活動レポート
2012年4月-9月の活動レポート
知床での支援が始まって、約1年が経過しました
カツラの森、命あふれる川の復元事業
カツラの苗316本を苗畑に植えました
昨年の秋、岩尾別川の支流で、自然に落ちた種子から発芽したカツラの苗を多数確認しました。春になるとエゾシカなどの野性動物に食べられる恐れがあるため、雪が溶けた5月に316本を掘り取り、苗畑に移し替えました。この苗の植え替えには、ダイキンから12名の従業員がボランティアとして参加しました。
移植後は、週1~2日間のペースで水撒きや除草などの維持管理をしています。これらの苗は、数年間、苗畑で育てた後、岩尾別川沿いの防鹿柵内に植えていく計画です。
7月(左)と9月(右)の苗畑。順調に育っています
防鹿柵の効果を検証する植生調査を開始しました
昨年の秋、エゾシカから木々を守るために防鹿柵を設置しました。6月から、柵の内外で現在ある樹木の太さや高さ、自然に発芽した苗の状態などを計測し、苗がエゾシカなどに食べられることなく育っているかどうかを秋まで追跡調査することで、エゾシカの自然環境への影響の強さや防鹿柵の有効性を検証していきます。
さらに、防鹿柵を広げる作業に取りかかりました。今回は約340メートル延長する計画で、最終的には総延長約538メートルの柵が完成する予定です。
岩尾別川本来の姿を取り戻す「河川構造多様化事業」を本格スタートしました
岩尾別川下流は、人の手によって川の流れが変えられたり、護岸が施されたりしています。「河川構造多様化事業」では、本来の淵や蛇行のある川に戻していき、防鹿柵による森づくりと併せて実施することで、サクラマスやオショロコマが産卵できる環境を広げていきます。
6月に川の環境や生物種を調査した後、7月には川の流れを元に戻しサケやマスの産卵環境を整えるため、下流近くの約100メートルの区間に岩石などを配置しました。また、川の流れや増水時の水位の変化を知るために、水位計を設置しました。作業後の変化を確認し、結果の検証や必要な手直しにつなげます。
8月にサクラマスの産卵状況を調査したところ、産卵床1床(サケが川底を掘って卵を産み、埋め戻した場所のこと)を確認しました。
岩石を置いて、川の流れを本来の姿に戻します
サクラマスのメスを確認しました
知床の人とヒグマの共存事業
モデル地区で、人とヒグマの生活圏を分けることに成功しました
5月、羅臼町・昆布浜のモデル地区で、積雪による損傷を避けるため、冬の間は撤去していた全長750メートルの電気柵を再稼働しました。羅臼町では今年、ヒグマが頻繁に出没していましたが、昆布浜地区ではヒグマの目撃や被害が発生しておらず、電気柵によって人とヒグマの生活圏を分けることに成功しました。また、ヒグマ対策の電気柵によって、エゾシカが昆布の干し場がある海岸や道路に侵入することも減って、地域住民の方々に大変喜ばれました。
9月には、昆布浜からルサ川左岸にかけての約4キロメートルの区間に、新たな電気柵の設置を始めています。
※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。