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大阪・関西万博の会場に現れる
「氷のクールスポット」とは?

夏場を中心に開催される大阪・関西万博。この大きなイベントに訪れた人々の暑さ対策として、屋外でも居心地の良い空間をどのように創り出すのか?今回「氷のクールスポット」の実現に挑戦した2人のデザイナーが語ります。

屋外でも涼しい「氷のクールスポット」

太田:

「氷のクールスポット」は、直径8.7m、高さ3.7mの木造建築で、ベンチがあり、30人ほどが入れる休憩場所です。昼間に発電した電気を蓄電池に貯め、そのエネルギーを使って夜間に建物の壁に組み込まれた10枚の氷パネル内に氷を作り、翌日に氷の解ける熱(輻射熱)でクールスポット内を冷やすしくみになっています。ダイキンが空調機で培ってきた氷蓄熱の技術と太陽光発電を組み合わせた新しい空間ソリューションです。

開発のきっかけは夏場を中心に開催される大阪・関西万博において、日本博覧会協会から暑さ対策について要望があったことでした。空調総合メーカーとして、新しい空調技術に挑戦する絶好の機会であると捉えて、「何かできないか」とアイデア出しを進めることになりました。
社内の技術者、営業、研究とさまざまな部門を総動員し、そこで出たアイデアを具体化するために社内の空調技術者やダイキンアプライドシステムズの技術者とのディスカッション…というサイクルを繰り返しました。その中で絞り込まれてきたアイデアが、「屋外を感じられる木陰のような休憩所」でした。

常識を超えた「屋外で空調」への挑戦

太田:

コンセプトは決まったものの、実現までにはかなり苦労しました。技術者から「車に乗っていて、車内が冷えていても運転席に日射が入るとすごく暑いでしょ」と、屋内であっても太陽の光は熱エネルギーが非常に高いことを指摘され、陽の光を入れながら空調するという難題に挑もうとしている現実を突きつけられ、心が折れそうになったこともありました。そうした中で、「ダイキンが持っている氷蓄熱技術を活用した空調はどうか」と空調技術者からアドバイスを受け、最終的に採用したのが、昔から使われてきた「氷室」という方法でした。ただ、使う技術は決まったものの、「屋外で空調を効かせる」という部分のハードルがとにかく高かったです。

足立:

要望事項は、冷房運転しても外気が入れば室内の温度は上がる、というあたりまえの状態を、屋外でありながらも、できるだけそうならない設計にして欲しい、という常識と相反する要望でした。そこで、外部の光を取込み、開放的な空間を作りながらも、外部からの直接的な空気の流動を遮断する絶妙なバランスを構築するために、外格子と内格子を二重で構成し、さらに、その間に氷室を置くことによって、外気の進入を少しでも防ぐデザインにしました。人の目線にあたる氷室の部分は、機器開発の方により、アクリルパネルのデザインにしていただいたため、光が透過し、外の気配を感じながらも時間によっては氷室で作られた氷が見え、技術を楽しみながら「涼」を感じられる空間を作ることができました。
私の所属するダイキンアプライドシステムズは、医薬品や半導体、食品工場といったあらゆるモノづくり現場の建設や空調制御、また、企業様の製品試験を行う環境試験室といった、“皆様の生活を支える製品”を支える空間・空調を作る会社です。
私はその中で建築を担当しています。今回の設計はいつもと全く異なる設計で、特に要求条件が「屋外」と非常に難しく、挑戦でした。

日本古来の木造、環境に調和する外観デザイン

太田:

外観については、日本ならではの格子を用いた外観にしたいと伝えて、足立さんがアイデアを出してくださいました。

足立:

太田さんの想いを具体化するために、デザインの条件として、次の2つを考えることになりました。1つは木造で、ダイキンから提示されたコンセプトである「氷の木陰」をイメージさせるデザインであること。そして、もう1つは、屋外的な開放感を与えながらも、環境に配慮した建築、設備計画を行うことです。

1つ目の「木造」という点において、「木の力強さと美しさを魅せること」は重要なポイントでした。建物規模が小さいだけにお客様の視界に入る範囲は多く、魅せ方には非常に苦戦しました。一番のこだわりは、建物の中心、梁の中央にかぶら束(づか)(※1)を配し、日本古来の建築技術である「ほぞ」を設けた部分です。木造の美しさや日本古来の技術を感じ、傾斜する柱や梁を座席近くに配することで、木の美しくしなやかでありながらも、力強さを感じてもらえる設計にしています。そのほかにも、木々の枝、木陰を表現するために、方杖の形状も工夫しました。

※1)かぶら束(真束(しんづか)):多角形からなる小屋組の真ん中で、構造躯体となる各登り梁の力の均衡を担う構造体。

外格子は、格子の上部と下部とで間隔を変え、ミリ単位で調整することにより、1本1本のタテ格子材が途中で切れることなく、面が連続して見えるようにしています。
また、内格子は、氷室の氷が見えつつ外の光を程よく透過する格子間隔としながら、メンテナンス時の取り外しを考慮し、1スパンを3つのパーツで構成しています。継ぎ部分が見えないような納まりにすることで、面格子としての美しさを表現しました。

太田:

2つ目は、外格子と内格子の隙間から入り込む陽の光とアクリルの水槽の透過で屋外にいるような開放感を与えるデザインとしました。また建物単体だけでなく建物周囲との調和、環境に配慮した設備計画という点で、立地は植栽計画があるエリアを選定しました。
植栽エリア内のクールスポットへの導線動線設計と大屋根リングから見下ろした時の周囲の木々との調和にもこだわり、屋根上には緑の太陽光パネルを採用しています。

建築×空調という新しいソリューション

足立:

シンプルでありながら、余計なものを見せないようにし、居心地のいい空間をどのように表現するか、建築的な部分にもこだわりながら設計しています。利用者にとって居心地が良いなと感じてもらえると嬉しいです。今回の経験は、普段と異なる気づき、見識を広げることができました。今後、より視野を広げ、様々な分野にも目を向け知識・見識を深め、技術者として成長、挑戦していきたいと思います。

太田:

会場内を歩いていて入ってみたいなと思う看板や、遊歩道や植栽との調和。中に入った時のふわりと感じる香りとベンチに座って見上げた天井の梁の美しさ、格子の隙間から感じる外の気配と心地よい空調設計。この一連の体験を通じてダイキンを感じてもらえたらと思います。
今回のプロジェクトは、ダイキンの技術を活用して夏場にお客様がふ~っと一息付ける「建築×空調」という新しいソリューションへの挑戦でした。
私にとっては建築という未知の世界でしたが、足立さんはじめ建築の専門家や空調技術者と一丸となって進めることができ、学びがあり充実したプロジェクトでした。
今後もダイキンって面白い会社だなと感じてもらえるお客様体験を提案していきたいです。

ダイキン工業万博特設サイト
https://www.daikin.co.jp/air/activity/expo2025

ニュースリリース
https://www.daikin.co.jp/press/2024/20240822


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