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シリコンバレーのスタートアップと繋がるWebサイト

ダイキン工業は「テクノロジー・イノベーションセンター(TIC)」のサテライトとして2017年5月に「Daikin Open Innovation Lab Silicon Valley(DSV)」を開設しました。その活動の中で求められるようになったのが、情報発信だけではなく、ダイキンのビジョンを伝え、さまざまな人材とのコミュニケーションハブとなる双方向型のウェブサイトでした。

左から 木下悠(TICからDSVに出向しウェブサイトなどPR活動の企画を担当)
Kevin Ninomiya(DSVメンバーとしてPR企画とイノベーション・パイプラインとの連携を担当)
池田順一(TICからデザイナーとして参加)

―今回のウェブサイトが開設される経緯を教えてください。

木下:
もともとシリコンバレーでは2014年から少人数での活動を行ってきましたが、2018年秋に『Open Innovation Lab Silicon Valley』として機能を大幅に拡大することになりました。そこでシリコンバレーの優秀人材へのアプローチやダイキンのプレゼンス向上のため、双方向のコミュニケーションが可能な情報発信媒体を新たに設けることになったのです。また、DSVのウェブサイトは英語で発信されるので、ダイキングループグローバル全体の協創の受付窓口(Open Innovation Gateway)になるということも意識して作成しました。

池田:
私が関わるようになった2016年当時、まだシリコンバレーでは知名度が低く、所長が『名刺を出しても“デイキン”って読まれるんだよ』と苦笑いしていたのを覚えています。世界有数のテクノロジーの発信地として知られるカリフォルニア州シリコンバレーは、年中半袖で過ごせる陽気な気候で、雨もほとんど降らない地域。空調に対する理解や認知は低いのだなと感じました。そこで2017年にOpen Innovation Lab Silicon Valleyの紹介ムービーを制作し、19年にウェブサイトの開発に至りました。

Kevin:
”Open Innovation“と名前が付く通り、DSVは外部との協創をダイキンがどれだけ重要視しているかを象徴する存在です。それだけにやはりビジネス的な観点からKPIが大事になります。それを達成し、伸ばし続けるためには、協創の数を増やし、より良質な協業テーマを見つけなければいけません。その中でアメリカの、特にシリコンバレーというスタートアップやIoTの集積地では、ウェブサイトが必須。オフラインだけではなく、オンラインでより多くの人と繋がり、人材を『呼び込む』ためのプラットフォームが必要だと感じていました。

―サイトのコンテンツ制作においてはどのような点を重視したのでしょうか?

木下:
特に意識したのは実際のコラボレーション事例の紹介やダイキンの具体的なニーズを示し、スタートアップからの注目度を高めることです。単にダイキンについて知ってもらうだけでなく、実際に「ダイキンとコラボレーションしたい」と思い、我々にコンタクトを取ってもらうにはどのようなコンテンツが必要なのかを徹底的に議論しました。また、具体的なコンテンツ作成のためにはまず私たちダイキンのビジョンやミッションを明確にする必要があり、その議論にも時間を要しました。

池田:
ウェブサイトの成否の指標としては閲覧数(PV)が一般的ですが、DSVの活動目的はシリコンバレーで素晴らしい人材・技術・パートナーと共に新たな価値を生み出すこと。単にPVを稼ぐために興味を惹くコンテンツを並べるだけでは意味がありません。重要なのは我々がどんな夢(ビジョン)を描き、どんな使命(ミッション)を持って、どんな価値(バリュー)を生み出そうと考えているのかを伝えること。そして、それによりどんな社会課題を解決するかを示すことです。それによって私たちの考えに共感を持ってくれた人たちと繋がることができると考えたのです。

Kevin:
それを実現するためにこだわったのがコピーです。スタートアップや将来一緒に働くことになるかもしれない仲間に向けたメッセージは、『グッとくる』ものでなければいけません。ただ、そこには言語の壁という苦労がありました。ウェブサイトを見るのは基本的に現地のアメリカ人。なおかつアメリカはそもそも州単位や州内でも場所によって地域性が大きく異なります。感覚のズレを合わせるためのディスカッションを頻繁に行いましたが、予想以上に苦労が多いものでした。しかし、最終的にはみんなで議論し、いいものが出来上がったと自負しています。

―デザインやインターフェイスなどUXにおいて意識した点はありましたか?

池田:
いくらビジョンやバリューが大事とはいえ、切々と自身のことだけを語るサイトは退屈ですよね。そこで、訪れた人が『ダイキンと協創したらどうなるだろう?』という想像が膨らむようなUXを意識しました。シリコンバレーではピッチイベントと呼ばれるプレゼンイベントが盛んです。さまざまなスタートアップが数分という短い時間でプレゼンを行い、投資家がその場で出資を決める刺激的な世界。このスピード感の中でダイキンのことを理解してもらうためには、冗長なサイトでは見てもらえません。ビジョン-ミッション-バリューが 1分で伝わるように、そして興味を持ってくれた人が理解を深めてもらえるように、DSVから来訪者へピッチすることをイメージして構成を検討しました。

木下:
また、DSVのアットホームな雰囲気が伝わるデザインも心がけたことの一つです。

Kevin:
デザインでは色合いを重視しました。サイトの訪問者がデザイン性を判断するのに要する時間は30秒もないそうです。となると第一印象が大切。例えばスタートアップなら『こんな清潔感のある会社と協業したい』、将来の社員候補なら『こんなイケてる会社で働きたい』という思いを抱いてもらえるように心がけました。

―日本とアメリカにまたがるプロジェクトとして、苦労された点はありましたか? また、それをどのように解決されたのでしょうか?

池田:
今回のプロジェクトはロサンゼルスのクリエイティブエージェンシーとの協業で行いました。初期には言語化してもビジュアル化してもなかなかこちらの意図が伝わらず、要望に対して違ったものが出てくることもありました。しかし、日本とは異なる新しい土地で新たな人たちを相手に伝える上で、これまでの日本流の価値観やセオリーに合わせてもらうより、伝える相手に近い感覚を重視した方が良いと、あえて違う視点を楽しむ感覚を活かすように心がけました。

Kevin:
これにはダイキンがエンジニアの会社であることと関わりがある気がしています。私もエンジニア出身ですが、エンジニアは良くも悪くも白黒はっきりさせながら仕事を進めようとしがちです。言い換えれば、フィーリングを重視するのが苦手。そのせいか、当初はクリエイティブエージェンシーの意見をすぐに取り入れることができませんでした。それでも、相手に私たちの要求やその意図を理解してもらい、その上で相手の意見も聞きながら理解したことで、最終的には素晴らしいものになったと思っています。

―今回のプロジェクトを通して、改めて「デザイン」について考えたことや発見があれば教えてください。

池田:
今回のプロジェクトでは、ムービー制作やウェブサイトという一方通行のメディアだけでなく、SNSを連携させることでパートナーとの双方向コミュニケーションを目指しました。それらを通してユーザーにどんな体験を提供し、共感を得るのか。このような思考は、表現やアプローチは異なるものの、プロダクトデザインやインターフェイスデザインなどに共通するものでもあり、デザインの役割はこうした体験設計なのだと再認識しました。まだ始まったばかりではありますが、世界中のグローバル企業や先端技術、優秀な人材が集積するシリコンバレーで、このウェブサイトやムービーがコミュニケーションハブとなり、どんなパートナーと繋がることができるのか楽しみにしています。

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