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ダイキンが取り組む“空調防疫”のすべて~コロナ対策から花粉対策まで
FEATURE
2022.12.15
コロナ禍において注目が高まっている「空調による防疫」。空気のプロであるダイキンの考える防疫対策について、ダイキンTIC(テクノロジー・ イノベーションセンター)で空調防疫の最前線を走る技術者が語ります。

ダイキンの空調防疫1.新型コロナウイルスを不活性化!「ストリーマ技術」

―新型コロナウイルスを不活性化するという研究結果も出ているという「ストリーマ技術」。
ダイキン独自のストリーマ技術とはどのようなもので、何に対して有益なのか?担当である技術者・黒井氏に伺いましょう。

 
黒井:ストリーマ技術というのはプラズマ放電の一種で、簡単に言うと、高速電子と呼ばれる酸化分解力の高い電子を広範囲に発生させる技術です。当社はこれを安定的に発生させることに成功しました!
空気の中の窒素や酸素などの分子に電気の力を加えて、分子から電子を引っ張り出すことで放電という現象は起こるのですが、ストリーマ放電によって発生した高速電子は、主として4つの「ストリーマ分解素」を創り出します。そしてこれらの分解素が有害タンパク質を分解してくれます。
ストリーマ放電で発生するエネルギーは、熱エネルギーに例えると約10万℃にもなる。実際に熱くなるわけではありませんが、一般的なプラズマ放電(グロー放電)と比べて1,000倍以上の酸化分解力を持っていて、空気中の臭いや菌類のほか、シックハウスの原因であるホルムアルデヒドにも効果的なんです。
ストリーマ技術のいちばんの特徴は、強いパワーをもつ電子を安定的に発生させることが可能な点です。
例えば、瞬間的なパワーであればストリーマ放電より高い放電のさせ方はあるかもしれませんが、製品化するためには「安定的に」というところが肝心なんですよね。
あとは、その技術を利用する仕組みにも独自性があります。 発生した活性子を機外に放出してウイルスにぶつけるという方法もあるんですが、ストリーマ技術は機内に集めたウイルスに活性種をぶつけるんです。そのため、エネルギーを集中させて、効率的に不活性化させることができるんですよ。

注目を集める「新型コロナウイルスの不活性化」

―2019年12月、新型コロナウイルスが発生。感染が拡大する中、ダイキンはいち早くストリーマ技術の防疫効果の検証を進め、2020年7月には新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、マウスコロナウイルス(MHV-A59)に対するストリーマ技術による不活化効果を確認しています。
ストリーマを照射して1時間で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は【93.7%】不活化。照射してから2時間経つと99.8%以上、3時間経過後には99.9%以上の不活化が実証されています※。

次々と変異を重ねるコロナウイルスに対しても、その都度変異株への効果を検証。2022年1月にはデルタ株を含む4種の変異株、2022年2月には、2021年11月末に国内で発生したばかりのオミクロン株に対しても不活性効果を確認しています。
黒井:ダイキンではストリーマ技術のさまざまな効果について国内外の大学や試験期間による実験を続けていて、新型コロナウイルスが発生する以前からさまざまなウイルスや細菌への抑制効果や不活性効果が確認されているんですよ。

ストリーマ技術の防疫効果が実証された実験項目

―黒井氏が語るように、ストリーマ技術は多岐にわたる実証実験を行っており、これまでに効果が実証されたのは以下の項目になります(2022.3時点)。

■ウイルス
・令和2年7月16日…新型コロナウ イルス(SARS-CoV-2) /岡山理科大学
・令和3年6月25日…新型コロナウイルス(アルファ株)/大阪大学
・令和3年7月1日…新型コロナウイルス変異株(ベータ株・ガンマ株)/大阪大学
・令和3年8月27日…新型コロナウイルス変異株(デルタ株)/大阪大学
・令和4年1月…新型コロナウイルス変異株(オミクロン株)/大阪大学

・平成24年4月…RSウイルス/和歌山県立医科大学
・平成21年9月14日…新型インフルエンザウイルス(A型H1N1型)/ベトナム国立衛生疫学研究所
・平成21年4月16日…強毒性鳥インフルエンザウイルス(A型H5N1型)/ベトナム国立衛生疫学研究所
・平成21年7月31日…インフルエンザウイルス(A型H1N1型)/(財)北里環境科学センター

■細菌
・平成22年3月8日…細菌(結核菌・BCG変異株)/(財)北里環境科学センター
・平成22年2月15日…細菌(結核菌・臨床株)/東京慈恵会医科大学
・平成21年7月31日…細菌(黄色ブドウ球菌)/(財)日本食品分析センター

■カビ
・平成16年9月28日…カビ(クロカワカビ)/(財)日本食品分析センター

■アレル物質
・平成16年9月14日…アレル物質(スギ花粉 Cryj-1)/和歌山県立医科大学
・平成21年9月14日…アレル物質(コナヒョウヒダニ rDerfⅡ)/和歌山県立医科大学
・平成16年9月14日・H16年12月17日・H17年7月7日…アレル物質(30種類)/和歌山県立医科大学
・平成17年7月7日…アレル物質(花粉・カビ・ダニ)/和歌山県立医科大学

■有害物質
・平成17年11月…アジュバント(DEP)/山形大学
・平成18年12月8日…アジュバント(VOC)/東北文化学園大学
・平成17年11月…アジュバント抑制効果/和歌山県立医科大学国立環境研究所

■水除菌
・平成22年7月5日…レジオネラ菌/東京慈恵会医科大学
・平成22年4月12日…緑膿菌(シュードモナス菌)/(財)日本食品分析センター
・平成22年4月12日…細菌(黄色ブドウ球菌)/(財)日本食品分析センター
・平成22年4月12日…細菌(大腸菌)/(財)日本食品分析センター

ダイキンの空調防疫2.空気中の微粒子を99.97%除去!「HEPAフィルタ」

―続いては、高性能エアフィルタ「HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)」による空調防疫について。ダイキンが開発しているこちらの技術も黒井氏に聞きます。
 
HEPAフィルタというのは、空気清浄機などに用いられているフィルタの一種です。精密機器などを製造する工場なんかには「クリーンルーム」というのがありますよね。HEPAフィルタは、もともとはそこに使われていたんです。ほとんどのHEPAフィルタはガラス繊維なんですが、ダイキンはフッ素繊維でできている。これは、ダイキンがフッ素メーカーであることに 由来しています。
あんまり一般の方には知られていないんですけど、ダイキンってフッ素化合物の製造販売もやっているんです。実は、世界的にもトップクラスのシェアを持っている。 フッ素繊維で作られたフィルタは、圧力損失が低いのが最大の特徴です。圧力損失っていうのは、液体や気体が配管などを通る際に失ってしまうエネルギーのことで、フッ素繊維でできているHEPAフィルタは圧力損失をガラス繊維の半分以下に抑えることができる。これによって、機器を小さくできたり、消費電力を減らすことができたりするわけです。

HEPAフィルタと防疫との関わり

黒井:先ほどクリーンルームで使われていたと言いましたが、HEPAフィルタは空気中に浮遊する微粒子を99.97%も除去できる精密なフィルタです。この高い性能を防疫に活かして、ウイルスを捕集して不活性化するといった防疫技術の開発を進めています。

―ダイキンは、2020年12月に「抗ウイルスHEPAフィルタ」を搭載した空気清浄機を発売。コロナ禍で三密が懸念される商業施設などの換気機能を強化する機能を持ち、いち早く時代のニーズに応えています。
2021年4月には、『UVストリーマ空気清浄機』を新発売。この清浄機には「抗菌HEPAフィルター」のほか、前述したストリーマ技術、深紫外線を照射する「UVC LED」が搭載されており、ウイルスを30分で99%以上抑制、菌についても従来のストリーマ空気清浄機の約10倍の速さで抑制できます。黒井氏のような技術者たちが日々研究を進める技術は、時代のニーズに合わせて素早く製品化され、空調防疫の一翼を担 っているのです。

ダイキンの空調防疫3.切迫した医療現場に迅速に提供!コロナ禍で需要が高まる「陰圧装置」とは

―ダイキンは、医療現場の空調防疫にも貢献しています。
陰圧装置とは、気圧の低い「陰圧(負圧)」状態を作り出すことで気流を一定の方向に制御し、空気感染やエアロゾル感染の可能性を持つウイルスが混じった空気の拡散を防ぐ装置。病室や診察室に設置することで、患者さんの発するウイルスが拡散して感染が拡大するのを防ぐことができます。コロナ禍における医療現場では院内感染の拡大防止が大きな課題となっており、陰圧装置へのニーズは切迫した状態にありました。

ダイキンのスピード開発

―先ほどご紹介したHEPA技術をもとに、ダイキンのグループ会社がわずか1ヶ月という短期間で製品化を進め、2021年5月には陰圧装置2製品を発売。8月には折り畳み式の陰圧ブースを発売し、隔離できるエリアを持たない小規模なクリニックや高齢者施設などで活用されています。陰圧装置以外にも、コロナ禍におけるダイキンのスピード開発はさまざまな製品・サービスを世に送り出し続けています。
・換気機能付きエアコンのラインナップを拡充
・全熱交換器ユニット『ベンティエール』に後付けができる新たな商品ラインナップを追加
・空気や換気のお悩みに応える相談をWEBと電話で受付
・WEBコンテンツ「上手な換気の方法」を公開。「PRアワードグランプリ」で最高賞であるグランプリを受賞
黒井:全熱交換器っていうのは、室内の快適な温度や湿度を保ちつつ省エネ性も維持しながら効率的な換気ができる機器なんです。コロナでお店や学校などの人が集まる施設は冬でも換気のために窓やドアを開 けていますが、やっぱり寒い(笑)。この全熱交換器は快適な温度を保ちながら換気ができて、且つ省エネ。さらに言うと、この新しく発売された商品は建物の内壁や天井、軒下など、比較的簡単に後付け設置ができるというのが大きな特徴です。全熱交換器はもともとは天井に埋め込むのが主流だったので、後から取り付けるには照明や空調、ダクト配管によっては設置ができなかったりするんですよ。
でも、新しいシリーズなら、天井に吊り下げるタイプ、屋外に設置できるタイプ、小規模な空間に適した露出型のタイプなど設置場所が選べるようになったんです。換気に困っている学校やお店にはピッタリな機器だと思います。

コロナ禍だからこそ、空調防疫にはスピード対応が必要です。ダイキンにはこうしたスピーディな開発を得意とするグループ会社が複数ありますし、製品を販売してくださっている代理店のレスポンスも早い。緊急性が高い二―ズを素早く現場から掬いあげ、開発から販売までを迅速に進める体制が整っています。どれだけいいものを研究開発しても、使ってもらえなければ意味がない。「こまりごと」に対する迅速な対応ができるのは、ダイキンが空調防疫に貢献するうえで大きな強みになっていると思います。

ダイキンの空調防疫4.防疫対策に“空気で答える”ために~今後の展望~
空調の在り方も「新しい生活様式」に

―“空気で答えを出す会社”として、さまざまな空調防疫に取り組み続けるダイキン。長引くコロナ禍の中で、研究開発の前線に立ち続ける技術者は、どんな未来を見据えているのでしょうか。

黒井:これまでの空調の仕方や換気の仕方っていうのを、改めて見直し、変えていかなきゃいけないと思っています。コロナ禍で多くの方が苦しまれている中で、「空調で何ができるか」「適切な換気とは」「効果的な空気清浄は」を、大学の先生方との共同研究などを通して追求し、新しいやり方を創り上げていかないといけない。それが、空調メーカーであるダイキンがすべきことだと思っています。

防御から攻撃に転じる。これからの空調防疫

防疫という観点で僕が考えていることは2つあって、1つはウイルスの攻撃力を下げること。適切な換気方法でウイルスを含む空気を捨て、HEPAフィルタなどの高性能なフィルタでウイルスを集めて、ストリーマやUVを用いた技術で除菌、つまりやっつける。この「捨てる・集める・やっつける」という3つのステップで、空気中のウイルス濃度を下げるということを実現していきたいと思っています。
2つ目は、防御力のアップ。加湿をすることで鼻や喉の粘膜を正常に保ったり、快適な環境で十分な睡眠をとったりすることで、人の免疫力を高める。そんなことができる空間を作りたいんです。

これまでの空調って、有害なものを取り除く、マイナスをゼロにするという、まさに防疫の「防御」っていう考え方だったんです。これからはそれをプラスに持っていくために、良いものを加える、という発想の転換をしてみようと。例えば有効な物質を加えた空気を放出する仕組みだったり、暑いから下げる、寒いから上げるという単なる温度調整ではなく、より健康的になる温度制御だったり。より健康的な空気を作るために、新しい技術開発にチャレンジしているところです。
僕はアトピーや喘息などのアレルギー持ちで、実家に帰ったりして、空気や環境が変わるとすぐに体調が悪くなるんです。自分のアレルギー体質のおかげで、空気と健康の関係を身をもって実感してて、ここに来て活きているというか(笑)。仕事を通じて自分の悩みを解消できる機会に恵まれたので、ディフェンシブな考え方だけでなくオフェンシブな「健康的な空気」を実現したいと思ってます。

―ただ暖める、ただ冷やすを超える。黒井氏が言うように空調に求められる機能が多様化している今、ダイキンは空調防疫を迅速・多角的な展開でリードする存在であり続けます。
Kiyoshi Kuroi

テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師(※2022.12.15 時点)

2014年3月入社。和歌山県出身。IAQ技術担当。空気には人の人生を必ず豊かにできる力があると信じ、冷やす/温めるの次の空気の価値作りに挑み続けている。
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