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活動のお知らせ

活動レポート

2012年10月-2013年3月の活動レポート

2つの事業の準備が着々と進んでいます

カツラの森、命あふれる川の復元事業

総延長540メートルの防鹿柵が完成しました

2011年の秋、エゾシカから木々を守るための約234メートルの防鹿柵を設置しました。2012年10月には、さらに約340メートルを延長して、総延長約540メートルの柵が完成しました。

今回の作業には、ダイキンの従業員ボランティア11名のほか、森づくりワークキャンプの参加者など、多くのボランティアにご協力をいただきました。

防鹿柵の延長作業が完了しました。ダイキンの従業員ボランティアの参加は3回目です防鹿柵の延長作業が完了しました。ダイキンの従業員ボランティアの参加は3回目です

防鹿柵のおかげで芽や若木が順調に育っていることがわかりました

2012年6月に引き続き10月にも、防鹿柵の内側と外側それぞれ21ヵ所で、植生を調査しました。調査ポイント内には、イタヤカエデやケヤマハンノキなど11種類の芽や若木が見つかりました。

防鹿柵の外側と内側を比べると、外側では6月の調査で発見した2年目以降の芽や若木のうち10月の調査まで残っていたのは約70%でしたが、内側では約83%が残っていました。このことから、柵のおかげで苗がエゾシカなどに食べられることなく順調に生育していることがわかりました。

柵の内外、それぞれ21ヵ所で植生を調査しました柵の内外、それぞれ21ヵ所で植生を調査しました

記録的な大雪に対応して、急きょ柵のかさ上げをしました

この冬は、12月と1月の最深積雪が観測史上第1位となるなど、記録的な大雪となりました。防鹿柵は積雪のことを考えて2.5メートルの高さにしていますが、柵の巡視をしていると、その高さに迫る雪が積もっている場所がいくつか発見されました。そこで、2013年2月に急きょ、防鹿柵のかさ上げ作業をしました。

この経験を活かして柵の高さを見直すなど、今後の森づくりの糧としていきます。

エゾシカが柵内に侵入しないように、防鹿柵をかさ上げしましたエゾシカが柵内に侵入しないように、防鹿柵をかさ上げしました

岩尾別川流域で、オショロコマ350尾、サクラマス164尾を発見しました

6月に引き続き、10月にも岩尾別川流域の魚類を調査しました。絶滅が危惧されているオショロコマのべ350尾、サクラマス降海型(海に下って回遊した後、産卵期に川を遡上するタイプ)1尾、サクラマス河川残留型(別名ヤマメ。一生を河川で過ごすタイプで降海型より小型)のべ163尾を発見しました。

この魚類調査とあわせて、川幅や水深・流速・川底の石の大きさなども記録していましたが、今回の調査が終わった10月末から11月下旬にかけて記録的な大雨に見舞われ、大幅な増水によって河川環境が変化してしまいました。2013年1月に札幌で開催された河川アドバイザー会議では、この増水がもたらすエネルギーと岩石の移動の関係などについて意見を交わしました。今後、今回の増水で岩尾別川に生じた変化を分析し、河川構造の復元作業に活かしていきます。

魚の体長などを計測した後は、速やかに放流しています魚の体長などを計測した後は、速やかに放流しています

河畔にすむ鳥類や中小型ほ乳類の調査もしています

岩尾別川の周辺にすむ生物の調査もしています。

6月には、川沿いの約2.6キロメートルの区間で鳥類の調査をしました。天然記念物のクマゲラをはじめ、17種類の鳥類を確認しました。

そのほか、自動撮影装置を設置して、中小型ほ乳類の生息状況も調査しています。秋にはエゾタヌキが多く見られたほか、ふだん見かけることの少ないイタチの仲間であるエゾクロテンも撮影されました。岩尾別川の河畔を多くの動物が利用していることがわかります。

極寒期にはほとんど活動しなくなるエゾタヌキも、秋は活発に動き回ります極寒期にはほとんど活動しなくなるエゾタヌキも、秋は活発に動き回ります

知床の人とヒグマの共存事業

約4キロメートルの区間にヒグマ対策フェンスを設置しました

羅臼町の昆布浜からルサ川左岸にかけて、約4キロメートル区間における電気柵の新設が11月に完了し、試験稼働を開始しました。2012年は人の住むエリアへのヒグマの侵入がいつになく多い年でしたが、設置区間に限ってはヒグマの出没は1件も確認されませんでした。また、設置区間では、エゾシカが昆布干し場に糞を落とす被害も激減したという声が聞かれました。

12月下旬から3月上旬までは、知床半島東岸のヒグマは冬眠中です。それに伴い、電気柵も通電を停止します。

ルシャ地区に、世界的に見ても非常に多い、43頭のヒグマが生息していることがわかりました

知床半島には多くのヒグマが生息しています。なかでも半島の西側に位置するルシャ地区には、ヒグマが密集して暮らしていると考えられています。どんなヒグマがどのように行動しているかを解明することは、ヒグマが人の生活圏に出てくることを未然に防ぐ方法を探ることにつながります。

1年の半分は雪に閉ざされる知床半島。野外調査のほとんどは短い春・夏・秋に実施されます。ヒグマたちが冬眠している冬は、春から秋にかけて収集したデータ整理とサンプル解析に追われる時期です。

遺伝情報を調べる方法の一つに「ダートバイオプシー」があります。これは特殊な注射器を発射して、針に残った皮膚などの組織からDNAのサンプルを取る方法。今回の調査では、国内で初めて、「ダートバイオプシー」によって野生のヒグマのサンプルを収集することに成功しています。

得られた遺伝情報や毛色の特徴などを調べてみると、少なくとも43頭のヒグマがルシャ地区に暮らしていることがわかりました。これは世界的に見ても非常に高い生息密度です。

今後、DNA解析などによってルシャ地区のヒグマたちの血縁関係を明らかにし、他のエリアで得られたヒグマの情報と照合することで、移動の実態を解明していきます。

漁師と共存するヒグマ 漁師とヒグマが互いに互いを無視しあうことで上手に折り合いをつけて暮らしています漁師と共存するヒグマ
漁師とヒグマが互いに互いを無視しあうことで上手に折り合いをつけて暮らしています

「ダートバイオプシー」で採取した皮膚から遺伝情報を解析します    「ダートバイオプシー」で採取した皮膚から遺伝情報を解析します「ダートバイオプシー」で採取した皮膚から遺伝情報を解析します

※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。

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