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原材料問題、低騒音化など、次々降ってくる難題に取り組むモータ開発
FEATURE
2022.10.25
 エアコンの圧縮機やファンなどの動作にモータは不可欠。ダイキン工業テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)で、高効率なDCリラクタンスモータの開発を担当する平野正樹さんと中祥司郎さんは新卒で入社してキャリア10年程になる中堅エンジニアだ。モータに対する課題は時代とともに変わっているが、お二人のモータ開発への取り組みについて伺った。

モータへの出会いから、
就職先を選ぶ

 TICの平野さんは大学の頃からモータの研究に取り組んでいた。当時はハイブリッドカーへの注目が高まってきており、「モータのニーズが今後もどんどん高まってくると考え、どうせやるなら環境に貢献できる技術がいい」とモータに注目した理由を語る。モータは電車やエレベータなどで身近に存在しるものだが、やはり自家用車に搭載するというインパクトは大きかったという。

 また、同時に海外情勢に起因するレアアース問題にも取り組んでいた。まだ、いまほどに高騰はしていなかったが、資源リスクが言われはじめたころだ。そして、就職活動をするなかで研究室の教授にモータに関わるならどこがいいだろうかと相談したところ「ダイキン工業は空調機器用のモータがメインであるが、さまざまなモータで最先端の研究開発をしている」と知り、ダイキン工業を選んだ。
 2011年の入社後は、滋賀製作所の環境技術研究所に配属され、希望どおりモータの研究に取り組むことになった。入社当初は大型モータを担当、大型空調機向けのモータのコストダウン開発に4年間取り組んだ後、5年目になるときにルームエアコン用のモータに関わるようになった。

 その後TICに移動、小型のルームエアコン向けモータ開発を経て現在は圧縮機全般のモータ開発を担当している。

 「ダイキン工業では、やりたかったことをやらせてもらっている」と語る平野さん。モータはもちろん、レアアースの使用量削減問題は、今また大きな課題になり、まさに大学時代からの研究が生きている。

電子回路から材料まで携わり、
モータの開発へ

 中さんは2012年に新卒で入社。大学では制御工学を専攻していて、DC/DCコンバータをはじめ、デジタル制御を研究していた。実家が関西で、関西で仕事をしたいと希望するなか、ダイキン工業と出会った。

 入社後は空調生産本部のモータGに配属され、業務用から家庭用にわたる空調用圧縮機モータの材料置換によるコストダウン開発を担当。さらに低振動モータの開発へと進んだ。

 その後、2015年にTICが発足すると同時にTICに配属。引き続きモータの開発に携わり、空調用圧縮機モータの研究開発を担当している。モータの開発といっても、モータ単体で済む話ではなく、組み合わせるインバータとの関わりも多い。
 中さんは「アジアやインドでは、もっと低コストでエアコンを作り、売っていこうとしているため、ローコスト開発に注力しています。そして、最近は欧州をはじめとして各国で騒音規制が強化されたことで、室外機の静粛性を高めるための低振動化が必要です」と話す。

 低振動な圧縮機の実現には、モータ、インバータ、圧縮機が一体となって振動を抑える必要がある。「以前はモータ、インバータと圧縮機の開発の関わりは決して多くなかったのですが、ここ数年はより密になっています」と横のつながりの重要性を語り、TICにおけるチームごとの垣根の低さや、気軽に相談できる雰囲気に満足している様子だ。

次ではなくさらにその先の製品に搭載する技術を粛々と研究

 平野さんと中さんが所属するTICでは、ダイキン工業の経営戦略計画「FUSION」に沿って研究テーマが設定され、チームで日々開発にいそしんでいる。テーマはすぐに研究が終わるようなものではなく、長年にわたって粛々とやっていくようなものが選ばれるという。

 モータの基本的な価値は変わっていない。基本的な開発の軸として「効率、音、振動、資源の問題」などという普遍的な課題が根底にあるからだ。そして、時代や商品の移り変わり、ニーズの変化を受けて開発テーマが決まっていく。

 実際にニーズや顧客などの声は生産拠点に隣接する滋賀製作所の開発部隊から上がってくる。そして、TICに課せられる開発テーマは、次の製品に搭載するものではなく、さらにその先の先を目指すものになることも多い。

小型のモータは生産数が多く責任は重いが、TICの雰囲気に助けられる

 入社間もない頃から携わった大型モータの開発から小型モータへと担当が変わった平野さんは、当初、扱うものが小さくなることで、実験も楽になると淡い期待を抱いていたという。しかし、実際に担当してみるとその期待を打ち砕く現実があった。

 小型モータが搭載される製品はルームエアコンで、大型機に比べ販売台数が桁違いに多いボリュームゾーンとなる。生産数ももちろん多い上に商品のバリエーションがいくつもあるため、仕様を1つ決めるにしてもさまざまな手間がかかる。

 その上、これまでの研究の積み重ねで性能面でも進化しているため、さらに性能を引き上げること自体が難しくなっているのだ。

 一方、中さんは研究中の低振動のモータについて「まだまだ伸びしろがある」と言う。これまでダイキン工業の強みであるモータの磁力設計によって低振動なモータを実現してきた。さらなる低騒音ニーズに対応させるためには、さらにモータの進化が必要だ。

 そこで、チーム間の連携がしやすいTICの利点が出てくるという。中さんはモータの開発チームだが、気軽にグループを横断して相談できる雰囲気がTICにあるからだ。

他チームとの協力体制がTIC、
そしてダイキン工業の強み

 エアコンで空気を冷やすためには圧縮機が必要で、圧縮機を動かすためのモータは必須、高効率で低コストのモータを実現するためにはインバータの進化も不可欠となる。開発はそれぞれの担当するチームが別々に行なっているが、実際の製品として成り立つにはチーム間の連携が絶対条件だ。そこにTIC独自の雰囲気がプラスに作用している。

 困ったとき、すぐに声を上げ、相談できる人が近くの席にいる。基幹職も近くにいる。すぐに集まって話し合えるスペースもTICにはある。

 ちなみにこの雰囲気はTICだけにとどまらない。TICは先の先となる研究をしているが、より製品開発現場に近い開発部隊との連携もしていなければ、TICの成果は製品には活かせない。現在も月に一度という適度なペースで進捗状況を共有、困り事がないか、開発はニーズに合ったものになっているかなどのコミュニケーションを密にしている。

 平野さんはダイキン工業やTICの雰囲気をこう語る「TICでは困ったことがあれば、社内だけでなく、協創先の企業・大学へも課題をオープンにすることで、幅広く相談して開発を進められる。そして、チャレンジして失敗したとしても、そのことで咎められることがないので、挑戦し続けられる」。これからもTICの良好な雰囲気のもと、モータの進化が期待できそうだ。
Masaki Hirano

テクノロジー・イノベーションセンター

2011年4月入社。愛知県出身。モータ技術開発を担当。環境にやさしいモータをダイキンの空調機を通して世界中に届けたい。みんながあっと驚くような新しいモータ技術に挑戦し続ける。
Shojiro Naka

テクノロジー・イノベーションセンター

2012年入社。奈良県出身。モータ技術開発を担当。社内だけでなく社外の企業・大学とも協創することで、世界No.1の低振動で高効率なモータを開発することを目指している。
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