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現地事情の実体験をもとに、インバータエアコンを世界に普及させたい
FEATURE
2022.10.25
 消費電力が小さく日本では普及率がほぼ100%というインバータエアコンだが、世界を見渡すと、普及率はまだまだ非常に低い状況がある。理由はたくさんあるが、そのひとつはコスト。テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)でインバータの低コスト化を進めているのが中島雄希さんと林伸夫さんだ。中島さんはインド駐在時に目の当たりにした現地特有の事情から開発の必要性を考える。また、林さんも普及のための低コスト化に粛々と取り組んでいる。

パワーエレクトロニクスで世の中に貢献したい

 インバータの開発チームに所属する中島さんは、大学時代からパワーエレクトロニクスの研究に携わっていた。「パワーエレクトロニクスで世の中になにかいいことができたら」という思いで就職活動をしていたが、インターンシップでダイキン工業の滋賀事業所に約5カ月間通い、会社の雰囲気が気に入ったことから第一志望として2013年に入社し、9年になる。
 入社後はインターンシップで訪れた滋賀製作所に配属されルームエアコン向けのインバータの試験を手掛けた。そこで制御のやり方をしっかりと学んだ後、現在は電解コンデンサレスインバータの担当となり、海外向け普及機に搭載するインバータの開発を行なっている。

 要素部品の小型化・レス化を実現する電解コンデンサレスインバータは、まさに中島さんの願いである「パワーエレクトロニクスで世の中を良くする」ことに直結している。具体的には、省エネはもちろんのこと、「要素部品が小さくなれば輸送コストや輸送にかかる燃料の低減につながります。技術開発を進めていくことで地球環境に貢献できます」と話している。

電解コンデンサレスインバータで、エアコンを広めて省エネをすすめる

 一方、林さんも大学時代からパワーエレクトロニクスの研究をしていた。主に電力会社に関係するようなパワーエレクトロニクス研究をしていたが、ものづくりをしたいとメーカーを志望、大阪出身ということもあってダイキン工業に興味を持ち、2011年に入社した。
 入社後は大型のモータの試験を担当、モータ制御のやり方を学び、その後、電解コンデンサレスインバータの開発チームに異動した。そのなかで担当したのはモータ制御のソフトウェアで、モータの動きに合わせた細かい制御の方法や、インバータとは切っても切れない高調波の問題などをクリアしながら、小型化やコストダウンについての研究も進めている。

 TICに異動となった後も、電解コンデンサレスインバータの開発を引き続き担当しているが、TICでは直近の商品向けでない将来の技術開発を主に行なうため、もう一段上の小型製品を目指して研究開発を進めている。

 林さんは電解コンデンサレスのインバータについて、「(比較的高価な部品である)電解コンデンサを省くことで、通常よりも価格を安くできます。発展途上国などではインバータエアコンは高いことを理由に買っていただけないことも多いのですが、電解コンデンサレスの技術でなるべく安く提供し、インバータエアコンを広めていくのが目標」と語っている。

日本と異なるエアコンの使い方

 ダイキン工業がインバータエアコン普及を積極的に進める大きな理由は、省エネ化により地球環境に貢献することだ。しかし、日本のインバータエアコンの普及率が100%に近いことに対し、北米、南米、東南アジアなど世界ではまだまだ普及が進んでいない。この理由として、インバータエアコンはノンインバータエアコンより高価であるということと、電気エネルギーが安い地域では省エネに関する関心は薄いということが挙げられます。

 「インバータエアコンは可変速制御ができるので、最初に一気に温めたり冷やしたりしたあとはトロトロ運転することで、快適性を得つつ、電気の使用量を抑えることができます。しかし、電気料金が安いとインバータエアコンを使うメリットがあまりなく、ノンインバータエアコンが主流となっている市場がありました。」と林さん。

 今後、エネルギー規制が変わり中間負荷や低負荷時の消費電力が追求されていくとインバータエアコンが増えやすくなり、省エネマインドの普及も含めて「一種のチャンスと捉えて立ち向かっていくのが、今のよりどころです」と話す林さんは、アジア圏などのインバータエアコン普及率の低さを知って「インバータ普及率が低い地域が多く、今後環境意識がますます高まっていく世の中になるので、インバータエアコンを普及させて地球環境に貢献したい。」と感じたという。

海外で感謝された経験が開発者としてのモチベーション

 中島さんには2018年に1年間、インドに駐在した経験がある。「もともと海外向け製品のインバータ開発をしてきたなかで、いろいろと聞いていた話を目の当たりにしました」と現地の様子を語り、インドにいる間に、現地社員の家のエアコンを視察するなどして「現地の家に合ったエアコンの設計が必要なんだ」と実感したという。

 例えばインドでダイキン工業のインバータエアコンを普及させるためには、もともと目指していた省エネ性能に加えて、現地の環境への対応も不可欠となる。「大気汚染もひどく、都市部の自動車工場が密集しているところでは、人間のするマスクもすぐに汚れるのですが、エアコンのフィルターでさえもすぐに真っ黒になります。さらに粉塵が舞う時期もあるんです」と過酷だ。

 電源への対応もある。インドは電源の電圧が安定しないという話はよく聞くが、周波数も大きく乱れることがあり、しっかり対策をしなければ動作に影響がでてしまう。中島さんはこれまでさまざまな対策を施してきたが、インドに赴いた後、自身が行なった対策について現地法人の方から「あれは助かりました。市場でトラブルが減りました」と直接感謝され、喜びを感じたという。

 中島さんは、現地に駐在した経験から、「きちんと対応したものを作れば、インバータエアコンが売れる見込みは十分にある。電気代の削減やCO2削減と合わせ、普及させていかないといけないな」という思いを強くすると共に、現地の状況や市場で発生した問題を実際に経験できたことはよかったと振り返る。

技術交流の発表会で、
さらにブラッシュアップ

 現在中島さんと林さんが所属するTICには、さまざまな研究者が大勢集まっている。中島さんは「TICの要所要所に“尖った”研究実績を持つ方がいらっしゃるのですが、困ったときには、やさしく、深く、幅広く教えていただけるので、これから自分も伸びていけると感じられます」と評価する。

 TICでは違う開発チームが同じフロアに集まっていており、他のチームに相談しやすい環境があり、立ち話もできれば、いつでも集まって話し合えるスペースも用意されている。しかし、誰が何について開発しているのを知らなければ、相談も話し合いもできない。そこでTICでは、開発者を一堂に集めてそれぞれが研究している製品や技術について発表する、技術交流イベントを年1回実施している。中島さんも過去にインバータについての発表をしたことがあり、それがきっかけでそれまで交流がなかった方からの相談を受けた。それが新たなつながりにも発展している。

 ダイキン工業では、技術交流イベントのほかにも情報共有の機会は多く、TIC以外とも交流は多いという。そのときにまとめられた資料が、良い勉強になっている。

 林さんも、技術交流機会の多いTICに異動してから「ほかの技術を知ったうえで開発にあたることで、別の視点から見ることができるようになりました」としている。開発現場は縦のつながりが強くなりがちだが、TICでは横のつながりがより強い。電解コンデンサレスインバータは、省エネや低コスト化といった技術的にも、世界での普及率向上といった市場的にもまだまだ発展する余地が多く残されている。TICの垣根のないオープンな雰囲気で技術開発を進めていきたいとしている。
Yuki Nakajima

テクノロジー・イノベーションセンター

2013年4月入社。島根県出身。電力変換回路技術を担当。新たな技術を市場に次々と投入することで、世の中を少しずつでも良くしていくことに挑戦している。
Nobuo Hayashi

テクノロジー・イノベーションセンター

2011年4月入社。大阪府出身。インバータ制御技術を担当。制御の高度化により電力変換器を小型化し、他社にない低コストなインバータエアコンを世界的に普及させて、環境負荷低減に貢献したい。
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