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ミラノデザインウィーク2019 nendo×DAIKINが創る快適の新表現 —後編—

nendo代表のデザイナー、佐藤オオキ氏と関 康一郎がミラノデザインウィークでの展示について語り合いました

「光」と「影」を使って、空気を表現する

先端デザイングループリーダー 関 康一郎(関):
今回のミラノデザインウィークに出展した「breeze of light」は、広い空間の中、光と影の動きだけで空気を感じられる新感覚の展示になったと思います。

nendo 佐藤オオキ氏(佐藤):
そうですね、風を起こさずに風を感じさせるというのは、新感覚だったかと思います。また、光の量ではなく影の量を変えて空気の動きを表現するというのも、偏光板を利用した新たな取り組みでした。

関:
すごく面白いアイデアだったと思います。空気を表現する場合、デジタルコンテンツもわかりやすくインパクトがあります。ですがダイキンとしても、今回は「モノ」を得意とするnendoさんとのコラボレーションたったからこそ、あえてアナログ表現に挑戦したいと思っていました。
「自然の中には光があり、物質があれば影ができる。」という当たり前の経験を通して、これまでに感じたことのない体験をしてもらう為の準備はかなり大変だったとか。緻密な影の設計のため、年末から都内で1/10サイズの模型を作って検証されていたと聞いています。

佐藤:
そうですね。規模も大きかったですし、天井に設置した100個以上のモーターが1つでも停まれば会場全体をクローズしなくてはいけないなど、nendoのこれまでの展示の中でも設営に一際気を使った展示でした。花びらの部分を軸に対して垂直に糊付けして固定させる作業など現地でしかできないことも多く、今回はメンバーを入れ替えながら2ヶ月近く現地ミラノで設営にあたりました。

五感をデザインし、新しい空気の感じ方を実現

関:
今回は視覚も含めた五感全てをデザインすることで新しい空気の感じ方を実現できたと思いますが、いかがでしょうか?

佐藤:
仰る通り、視覚を入り口としてあらゆる五感を刺激する展示だったと思います。通常、風や空気は肌で感じるものです。しかし、今回はそれを光と影を用いて、主に視覚によって感じられるようにしたいと考えました。すでによく知っているものを、五感の別の器官で体験することにより、普段は感じ得ないような感覚でものごとを捉えられるのではないかと考えました。

関:
確かに、視覚による情報は人が空気を感じる上で温冷感(触覚)に次いで重要な要素ですからね。
加えて「breeze of light」では新しい空気の感じ方を体験してもらうための工夫を凝らしました。
例えば体験したことのない香り(嗅覚)を調合していたり、影の明澄に合わせて音響(聴覚)もチューニングされています。また、物理的な風を感じないようにしながらも不快ではない温度を保つための空調設計をしています。会場は暗く長いトンネルを抜け、白く広大な空間へ誘導し、感情の起伏や期待感を醸成します。視覚も含めた五感すべてをデザインすることで、新しい空気の感じ方を実現できたと思います。

佐藤:
そうですね。nendoとDAIKINの強みを上手く融合させて表現できた結果だと思います。
来場者の方からの反応も良好だったと感じています。細かいこだわりを知らずとも、「気持ち良かった」という感想が多かったですね。来場者の方が会場を歩く速さや立ち止まる位置などのシミュレーションを行っていたのですが、多くの場合こちらが想定していた通りにはいきませんでした。すぐには歩き始めず、息を飲んでその場に立ち尽くしていた人が多かったです。事前情報なしで快適な空間を感じてもらえたのであれば、今回の展示は成功だったと言えるのではないでしょうか。

関:
私もそう思います。加えて事前情報というところで言えば、入場前に展示の説明する様にしたところ、来場者の受け止め方が変わった事は印象的でした。最初のうちは事前の説明をあまりせず、いきなり空間演出を見てもらっていましたからね。その後、種明かしをムービーで説明し、一段高いところから全景を見ていただき、感覚で体験したことを理論的に納得できるように工夫していました。来場者の方に「そういうことだったのか!」と納得いただく事が多く、理屈がわかってから、「もう一度見てみたい」という方も多かったです。

佐藤:
理屈がわかると、感覚的な側面以外からも展示を楽しんで頂けますからね。
新しい視点で体感して頂くと、またひとつ感じ方も変わったのかと思います。

関:
仰る通りです。ですので途中からは会場に入る前にスタッフから簡単な説明をするように変更したり、Twitterで「風を使わずに風を感じることができる空間」とキャッチーな説明を発信したりしました。

佐藤:
一方で、同業者からは、軸を垂直に立てる方法や台座に0.5mmの穴を開ける方法など、「なぜこんなことができるのか?」という細部に関する質問が多かったですよね。

関:
たしかに、緻密な展示に対する質問もたくさん頂きましたね。
同業者の方にとっても非常に興味深い展示だったという証しかと思います。

空気を通じて人々の心を幸せにする

佐藤:
今回も本当にたくさんの方に足を運んで頂きました。嬉しい限りです。ご来場頂き、展示を体感しておられる姿を見ながら、今回取り組んだ空気と光のつながりを、さらに新たな取り組みに活かせるのではないかと思いました。

関:
そうですね。私も今回の展示を通じて、非常にモチベーション高める事ができました。来場者の方々に「ダイキンさんらしいインスタレーションでした」とのお声を多く頂き、空調メーカーのダイキンが新しい空気の感じ方に挑戦する姿に共感していただいたことが嬉しかったですね。今までは温度・湿度の調整や換気によって快適さを生み出す空調が中心でしたが、これからは空気を通じて人々の心を幸せにするというもう一段上の課題に挑戦したいと改めて感じました。

佐藤:
今回の展示を通して、空気は光と組み合わせることでより感じやすくなるという発見がありました。空気と光をうまく組み合わせることに、今後の可能性を感じましたね。

関:
空気って、「空気質」と捉えられることが多く、酸素を増やそうとか、有害物質や匂いの成分を除去しようとか、物質的な話になりがちなんです。しかし、「空気感」と捉えれば、気持ちの安らぎや高ぶりなど感覚的なものに広がります。お客様が最後にほしいのは心の満足や体験だと考えると、それを達成するための「空気感」のデザインを考える必要があります。その上で、そのための「空気質」をどうすべきかだったり、温冷感以外の五感要素をどう変えていくかを考えなくてはいけない。それこそが空気の魅力だと私は思います。

ダイキン工業株式会社
nendo

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