山形県・朝日村に残る破風と煙出し櫓を備えた民家
写真:片岡巌/アフロ
丈夫な蚕を育てるための屋根裏の知恵
出羽三山に抱かれた朝日村に残る、厚い茅葺きの家。屋根裏で養蚕を営んだ住まいには、蚕を丈夫に育てるための工夫が施されている。
屋根に刈り込まれた窓は破風と呼ばれ、棟の上の煙出し櫓とともに換気の役目をした。蚕は発育の段階によって適した温度や湿度が異なり、良い繭を取るためには、蚕室の温度が上がりすぎないよう微妙な調節が必要なのだ。
繭玉による現金収入は、土地の狭い山沿いの農家にとっては生活の大きな助けとなる。そのため、少しでも質の良い繭をと、改築する家も多かったという。
蚕をいとおしみ大切に育て上げた人々の心が、こうした家のつくりからもうかがえる。