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活動のお知らせ

活動レポート

2013年4月-9月の活動レポート

2つの事業は順調に進み、国内初の取り組みもありました

カツラの森、命あふれる川の復元事業

岩尾別川沿いの河原に新しい防鹿柵を設置しました

2013年の夏、岩尾別川沿いに新しい防鹿柵を設置する作業に着手しました。今回の柵は高さ3メートル以上、総延長約270メートルです。

これまでの2年間に設置した柵は河畔林が比較的良い状態で残されている森の中でしたが、今年はいよいよ河原に柵を設置。今回も、ダイキンの従業員ボランティア12名をはじめ、多くのボランティアの方のご協力をいただきました。

ボランティアのご協力を得て、新しい防鹿柵を設置しましたボランティアのご協力を得て、新しい防鹿柵を設置しました

刻々と変化する川の状況を記録しながら、河川構造多様化事業を進めています

2012年秋の記録的な大雨では河川環境が大きく変化しました。本来の川の姿に戻してサケやマスが産卵できる環境を整える「河川構造多様化事業」もそういった自然の状況変化を踏まえて今年も作業を進めています。2013年の春には、河川の測量とモーターパラグライダーを用いた空撮をしました。これらの記録は、作業計画を立案するためだけでなく、作業前後で河川がどう変わったのかを比較するための資料としても活用します。

7月には、岩尾別川の中上流部にあたる3ヵ所に重機で岩石などを配置して、本来の流れからずれてしまっている河道を中央に誘導しました。

モーターパラグライダーで空撮して、川の流れを調べましたモーターパラグライダーで空撮して、川の流れを調べました

河川の上流側にもオショロコマやヤマメが生息していることがわかりました

2013年、岩尾別川に生息する魚の基礎調査として、定点の調査区域でオショロコマとサクラマス河川残留型(通称ヤマメ)を合計74尾採取しました。

さらに、岩尾別川上流域にあるダムの上流側でも調査を行いました。このダムは落差が3メートル近くあり、下流から魚が上がれないため上流側は隔離された環境になっています。今回の調査の結果、そのように閉ざされた環境の中でもオショロコマや過去に放流したヤマメが生息していることを確認することができました。

採取した魚は計測後、速やかに放流しています採取した魚は計測後、速やかに放流しています

知床の人とヒグマの共存事業

センサーカメラを設置して、効果を検証していきます

2013年6月、例年より遅い雪解けを待ち、ルサ川左岸から昆布浜までのヒトとクマの生活圏をわける電気柵を再稼働させました。再稼働後は、人々の生活圏内である道路側へのヒグマの出没は見られませんでした。エゾシカが引き起こす交通事故や昆布干場への進入も激減し、地域住民には大変喜ばれています。

2013年9月に、相泊から昆布浜と、北浜地区に合わせて約3.5キロメートルの区間に新たな電気柵を設置しました。

また、電気柵の効果を検証するため、4ヵ所にセンサーカメラを設置しました。今後の電気柵の運用に有効なデータが得られることが期待されます。

電気柵の近くで草を食むシカ電気柵の近くで草を食むシカ

なかなか見られなかったヒグマの生態が明らかになりつつあります

2013年6月には、人前にめったに姿を見せない個体の画像やDNA標本を採取するために、自動撮影カメラとヘアートラップの両方を用いた新たな調査を始めました。木に吊るしたシカ肉などの匂いに引き寄せられたクマが、周りに張られた有刺鉄線をくぐるときにカメラが自動的に作動するという仕組みです。有刺鉄線に引っかかった毛からはDNAが抽出されます。

この調査で、これまで未確認であったオス8頭、メス1頭が確認されました。特にオスは警戒心が強く、野外観察だけではなかなか確認できない個体が多いだろうと推測されていたとおりの結果となりました。野生のクマの遺伝的関係にまで踏み込んだ研究は、世界的にも成功した例がほとんどありません。多くの個体のDNAが得られたことで、ルシャ地区にすむヒグマたちの血縁関係や社会構造の解明が大きく進むことが期待されます。この地区のヒグマたちの集団がどんな性質を持つのかを明らかにすることで、ヒグマを含む世界遺産の原生自然と私たちが共存するすべを考える大きな手がかりが得られます。

自動撮影カメラで確認された推定体重300キロを超える大きなオスのヒグマ自動撮影カメラで確認された推定体重300キロを超える大きなオスのヒグマ

日本初!野生のヒグマを麻酔銃で生け捕りにし、GPSで追跡しています

ルシャ地区に生息するヒグマが四季を通じてどのように移動しているのか?それが具体的にわかれば、人間生活とのトラブルを防ぐ工夫ができるかもしれません。しかし野外観察やDNA分析だけではこの謎を解明することはできません。そこでヒグマを生け捕りにし、カーナビシステムでおなじみのGPSで追跡することを計画しました。

2013年6月、麻酔銃によって2才のメスのヒグマ「ビーコ」を生け捕りにすることに成功。野外で自由に活動しているヒグマを麻酔銃で捕獲することは難しいと考えられており、国内では行われたことがありませんでしたが、今回知床で初めて成功し、GPSを備えた標識を取り付けることができました。取り付けられたGPS標識は位置情報を1時間おきに記録します。

データによると、ビーコはルシャ地区のやや北側に位置するウブシノッタ川周辺を中心に行動しながら、時折ルシャ地区に来ているようです。6月から9月にかけて、ビーコが稜線を越えて羅臼町の区域に入ったのは一度だけでした。

今後も追跡を続けて、行動パターンの分析を進めていきます。

夏の間のビーコの行動軌跡夏の間のビーコの行動軌跡

生け捕ったビーコの首にGPS標識を付けて行動を追跡しました生け捕ったビーコの首にGPS標識を付けて行動を追跡しました

※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。

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