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社内大学で学んだ優秀な新人を出向させる“ダイキン流データ活用人材育成術”とは?
FEATURE
2024.01.31
 ダイキンでは、2017年12月にダイキン情報技術大学(DICT)を社内に開設し、希望する新入社員に対して2年間の徹底したICT教育を実施し、次世代の情報系人材を育成してきた。DICT修了後はさらに、各部署に配属された若手をいったん出向させる育成プログラムにも取り組んでいる。このプログラムを主導してきたダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)主任技師の藤本正樹氏と、出向経験者である石破慎也氏と岡村由一氏に、出向の狙いや実体験で得られた成果などについて話をうかがった。

優れたベンチャーに出向させ、DICT第一期生の成長を加速させる

──まずダイキン入社後のご経歴と現在のお仕事について教えていただけますか?

藤本:TIC データ活用推進グループで主任技師を務めています。このグループはデータを利用した社内業務の改革がミッションです。その中でSCM/ECM領域や、製造現場のDX化、社内データマネジメントを推進・支援する業務を担当しています。また今回の出向に関する責任者であり、これから紹介する出向経験者二人は私のチームメンバーです。

石破:私は2018年に入社して、DICT第一期生として情報系の技術に触れ、2年間の社内研修後、データ活用推進グループに配属され、画像検査自動化プロジェクトを担当していました。その後、出向してHACARUS社(※1)にお世話になりました。現在はダイキンに戻り、ECMを軸にした業務改善を担当しています。

岡村:私も石破と同じ2018年入社で、DICT一期生です。2年間、研究用GPUスパコンの構築や運用に携わっていました。その後データ活用推進グループに配属され、出向直前まで目視検査を代替する検査アプリの導入・実装を担当していました。約1年間の出向を経て半年前にHACARUS社からダイキンへと戻り、今はCADを利用した検査自動化など、ECM周りの業務改善を行っています。
──出向プログラムの目的と、出向者を選出する基準はなんですか?

藤本:DICTでは、IT技術とビジネス知識を持つデジタル人材を育てていますが、石破と岡村はDICT第一期生のため先輩がおらず「こういう高度デジタル人材になりたい」というロールモデルがありませんでした。そこでDICTの修了生が自らの技術レベルをさらに高め、お手本となる人材にいち早く育ってもらいという思いで考えたのが、技術力の高い外部の企業や大学などの力を借りた人材育成プログラムでした。

 

HACARUS社とは前職で少し関わりがあり、同社が優れたAIベンチャーで、画像処理が得意だと知っていたからです。またHACARUS社はデータサイエンスで有名な滋賀大学の河本薫教授をアドバイザーに迎え、先生の考え方にも共感していたことから、出向先としてお願いした経緯があります。単に技術だけでなく、HACARUS社のように、意志決定スピードが速くて風通しのよい文化や考え方をもったベンチャースピリッツを体感して、ダイキンに持ち帰ってほしいという思いがありました。

従来と異なる刺激的な環境で、ハイレベルなエキスパートに学ぶ

──ここから出向したお二人にお訊ねします。なぜ本プログラムを希望されたのですか?

石破:データ活用推進グループに配属されてから、画像処理関連の最新技術を追いつつも、基本的には1人で1つのテーマを実施していました。当時は社内のデータサイエンティストは少なく、仕事の進め方や細かいアドバイスもほとんど得られなかったので、やり方は自己流にならざるを得ないという課題感がありました。そこで外部のエキスパートに付いて間近に学び、知見を得たいと考えていました。そこでこの出向は良い機会になると思って、自分から手を挙げました。
 
岡村:私は、石破から「自分の気質はベンチャーに向いている」と言われたことがあり、ベンチャーに興味をもっていました。そのため石破が出向から戻ってきたタイミングで出向についての打診を頂いたとき、是非とも行ってみたいということでお返事させていただきました。また職場では石破と同様に我流でやってきたため、きちんとした経験を積みたいという強い思いがあり、出向を希望しました。
──出向先ではどんな仕事をされたのですか? 具体的な内容について教えて下さい。

 

岡村:HACARUS社の主力サービスである外観検査ソリューション「HACARUS Check」のフロントエンド開発に携わりました。その業務の中でハードウェアやデータベースに触れながら、かなり幅広い範囲をカバーさせてもらいました。5人のメンバーと一緒に開発する経験も積ませていただきました。自分よりもレベルの高いエキスパートがいる環境で揉まれたことは、本当にためになりました。やはりスピード感はベンチャーならではで段違いに速く、何か面白いアイデアを出すと、すぐに取り入れてもらえる環境が新鮮でした。

 

石破:私は出向中、主に2つの業務を担当しました。1つは、病理画像の解析を行う医療分野です。高解像度の病理画像の分析を自動化するといった内容でした。チームには医療系のデータサイエンティストもおり、領域をまたがった知見が得られて刺激的でした。もう1つは、自動車の外観検査をHACARUS社のアルゴリズムを使ってチェックするプロジェクトでした。

出向先での武者修行で得られた開発のスピード感と現場の納期感

──出向を通じて得られた学びやマインドの変化、実際に成長したと感じるところなどがあれば教えて下さい。

 
石破:データサイエンティストの素養として「データ分析力」「エンジニアリング力」「ビジネス力」が挙げられますが、特にデータ分析力が一番身についたと感じています。仕事を進める上で、周りの皆さんに必死で付いていかなければならなかったので、スピード感はかなり上がったと思います。あくまで体感ですが、従来よりも4割ぐらいは速くなった気がします。

 

出向前は何かにつまずくとそこで足踏みしていましたが、どういうアプローチでやればよいかということが明確になり、だいぶスムーズに仕事が進むようになりました。ある課題に対し、どんなモデルを適用するのが最適なのか? などといったノウハウが養われました。

 

岡村:HACARUS社はお客様との距離が近く、その点で大きな学びがありました。ダイキンでは相手が社内でしたが、出向先では実際にお金を出して購入してくれるお客様なので、売上げにも影響が出ます。そのため納期も厳しく、緊張感を持って仕事を進めました。スケジュールもタイトで「最初は大丈夫かな?」と不安に感じましたが、納期に間に合わせるために無駄な工程を削ぎ落すなど、どうすべきかを考えながら工夫してやり通すことができ、自信がつきました。また開発の比較的早い段階から入り、納品後のアフターケアまで関わらせていただき、かなり仕事の視野が広がったように思います。

─出向経験がダイキンのお仕事にどのように生かされていますか? また今後のキャリア形成について新たな展望はありますか?

岡村:ダイキンに戻ってから、チームで開発を行う2つのテーマに携わらせていただいています。1つはマネジメント寄りで、もう1つは実働寄りです。計画立案からマイルストーンの立て方まで、以前では考えられなかったことができるようになりました。開発にもHACARUS社で学んだ納期意識が役に立っています。今後のキャリアについては、技術が好きなのでテックリード的な方向かなと思っていますが、まだ決めていません。出向によって視野が広がり、キャリアの選択肢も増えたように感じています。
石破:私は製品外観検査のテーマを2023年3月まで続けていて、そこで出向経験が生かされたと思っています。データの取得から分析、レポーティングに至るまで、検査システムの導入可能性検証を短期間に一気通貫で担当し、PoC時のトラブル解決にも、HACARUS社で学んだノウハウが役立ちました。モデルで無理やり解決せずに、ビジネス業務でカバーできるならそこに落とすなど、無駄足を踏まずに仕事を遂行できました。判断の取捨選択スキルも身に付いたと思います。将来的なキャリアですが、テーマの課題設定の適切さを測る物差しや尺度が自分の中にできたので、ビジネスデータサイエンティスト的な立ち位置で自分の能力を伸ばしたいですね。

ロールモデルの先達に! 狙いどおりの成果が得られた出向プログラム

──最後に、メンバーを出向した手応えと所感について、責任者として感想をいただけますか。

藤本:二人には異なる目的で出向してもらいましたが、期待通りの成果を持ち帰ってくれたと思っています。

 

石破君には、データサイエンティストの中でもビジネス課題をデータ分析に落とせることを狙いにしていました。1年間出向先でエキスパートに接し、自分の考え方に自信を持って取り組めるようになったようです。また利用者に寄り添ったメリットを意識しながらテーマに取り組んでいるように思います。そういう意味では十分に出向の成果が得られています。

 

一方、岡村君はテックリードにつながるITエンジニアという立場で出向してもらいました。開発面で技術的な相談ができなかった環境から、出向先のチームで実際にお客様を抱えつつ厳しい納期感を持ちながら製品を開発した経験が、いまの仕事のテーマに十分に生かされていると感じています。

現時点では二人とも「100点」というわけではありませんが(笑)、出向にて学んで欲しいと考えていたことは、しっかりと持ち帰ってくれていると評価しています。また100点満点になるのは、これから先で良いと考えています。1年間の出向で得られたものは自分の素地になるものなので、そこからどう能力を伸ばしていけるのか、それを一緒に育んでいければと思っています。これからの二人の更なる活躍に期待しています。



※1.
会社名:株式会社HACARUS
代表者:代表取締役 染田貴志
所在地:京都府京都市中京区高宮町206 御池ビル 8階
設立:2014年
URL:企業情報

※記載内容とプロフィールは取材当時のものです。

 

Masaki Fujimoto

テクノロジー・イノベーションセンター 主任技師

2020年4月入社。奈良県出身。データ利活用に関するIT技術を担当。
社内のすべての部門/部署で、データ分析を活用できている状態を目指したい。

 

Shinya Ishiba

テクノロジー・イノベーションセンター

2018年4月入社。大阪府出身。設計開発・製造におけるデータ活用、IT技術を担当。
データ収集から分析・活用迄、一気通貫で取り組み、ECMをベースに業務革新を実現したい。
Yoshikazu Okamura

テクノロジー・イノベーションセンター

2018年4月入社。広島県出身。データ利活用に関するIT技術を担当。
データ利活用の技術を武器に、開発や製造の現場で「より便利に、より楽に」を実現したい。
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