京都・妙心寺退蔵院の水琴窟。この手水鉢の下に大きな甕が埋め込まれている。
写真:首藤光一/アフロ
所蔵:京都・妙心寺退蔵院 http://www.taizoin.com/
江戸の造園技術の最高傑作
手水鉢を使ってしばらくすると、どこからか清らかな音が聞こえてくる。その妙音が琴の音に似ていることからいつしか「水琴窟」と呼ばれるようになった。江戸時代の造園技術の最高傑作の一つである。夏ならば暑さを忘れる涼やかな音。冬には寒さを慰める味わい深い音となるその音は、実は地中から聞こえてくる。水漏れ防止のために粘土やモルタルで固められた底部に釣り鐘状の甕を伏せて埋め、そのてっぺんに穴を開けておく。手水鉢からの水がその穴から滴り、底に溜まった水面に落下した音が反響し、妙音を出す仕掛けである。全国でその存在が確認されているというから、ぜひ一度聞いて見てはどうだろう。