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潤いと豊かさをもたらすUXを創造する

経験価値のヒントは、常にユーザーのインサイトにある

より素晴らしい、よりワクワクするユーザー体験のために

私たちダイキンでは、見えない空気を「見える化」することで新しい価値を創造し、今までになかった上質な体験や感動を提供することに取り組んでいます。しかし、新しい経験価値(UX)を見つけ出し、製品やサービスに導いていくのは容易なことではありません。

UXをどのように考え、どうデザインしていくのか。過去の取り組み事例をもとに、今後重要になるプロセスやポイントをご紹介したいと思います。

エアコン嫌いの高齢者から「心の声」を聞く

「UX」とは、作り手がお客様に一方的に与えるものではなく、お客様の体験に基づく期待や想像を受け取り、期待を超えるサービスやデザインに変換して創造していくものかもしれません。だからこそ、作り手である私たちは、お客様の気持ちを最も理解し、言葉にできない心の声を吸い上げ、デザインしていくことが大切だと考えています。

その一例が、エアーコンディショナー「ラクエア」シリーズのリモコンです。このリモコンは、暑い夏に冷房を使わず、室内で熱中症を発症する高齢者の方が多いことに着目し、お客様の安心・安全を守るために開発したものです。

私たちはまず多くの高齢者の方々とじっくり対話し、なぜ冷房を使用しないのかを探りました。そうすると、最初の答えは「冷房は室温が下がり体が冷える」「リモコンの操作が難しい」といった声でした。これを受けて開発チームは、お客様の声を100%反映した「大きなボタン・大きな文字で、機能が少ない」リモコンを一次試作し、満を持して、ご意見を頂戴したお客様に見ていただいたのですが・・・意外なことに、「こんなに大きなボタンと文字のリモコンは格好悪い」「いかにも高齢者用のリモコンに見える」「孫に見せるのが恥ずかしい」・・・と否定的な声が多数出てきました。

どうしてそのようなギャップが生まれたのでしょう? さまざまな仮説を展開して二次試作に盛り込み、あらためて意見を尋ねたところ、見つけたのは「高齢者でも普通のリモコンを使いこなしたい」という、言葉にならない心の声でした。

そこで、開発チームは「機能を減らしたり、ボタンや文字を大きくする」ことに注力するのをやめて、コールセンターのスタッフや、デザイン心理学の専門家を巻き込んで、「高齢者でも使いこなせるリモコンとは何か」を徹底的に研究することにしました。

そして生まれたのが、「使いたい気持ちをそっと後押しする」ラクエアリモコンです。

このリモコンは、「リモコンが苦手な人」にはシンプルに見えて、「リモコンが苦手でない人」には多機能に見えるという、心理学上の仕掛けを取り込んでいます。

また操作性以外にも、室温低下や熱中症発症を予防する、健康を気遣う機能を搭載し、これまでの不満を、「使ってみたい」「自慢したい」という喜びに変えることに成功しました。UXを刷新する革新モデルとして注目いただき、グッドデザイン賞、ユニバーサルデザイン賞(IAUDアウォード)を受賞しています。

UXの創造には、このように、ハイサイクルでプロトタイピングを制作しながら、お客様の「声にならない心の声」を導き出すことを大切にしています。

お宅訪問で見つけた、今までにないUXのカタチ

お客様自身や社会でもまだ気がついていない潜在ニーズを見つけ出すことで、これまでにないUXを実現できることがあります。ダイキンの事例では、水捨て不要の除湿機「ルームドライヤー」の開発がそれにあたります。この商品は、ルームエアコン「うるるとさらら」の開発時に実施した、家庭訪問調査から気づきを得て誕生しました。

最初の調査では、予想通り、エアコン暖房を使用している家庭では空気が乾燥し、加湿が必要であることが浮き彫りになりました。しかしその一方で、住宅の気密化にともない、北側に面する部屋や、暖房運転を停止した後のリビングでは、結露やカビなども多く発生していることがわかりました。

そこで、冬の住まいには加湿だけでなく、除湿も必要という視点を持ち、「人の健康」に加えて「家の健康を守る」新しい除湿機を提案することにしました。

家の健康に求められる除湿要件は、「水を捨てなくていいこと」と、「冬でも除湿できること」の2点でした。

しかし、現状のポータブル除湿機は、タンクが満水になると運転が停止するので、留守の多い家では連続運転が行えなかったり、これまでのエアコンでは、冬は外気温が低下するため、除湿を行うことができないという課題がありました。

そこで着目したのが「湿気を水に変えずに気体のまま屋外に排出する技術」です。これなら除湿機からタンクが消え、水捨ての手間がなくなります。今までなかったこの発想は、これまでのエアコンやポータブル除湿機とは一線を画して「家の健康を守る」という新しいトレンドを創り出しました。

成功の裏には、デザイン思考に加えて、緻密な現場調査の実行によるデータの蓄積があったからかもしれません。

新しい文化として根づくUXを

新しいUX創出の共通点は、お客様自身も気づいていない「心の声」を吸い上げて、新しいソリューションを提案することです。心の声を吸い上げるには、お客様の生活に入り込んで気づきを得ることが不可欠になります。時間もかかりますが、発見したときには大きな喜びに変わります。

江戸時代、近江商人は、お客様も市場もハッピーにする「三方よし」という商売スタイルを実践してきました。私たちもこの精神を受け継いで、社会に新しい風を起こしていきたいと思っています。

そして、UXの創造をスピードアップするために近年取り組んでいることは、「創造したい未来の世界をビジュアルに落とし込む」ことです。

具体的には、映画のワンシーンのようなイラストを制作して、お客様や技術者と共有することで、潜在発想を引き出します。

また、現在のデザインポジションを明らかにして、次のアクションに落とし込む試行も始めています。これが実現すると、これまで賛同を得るのが難しかったデザイン開発の目標を、技術者の皆様と共有できるようになり、お客様視点での研究開発を後押しできます。

これらのノウハウを今後も拡大・蓄積し、ダイキン独自のUX創造プロセスを実行することで、デザイン思考によるコトづくりに、新しい風を起こしていきたいと思います。

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