昭和期に入り、ニシン漁は大きく衰退。
栄枯盛衰を見つづけた旧青山家住宅は札幌市内の「北海道開拓の村」に移築され、静かに余生を送っている。
北の地の防寒と採光の知恵
北の海に早春を告げるニシンの群来。銀鱗が沖を埋め尽くすと、勇壮な漁夫たちが浜を漕ぎ出す。ソーラン節で調子を合わせ、建て網にかかったニシンを船にすくいあげるのだ。幕末から大正にかけて、北海道の経済を支えたニシン漁。鰊御殿と呼ばれる網元の屋敷が、往時の盛況を今に伝える。小樽市の祝津に18ヶ統の網場を拓いた青山家の母屋も、そのひとつ。南側の雨戸や窓には、明治20年代から一般に使われ始めた板ガラスがはめ込まれ、防寒と採光への工夫が施されている。
かつてここで寝起きした漁夫は約50人。ガラス越しに見える太陽は今も変わらず、春を待った彼らの想いを語りかける。
参考文献:「北海道開拓の村ガイド」(財団法人 北海道開拓記念・開拓の村文化振興会発行)