活動レポート
2012年1月-3月の活動レポート
冬の間に、さまざまな調査を進めました
カツラの森、命あふれる川の復元事業
深い積雪の中、防鹿柵の見回りを行いました
雪が降り積もる1~3月にかけて、秋に設置した防鹿柵の中にシカが侵入していないか、柵が損傷していないかを確認するため見回りを行いました。この冬は記録的な大雪に見舞われましたが、計8回の見回りの結果、シカの侵入や柵の損傷は確認されませんでした。なお、冬期はこの柵に向かう道路が閉鎖されているため、歩くスキーなどを履いて往復約2時間をかけて見回りを行っています。
また、最も積雪が深くなると予想された2012年2月下旬には、柵沿いの雪の深さを計測しました。その結果、積雪は平均1.27メートル、深い部分で1.47メートルにのぼることがわかりました。この防鹿柵は、冬季の積雪のことを考えて、2.5メートルの高さにしています。今回の計測によって、この柵の設計が、数値的にも冬季の積雪量に対応できていることがわかりました。
「河川アドバイザー会議」が開催されました
2012年1月に札幌で「知床世界自然遺産地域科学委員会 河川アドバイザー会議」が開催されました。この会議は、学識経験者や行政機関などが集まり、世界遺産地域内のダムなどの河川改良工事やサケ科魚類のモニタリングについて、科学的な視点からアドバイスを受けることを目的としています。
この会議で、岩尾別川流域で実施している河畔林と河川の自然再生の取り組みについて説明し、専門家の方から「景観だけでなく、生物多様性を中心に据えることを期待する」「防災の観点から、流域全体を視野に入れるべき」といったご意見をいただきました。今回いただいたアドバイスをふまえて、今後の活動を進めていきます。
エゾモモンガの痕跡を発見しました
河畔林の回復とともに、その周辺の生態がどのように変化するのかを把握するためには、まず現状を理解する必要があります。そのため2012年2月に、岩尾別川沿いで中小型ほ乳類の痕跡調査を実施し、エゾモモンガがトドマツを食べた痕跡を発見しました。エゾモモンガは葉の付け根を食べるため、葉が周辺に散らばることでその痕跡がわかります。
河畔林が豊かになるにつれてエゾモモンガの個体数がどのように変化していくのか、今後もモニタリングを続けていきます。
知床の人とヒグマの共存事業
DNA解析によって、オスのヒグマが広範囲に移動していることが明らかになってきました
斜里町ルシャ地区をはじめ、知床半島の西側中央部から先端までは人がほとんど住んでおらず、多くのヒグマが生息しています。2011年10月から12月にかけて実施したのべ40日あまりの調査で、ルシャ地区だけでメス成獣約14頭、オス約4頭を確認しました。
そして今回採取した体毛などからDNA解析を進めていく中で、ルシャ地区のヒグマは同じ母親ヒグマを起源として大きく2つのグループにわかれることが確認され、メスのヒグマが他の地域から移動してくることは少ないことがわかりました。それに対してオスは、知床半島の東側の羅臼町はもとより、半島付け根に位置する標津町で見つかったオスのヒグマと、ルシャ地区のヒグマとが血縁関係にあることがわかり、かなり広い範囲を移動していることが明らかになってきました。
※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。