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活動のお知らせ

活動レポート

2015年4月-2016年3月の活動レポート

カツラの森、命あふれる川の復元事業

岩尾別川沿いの防鹿柵が完成しました

岩尾別川沿いにかつての森をよみがえらせるためには、苗木や若い木がシカに食べられないよう約3メートルの背の高い柵を作って木々を守ることが一つの有効な手法となっています。ダイキン従業員を含む全国からのボランティアが協力し、岩尾別川沿いで計画されていた防鹿柵(3カ所、総計約1,200m)の設置作業がすべて終了しました。3基とも大きな破損やシカの柵内への侵入形跡はなく、柵の中に植えたカツラの苗木も、多少の枯死はあるものの、大部分の苗は順調に生育しています。

2015年度は150メートルの防鹿柵を完成させました 2015年度は150メートルの防鹿柵を完成させました

岩尾別川に設置した防鹿柵岩尾別川に設置した防鹿柵

最後に設置された防鹿柵最後に設置された防鹿柵
柵内のカツラ苗。順調に育っています柵内のカツラ苗。順調に育っています
資材の運搬資材の運搬

土手を撤去したエリアの効果検証を行っています

岩尾別川の森を再生し、生き物が棲みやすい川を取り戻すため、かつて人工的に造った土手を撤去し自由な川の流れを復元しました。2015年度はこの作業地の測量と空撮によるデータ収集、水位変化の解析を実施しました。

5月の岩尾別川の状況。融雪による増水が発生中
                    5月の岩尾別川の状況。融雪による増水が発生中
8月の同地点の状況。特に大きな変化はなく安定した状態が続いています
                      8月の同地点の状況。特に大きな変化はなく安定した状態が続いています

植物や動物たちについて調査をしました

岩尾別川沿いに設置した防鹿柵の効果を検証する調査では、柵外に比べて柵内の植物の育成状況が良好であることがわかってきています。

2015年度は新たに防鹿柵外のシカの出没頻度を把握するための自動撮影カメラを設置しました。

防鹿柵へ近寄るシカを捉えた写真 防鹿柵へ近寄るシカを捉えた写真

河畔林が再生すると川面に木陰をつくり、川の温度を適度に保ちます。そして、枝葉から落ちる虫は川の生き物にとって、重要なエサになっています。2014年度の調査では、一時は姿を消していたサクラマス(川で生まれ海へと下るサケマスの仲間)の親魚2尾、産卵床1床を確認しました。また、魚の生息状況を知るためオショロコマやヤマメ計324尾を採取し、体長などの計測を行いました。

産卵状況調査の様子
                      産卵状況調査の様子
確認されたサクラマスのメス(写真中央)
                        かつての命あふれる川の復元に一歩近づいています!確認されたサクラマスのメス(写真中央)
かつての命あふれる川の復元に一歩近づいています!

知床の人とヒグマの共存事業

新たな電気柵の立ち上げが完了し、当初計画していたすべての電気柵を稼働させました

羅臼町では、ヒグマたちが冬眠から目覚める雪解けの季節から再び眠りにつく冬の初めまでの間、彼らが人の生活圏に入ってこないように電気柵を稼働させています。

6月までにキキリベツから相泊区間の約7kmと羅臼市街地北側2区間の約1.5kmの電気柵を稼働させました。また、羅臼市街地南側に電気柵約0.9kmを新たに立ち上げ、通電を開始しました。これにより当初計画していたすべての電気柵が稼働したことになります。

海岸線に細く長く伸びる羅臼町の電気柵設置作業の様子。斜面に立ちながら行う作業は、なかなか体力が必要 海岸線に細く長く伸びる羅臼町の電気柵設置作業の様子。斜面に立ちながら行う作業は、なかなか体力が必要

2015年度、ヒグマが羅臼町市街地北側電気柵の外側を柵沿いに移動する姿が目撃され、電気柵を嫌がるような行動が確認されたり、自動撮影カメラには電気柵に触れてヒグマがショックを受けた様子が撮影されたりするなど、電気柵の効果が見て取れました。しかし、年によってヒグマの目撃件数は大きく変化するため、これら電気柵の効果をきちんと検証するためには、今後長期間に渡ってモニタリングしていく必要があります。

いままで明らかにすることが難しかった冬眠明け直後のヒグマの行動が明らかになってきました

人とヒグマの距離が近い知床では、ヒグマの存在を受け入れながら事故を防ぐ人間の知恵が試されています。ヒグマと上手く付き合っていくためにはまず私たち人間がヒグマのことを知る必要があります。「このヒグマのお父さんって誰?」、「お母さんと別れた子グマたちはどこへ行くの?」など、まだまだ多いヒグマの謎を一つひとつ解き明かしています。

GPS 標識を装着したヒグマの行動の軌跡から、冬眠明け直後の行動も明らかになってきました。2014年0歳の子グマを連れていた母グマがかなり広範囲を移動している一方で、2015年に生まれたばかりの子グマを2頭連れている母グマは、冬眠明けからほぼ動かずに同じ場所に居続けるというデータが記録されています。子どもの有無や年齢の違いによってメスグマの移動範囲に大きな差がありそうです。

5ヶ年計画のすべてのフィールド調査が終わり、斜里町・羅臼町の捕獲個体から得られた捕獲個体のほとんどを網羅する712頭分もの遺伝子データの解析が可能となりました。これだけ多くのヒグマたちの血縁関係がわかっている地域は、世界でもほとんどありません。

この調査結果を生かしてヒグマの生態を解き明かし、今後も人とヒグマが共存できる道を探っていきます。

※ 本WEBサイトに掲載されている写真は、公益財団法人 知床財団のご協力によるものです。

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