ダイキン工業株式会社

 
DAIKIN RECRUITING WEB

オイルレス磁気軸受ターボ圧縮機の技術開発が生み出す、
空調事業の変革とグローバル社会への貢献

オフィスビルやホテルといった大型施設に加えて、スマートシティや地域規模での冷却ニーズなどにも用いられるダイキンの産業用空調機器(アプライド製品)。一般的な家庭用エアコンや業務用エアコンとは異なる視点・技術開発で、産業用空調機器のさらなる進化に挑んでいるメンバーたちがいます。今回はその中でも、北米空調事業の一環として「磁気軸受ターボ圧縮機」の開発プロジェクトに携わる5名のメンバーに集まってもらい、プロジェクトの概要やグローバルとの連携、そしてこれからの展望などについて話を伺いました。

テクノロジー・イノベーションセンター圧縮機技術グループ
圧縮機技術グループリーダー 主席技師
H.Matsuura
テクノロジー・イノベーションセンター協創プロジェクト
TIC アプライド協創PJリーダー 主任技師
H.Miyamura
ダイキンアプライドアメリカズ社
アプライド開発センター ADC副センター長兼Senior Vice President
Y.Nakazawa
テクノロジー・イノベーションセンター協創プロジェクト
TIC アプライド協創PJ ターボ圧縮機 メカ設計メンバー
T.Imai
テクノロジー・イノベーションセンター協創プロジェクト
TIC アプライド協創PJ ターボ圧縮機 要素技術開発メンバー
I.Kamiji

──まずは、北米空調事業における「磁気軸受ターボ圧縮機の開発プロジェクト」の概要や、その目的などについて教えてください。

H.Matsuura
私たちは、アプライド製品における冷媒を搬送するターボ圧縮機の開発、例えるなら、自動車で言うところのエンジンに値するものの技術開発を進めています。そもそもこのプロジェクトが始まったのは、ダイキンの大きな強みであるインバータ(※1)技術を、アプライド領域でも展開していこうと考えたことがその発端。そして、省エネ化に対する意識の浸透がまだまだ進んでいない北米地域において、このインバータを普及していくというのが、ダイキンが北米空調事業の一環としてこのプロジェクトに取り組んでいる大きな目的になります。

※1 インバータ
周波数変換装置。電圧・電流・周波数をコントロールできる技術。空気を冷やしたり暖めたりする役割を担っている圧縮機や、ファンを動かすモーターの回転数を、このインバータ技術で細かく制御できることで省エネとなる。

H.Miyamura
ターボ圧縮機の中でも磁気軸受(※2)は磁力で軸を浮かすため、その他の軸受機構とは異なり、オイルレスで稼働させられるというのが一番の特徴。そしてダイキンは、業界に先駆けてこの技術開発を行ってきた存在でもあります。ちなみに、磁気軸受のシステムに取り組んでいる企業は世界的に見ても数社ほど。さらには、圧縮機と磁気軸受、モータの技術開発に同時に取り組んでいるのは世界で見てもダイキンだけです。磁気軸受のシステムとその制御を自前化することによって、自社製品に対する最適化はもちろん、他社の製品に対する差別化にもつながると考えています。

※2 磁気軸受
リニアモーターカーと同じ原理で、磁力で軸受とシャフトとの間に空間を作り、シャフトを浮かせることでオイルレス化を実現。接触型の軸受に比べ、小型・大容量、高速回転を実現できるだけでなく、空調機の省エネ化・省メンテ化にもつながる。

Y.Nakazawa
また、ダイキンの開発している磁気軸受ターボ圧縮機は、従来のシステムに比べて3割ほど効率が上がるという数字も出ています。つまり電気使用量やフロンガス、CO2の削減などにも大きく貢献できるということ。ダイキンとして、これまではルームエアコンや業務用エアコンという商品展開が多かった中で、この圧倒的な高効率、高信頼性さらには環境問題を解決する新たな技術や商品を次の世の中のスタンダードにしていきたいと考えています。
T.Imai
技術的な観点から言うと、一般的にターボ圧縮機は容積型圧縮機と比べると大きな圧縮比を生み出すのは不得意です。その点で、ダイキンでは圧縮比が大きくなる低温環境に対応した圧縮機開発を進めています。磁気軸受技術に加えて、冷媒、熱交換器の開発やインバータを小型化する技術もダイキンは持っていますので、磁気軸受ターボ圧縮機でヒートポンプ対応が実現して利用範囲が広がり、これまで以上にインバータが普及していけば、社会や環境に対してもより大きな貢献ができると考えています。
I.Kamiji
単純なモノの提供ではなく、広くソリューションという考え方が取り上げられている時代だからこそ、「ダイキンの技術を使って新たに何かできないか」という視点での足がかりという意味でも、本プロジェクトは意義があると考えています。磁気軸受ターボ圧縮機の開発には多くの技術や知見が求められますが、このチームにはそれらを持つメンバーが数多く集まっていますので、将来的に多くのソリューションを生み出していく可能性は十分にあると思います。

──同プロジェクトにおけるグローバル連携はどのようになっていますか?

H.Matsuura
本プロジェクトにおけるグローバルでの連携の中心は、中澤が副センター長を務めているアメリカのADC(※3)になっています。日本のTIC(※4)で要素技術開発を進め、実際の製品化に向かう仕上げの部分をADCで行うといった流れがメインです。ただ、これらは先行開発と呼ばれる位置づけなので、最終的な商品にしていく開発は、アメリカのもう一つの拠点であるDAA(※5)などで行っています。
H.Miyamura
その他、DAAと同じ機能を持つ拠点が中国とイタリアにもあります。そのため、先行開発の間はアメリカのADCとかなり頻度高くやりとりをしつつ、その後の年度開発に移行をすると、中国やイタリアとも連携を取っていくようなイメージです。昨今はコロナウイルスの影響もあってオンラインがほとんどですが、平時であれば、我々TICのメンバーが現地に向かうことも多いですね。
Y.Nakazawa
私はADCの副センター長として現地での商品開発全体の責任を持っていて、将来を見越したグローバル戦略や商品戦略、技術戦略などのつくり込みも進めています。日本のTICとは、技術戦略を一緒につくっていく過程や、実際の商品開発のステージにおけるエンジニアとの連携などもとっていますので、やりとりは頻繁に行っていますね。グローバルにおけるプロジェクト進行の最適化に取り組むという意味でも、やりがいの大きさを感じています。

──最後に、みなさんの今後の構想や展望を教えてください。

H.Matsumura
“空調グローバル企業No.1”を掲げるダイキンとして、アプライド領域、さらにはこの磁気軸受ターボ圧縮機というカテゴリの中でも、世界No.1であり続けるというのが第一にあります。私自身、ダイキンに入社して28年ほど圧縮機の技術開発に携わっていますが、「No.1である」と胸を張って言えるところまで来ていると確信していますので、まずはとにかく世の中にこの技術と製品を早く市場に広めていきたいというのが率直な想いです。
H.Miyamura
まず技術者視点で言えば、開発したら終わりとならないのがこの世界。競合他社が必ず追いかけてくる中で、次々といいものをつくり続けなければならないというのが、私たちの責務だと思っています。そういった中で、いち早く最新の技術を市場に投入することで、まずは世の中や社会に貢献していきたいというのが、我々の目指す一番の構想であり、展望でもあります。同時に、既存の技術をよりアップデートしていくべきか、それともまったく違う技術に取り組んでいくべきか、それを同時に考えることも非常に大切だと思っています。
Y.Nakazawa
ダイキンのターボ圧縮機は非常に効率が良く、信頼性も高いのですが、コストの観点ではまだまだ従来品に比べて優位性が弱いところもあります。だからこそ、そのコストを大幅に、抜本的に下げる技術の開発というのを、TICやADCをはじめとするグローバルでの連携の中で推し進めていきたい考えです。空調の世界における規制自体が大きく変わろうとしている今、それは言い換えるなら、一気に他社を引き離して北米No.1を狙っていく大きなチャンスでもあります。ダイキンの持つ技術を惜しみなく投入することで、市場を、そして世界を変えていきたいですね。
T.Imai
ダイキンの大きな強みは、やはり各要素の技術者が集結していることにあると思います。私が携わっている機械設計だけでは到達が難しいところでも、各要素の技術者やプロフェッショナルと力を合わせて協創できる環境は、個人的にもとても心強いですし、大きなイノベーションを起こせる可能性を感じています。ダイキンならではのシナジーを活かして、これからも良い商品を開発していきたいと思っています。
I.Kamiji
ハードの開発も、ソフトの開発も、サービスの開発も、全てはつながっていると思っています。その上で、顧客の抱える問題や課題の解決に一番近づくことができる技術を高いレベルで持っているのがダイキンだと思っていますので、今後他社が追いかけてきたとしても、半歩先を行くことができる存在でありたいですし、それを体現し続けるプロジェクトとして、今後も力を入れていきたいと思います。

※3 ADC
アプライドデベロップメントセンター(北米)

※4 TIC
テクノロジー・イノベーションセンター

※5 DAA
ダイキンアプライドアメリカ社

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