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美しくつなぐことで課題を解決していく

クリエイティブディレクター・藤原大氏が語る『伝わる空気と見える空気』

クリエイティブディレクターとして、ユニークな手法でサイエンスとものづくり、社会と地域の人たちなど、さまざまな領域をデザインでつなぐ活動を続けている藤原大さん。具体的にどのようにして異なる世界をつなげているのか、伝え伝わる空気をどう捉えているのか、藤原さんならではの視点からお話いただきました。

水玉が湘南の街を美しくシームさせる

藤原さんのオフィスは、湘南の真っ青な海がドーンと眼下に広がる小高い丘の上にあります。正面を海にして三方が緑に囲まれ、潮騒と山の音が織りなすとても気持ちのよい環境です。藤原さんにお仕事を依頼するために、きっとこの丘の上まで訪ねてこられたであろうクライアントは多岐にわたっています。その中にはいわゆる企業だけでなく、地域に関わるプロジェクトの依頼も。

「弊社は、クライアント先の問題点と経営をデザインで無駄なくシームさせ、美しいビジネスのランディングを目指すデザイン&コンサルティングファームです。ここでの“シーム”は、つなぎ目の見えない美しいつなぎ目のこと。つなぎ目がボコボコしていると、そこでエネルギーが無駄になってしまうから、できるだけきれいにつないでいくのがデザインだと思います。

主に湘南をベースにしているので、この地域の発展のためのディレクションと一連のデザイン活動にも参画しています。“みずたまてん”は、200を超える店舗からなる6つの商店街がつながって1つの考えでイベントを行うもの。重要なのは、地域の人たちがどうつないでいくのかという仕組みを参加する皆さんと一緒に考えることでした。

ひとつひとつの水玉は、個性豊かな商店街の人たちや観光客で、そのアイデンティティを水玉に込めたというのがコンセプトです。点がつながって線になり面になっていくように、水玉がつながったり変化したりしていく。街づくりそのものでもありますよね。もちろん海が近いので、水のイメージもあります。」

藤原さんが、多くの人たちと共有できるデザインのきっかけになる方法として生み出したのが「カラーハンティング」というデザイン手法。自然や都市に存在する現実の色を、その場で水彩絵の具を調合し紙片に写し取った色をもとにして作品などを発表しています。

「この水玉の色も、実際に湘南の海の色を「カラーハンティング」したものです。夏になるとこのくらいの濃厚なブルーになるんですよ。その時の色を使っています。開催期間中は、商店街の参加しているお店に水玉の暖簾やフラッグがかかって、街が一気に水玉になります。風景が統一されるので、通りかかった皆さんが“きれいね!”と声をかけてくれます。」

化学の世界もデザインでつないで

藤原さんは、ダイキン工業も参加している、イノベーションを加速支援するためのアライアンス組織、Future Center Alliance Japan(FCAJ)のマイスターにも今年から就任。まさに企業や自治体、官公庁などを相互につなぎイノベーションを生み出す役割を担っています。

「“お見合いオジサン”という感じなんですが(笑)。イノベーションに参加してアウトプットも出します。そうしたイノベーションオープンラボのひとつの事例としては、常磐植物化学研究所でつくられているベジハーブ(VEGGIE HERB)というブランドがあります。ベジハーブは、植物の生命をサイエンスの知恵で抽出した都市生活に大自然の力を取り入れるためのブランドで、心と体を考え成分と味にこだわっている調味料が主な商品です。常磐植物化学研究所は、植物化学の専門企業として植物成分の抽出・分離・精製に関する幅広いノウハウを持つ歴史ある研究所ですが、一般消費者へ直接販売できる商品を開発したいということで、一緒にコンセプトを作るところから加わりました。

こちらは化学の専門家ではないので、先方と一緒に何度も練り直しながら企画していきました。化学というサイエンスとものづくりをデザインでつなぐ。パッケージからコピーワーク、ホームページなども含めてつくらせていただきました。ちょっとメディカルな高級感のあるニュアンスを感じていただけるのではないでしょうか。

自然のように、ゴミがゴミでなくなる社会へ

幅広い分野でさまざまな課題解決にデザインで取り組んでいる藤原さん。では今、もっとも注目していることはと訊ねると、意外な答えが返ってきました。

「ゴミ問題ですね。同じようにいわゆる死の問題だったり、もしくは排泄だったり、人間のあまり目を向けたくないものが美になってほしいと強く願うのだけれど、なかなかそう簡単にはいかないところにすごく興味があって。今まで手が伸びなかったところは、新領域として面白いんです。問題があるがゆえに解決してほしいことがある。そこに自然に目が向いちゃいますよね。

おそらくこうしたところにも、これからイノベーションがどんどん起こっていくのではないかと思います。さまざまな人によって難しいことをこなし、つなぎ目ができないように、効率よくつないで問題解決していく。その方法はどんどん優れたものになってきているので、自分たちの意識や人間の概念そのものが変わるようなことがあって、ゴミ問題もつなぎ目ができないように無駄なくシームしていくのではないでしょうか。

もちろん、何億年という時間をかけて自然の営みができたように、人間社会も無駄がないものになるにはそれなりの時間がかかるでしょう。ゴミがゴミでなくなる。自然にゴミはないですからね。うまくつながっていないからゴミという言葉になってしまうわけで、シームレスにきれいにつながるのは、相当に熟成した高度な社会だと思います。今はまだその途中のどこかなので、もっともっと時間がかかるでしょう。」

見えない空気は、見えて当たり前

最後に、見えない空気について、藤原さんがどう捉えているのかを聞いてみました。

「前からずっと不思議に思っていたことなのですが、1億年前の空気と今の空気って何が違うのだろうかと。例えば、ピラミッドの王室の完全に密閉させていた部屋の扉を研究者がはじめて開けた時の空気は、他の部屋の空気と何かが違うのだろうなと想像してみたり。もしも、1億年前の空気が入ったペットボトルがあったら、ワクワクしちゃうわけですよ。

もちろん、空気には窒素や酸素などの組成があるから、それぞれアブソリュートな表記にすれば化学式で表せます。でも、きっとそこに雑味やノイズがあると思うし、新たな価値創造につながるかもしれない。そこが面白い。今、空前の旅ブームですが、旅の目的が“空気を吸う”だったりすると、きっとどこの空気がいちばんいいという話になってビジネスが発生する。普通では吸えないんだけれど、ここに行くと吸えるから旅をしようといった行動につながっていくのではないでしょうか。

見えない空気ですが、天気予報のインフルエンザ予報のように、どんどん見えちゃうようになるのではないでしょうか。市場からの欲求は強烈にきますよ。“見えない空気”じゃなくて“見える空気”っていう。空気には温度などだけでなく膨大な情報が詰まっているでしょうから、どんな空気なのかとことん知りたいという欲求もあるでしょう。

今の情報社会では、 “見えない・知らない”ということがなくなっていきます。これはあくまで挑発的な言い方ですが、“見えない空気”というのは、逆に不思議ですよね。見えて当たり前で、もうバレバレなはずなのに見えないというのは、ちょっと問題があるんじゃないかと(笑)。もう全部、バレバレなんです。丸見えだけど、化学式だけでは表記できない、そうだなー、人の感情が作り出す面白さや意味合いを作っていくようなクリエーションができたら面白いかもしれませんね。」

Future Center Alliance Japan (FCAJ)
ベジハーブ (VEGGIE HERB)
みずたまてん

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