にある、空気を見つめ直すという試みです。
どこにでもある空気が、決して当たり前にあるものじゃなくて、じつは貴重でありがたい存在なのだということを、多角的に知ってもらえればと考えました。
ゴールが空気に興味を持ってもらうことなら、入り口は、まず展示会場に入ってもらうこと。中に入って展示を体感して、どんどん興味を持ってもらって、空気のいろいろな見方を知る。会場を出た後に、世界の見方が少し変わるようなものを作りたかったのです。目に見えない空気を意識してもらうことが、この企画の一番のコアになっています。
これからの空気に期待すること
太田:
コロナ禍の現在、遠いところに住んでいる家族に会えない。入院している家族に会えない等想像していなかった世界になってしまって、世の中が少し暗くなってしまっているし、コロナだからとあきらめていることが多くなりました。
さらに、、空気が怖い存在になってしまっている。空気の可能性を考える企業として、この不安や脅威を少しでも取り除き安心安全な空気を提供したいと思います。
私たちになくてはならない空気は、この展示の中だけではなくて、日常のあらゆるところ(everywhere)にあります。今まで気にも止めなかった空気の存在に目を向けたとき、そこにはまだたくさんの発見や可能性があることを発信していきたいです。
緒方:
コロナ禍においてはオンラインが急速に普及しました。
だからといって、すべてがデジタルになるわけではないと考えています。閉ざされた人工的な空間から外に出て、空気を吸う。そういうことの価値は、絶対になくならないと思います。
コロナ禍の波は、まだ繰り返すかもしれませんが、少しずつ、安心して人と会ったり、集まったりして過ごせる世界に戻っていくはずです。そういうことがキチンとできるような空気を作るというところに、ダイキンさんが持っている最新のテクノロジーを生かしてもらいたい。
空気に関するテクノロジーを使って、安心して過ごせる世界を実現するような何かを、作りだしてくれるとうれしいなと期待しています。
(後編に続く)