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空気そのもので建築をつくるように

建築家・藤本壮介氏が語る『「あいだ」から生みだす快適な場所』

独自の思考で次々に新しい空間を生みだし、国内外で高い評価を得ている建築家の藤本壮介さん。元々、印刷関連のビルだったという、どこか原始的でいかにも藤本さんらしい雰囲気に包まれた、東京・新宿の事務所でお話を伺いました。

「あいだ」から建築を問い直して

空調は、室内と外部の「あいだ」にあって快適な空気をつくる役目を果たしているものですが、藤本さんも注目し続けてきたのが「あいだ」。内と外、都市と住宅など、いろいろな「あいだ」に着目し、さまざまな建築に挑んでいます。「あいだ」という発想はどこから生まれたのでしょうか?

「ぼくらは、今そしてこの先、建築が快適な場所をつくる、いちばんよい方法なのかどうかを問い直しながら設計しています。そうすることで何か新しい発見があって、生活空間が少しでも豊かになればと思っているのです。問い直す時にどうしても逃れられないのが、建築の内部と外界を分ける何か――壁やガラスの窓など、大小いろいろなものがある。その『あいだ』に切り込む必要があります。

そこで、内部と外部を単にはっきり分けてしまうのではなく、何かもっと豊かに結びつけられないかと昔から考えてきました。当然、障子のように紙でできていたり、広大な庭があったりする、日本の伝統の間である曖昧な内外の境界に影響を受けています。もはや日本の伝統建築は、現代のぼくらからすると異世界で、日常からは切り離されていて新鮮な眼で見ることができます。昔の人が考えた間が、今のぼくらにどんな意味を持っていて、現代的にそれを作り替えるとしたらどんなものになるのか、興味があったのです。」

都市と自然は、意外とつながっている

藤本さんのプロジェクトには、都市と自然の「あいだ」という視点を強く感じ取ることができるユニークなものも多くあります。

「ぼくは北海道の出身で、特に田舎のほうでしたので内と外を厳密に分けざるを得ませんでした。ところが東京に移ってくると、内と外との気温差がそれほどない。外に出ても人工物に覆われているから、人工空間からいきなり自然空間にぽんと出るみたいな大きな変化がない。建築の内と外が緩やかにつながっていることを実感した時に、これは魅力的だなと思いました。

6畳ワンルームの部屋からドアを開けて外に出た時に、狭い共有廊下を通って下に降り、外に出たら道も狭い。幅2メートルくらいしかないから、自分の部屋よりも狭いくらいの外部空間が広がっている。内と外が体感的にもそんなに厳密に区別されない面白さみたいなものがあるなと感じました。内と外だけでなく、建築空間と都市空間も実は連続的に捉えられるのではないかと考えたわけです。

さらに振り返ってみると、自分が以前、生活していた北海道には自然と人工物があり、そのふたつを意識しないまま、厳密に分けていた。でも、もしかするとどこかでつなげることができるのではないかと考え始めました。

子どもの頃に遊んでいた雑木林の自然のものでできている身体的に乱雑な場所と、東京にある人工物でできている同じように身体的に乱雑な場所。どちらもちがった意味で快適で、探索したくなるようなワクワク感がある。自然と人工は、内と外とはまた別に『あいだ』のつくられ方という意味でも面白いなと思います。」

空気の厚みや重なりから生まれる建築

そんなふうにして「あいだ」の面白さに着目してきた藤本さんが、その斬新な建築で話題を集めたのが「House NA」(2007-11)。「家具と建築の『あいだ』と言えるかもしれない」と語る住宅です。

「東京の典型的な住宅密集地にあるのですが、家の中を体験すると、完全に幾何学的な人工物でできているのに、どこかやわらかく包まれるような印象があり、とても不思議でした。小さな家なのですが、広がりが感じられる。いろいろな空間が重なり合っていて、すべてが見え切れていないので限定された範囲の中なのですが、向こう側を予感させるような場所がたくさん重なり合っています。とても東京的な場のつくり方になっているかもしれません。」

© IWAN BAAN

また、「House NA」よりも少し前に完成した「House N」(2006-08)は、日本の伝統建築と現代建築の「あいだ」とも言えそうな住宅。

「こちらは『あいだ』だけで建築をつくることができないかと思い、内と外の境界をどこまでもぼかしていきました。紙の障子みたいなつくりではないのですが、何枚もレイヤーを重ねることによって、だんだん奥まっていき、『あいだ』が次の『あいだ』を生むことを意識しました。

当然、建築的な境界面はあるのですが、実際に外との境界をつくりあげているのは、空気の厚みなのです。どこまでが外の空気で、どこまでが中の空気かというのは、天気や、その時の自分がどのくらい開放的になりたいか、あるいはちょっとひとりで静かにしたいかなど、気分によっても微妙に変わってくるわけです。

ぼくの中のどこかに、空気そのもので建築をつくるという感覚があるのです。でも、空気だけでは何もできないので、空気の厚みや重なりを感じることで、テリトリーや開放的な感覚をもたらすことができないかと考えました。」

© IWAN BAAN

「こちらは、2013年にロンドンのサーペンタイン・ギャラリーの依頼で公園の中に建てたパビリオン。実際はスチールでできているのですが、まるで空気を積み上げて生まれた雲のようですよね。少し動いただけで、一つひとつの重なりが全部変わる不思議な建築物です。公園にきた方が、ここで飲みながらくつろいだり、いろいろなところに座ったり、散策したりすることができる。遠くから眺めると、ふわっと漂う雲の一片に人が浮いているように見えて、とても感動的でした。」

© IWAN BAAN

本当の快適さとは何か

藤本さんのプロジェクトを拝見していると、さまざまな建築のスタイルとともに、快適であることそのものにも、いろいろなかたちがあることに気づかされます。

「これが究極の快適な状態だと言ってつくられても、人それぞれのところもありますし、気分によってもちがいます。暑いくらいのほうが気持ちよい時もあるし、キンキンに冷えているほうがうれしい時もある。木漏れ日みたいなところがよかったり、カンカン照りのところが最高と思うこともあります。誰しもにとって、絶対的な快適を見つけることはないということですね。感覚に任せて動きまわるうちに、自然に選びとっているようなのが、本当の快適さなのではないでしょうか。

だから建築も、あまり押しつけがましくはしたくない。いろんな快適さやライフスタイルを許容できるような、深みや多様性があるといいなと思っています。」

揺るぐことなく根底にあるもの

「今、工事が進んでいるプロジェクトのひとつが、フランスの集合住宅です。本体はふつうのマンションですが、その外側に巨大なバルコニーが無数にある。場所が南仏なので、できるだけ外で楽しんでもらえるようにということで。」

© SFA+NLA+OXO+RSI

「そして、こちらがハンガリーのブダペストに建てる音楽ホール。公園の中にあり、大きな屋根を森にかけます。森がだんだん染み込んできて、気がつくと音楽ホールにいるというかたちです。1階が全部ガラス張りの透明で、樹木が屋根を突き抜けるようにして穴が空いていて、内部空間ですが日差しも入ってくる。これも自然と人工物の『あいだ』がかなり曖昧な場所になります。」

© Sou Fujimoto Architects

いろいろな建築手法を駆使した、斬新で画期的な建物が際立つ藤本さんですが、その原点とも言える「あいだ」からの思考は、常に作品を貫いていると感じます。

「自分の性格を出そうとか、根っこで考えていることを表現しなくてはいけないと思っているわけではありません。でも、やはり価値判断する時には、そこにちゃんと根ざしているかを常に自分自身で問いただしている。だから、結果的にできあがるものが見かけはさまざまでも、すべて自分の根底にあるものとつながっているのだと思います。」

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