ファインケミカル

今月のコンテンツ紹介

「フッ素よもやま話」

東京薬科大学 名誉教授
小林義郎

第76回 秋の声を聞きながら

「最新フッ素関連トピックス」

株式会社FT-Net 代表取締役
松尾 仁

「フッ素化合物の酵素合成」

フッ素よもやま話

第76回 「秋の声を聞きながら」

私がこの原稿を執筆しているのは、9月下旬です。長い人生で今までも台風や地震の被害をテレビや新聞を通じて知ってはいましたが、今回は津波に加えて、原子力発電所の事故や、それに伴う放射能汚染、特に海産物や農作物に及ぼす被害、更に同じタイミングで記録的な集中豪雨と来ては、"日本は大丈夫かな?"と次世代以後の諸君を心配する昨今です。私には孫はなく、後世に是非残さなければならない程のDNAでもないので、これで一巻の終りでも結構だと思いますが、私が学界を通じて知っている日本の若者の中には、期待出来る俊秀が少なからずいます。これ等の諸君の応援団長として、少しでもお役に立てば、どうぞ御利用下さいというのが、現在の心境です。そんな訳で、編集スタッフから"ストップ"がかかる迄、相変わらずの駄文を続けさせて頂くことにします。

その一:「逆転劇の妙味」

8月29日は民主党の党首選挙が行なわれました。(前回のこのWEBマガジンで、菅首相が中々辞めてくれないと書いたばかりですが、突然お辞めになりました)。
テレビの解説者は、どの局も小沢一郎氏の推す海江田氏を本命とし、小沢グループの大量票が彼に転り込むと予想しており、新聞の予想も大体同調していました。海江田氏は東京第1区の常連で、私も彼の快勝を当然と思っていました。第1回目選挙の結果は1位 海江田氏、2位 野田氏の順でしたが、海江田氏が絶対多数でないのが意外でした。
第2回目の決戦投票が行なわれ、ここで予想外の大逆転が起き、大穴の野田氏の勝利に終りました。
逆転劇はスポーツ観賞好きの私には、たまらない魅力で、プロ野球、高校野球、サッカーを始め、勝敗が係るすべてのスポーツで観客を沸せる訳です。
野田氏が勝利宣言の中で"ノーサイド"という、紳士の国、英国に生れたラグビー用語を用いたのも気に入ったのですが、9月中旬には、もうケチが付きはじめました。どうなりますやら?

その二:「両国の花火」

今年はテレビで、豪華なゲスト陣と共に隅田川の花火大会を眺め、色々な事を想い出しました。太平洋戦争開戦前だと思いますが、若い頃、両親と共に両国の倉庫街のビルに作られた座席から見た記憶や、東大薬学科の助手の頃、皆で屋上でビールを飲みながら、遥かに眺めたことや、数年前、家内と二人で乗合の屋形船に乗りましたが、屋根が邪魔で余りよく見えなかった事などを想い出した次第です。   
ただ、この何年かの間に技術的には、可成りの進歩がうかがわれ、興味を覚えました。

その三:「小澤征爾さん、頑張れ!!」

前々回のこのWEBマガジンに、親類のピアニストの葬儀で小澤征爾さんと会話する機会があり、サインを頂いた件を書きましたが、その後小澤さんはウィーンでオペラを指揮し大成功され、中国にも招かれて行く予定と報ぜられました。最近わが国と中国は、外交的には、すっきりしない関係にあるのですが、芸術には国境は無く、小澤さんが中国でタクトを振れば、中国の人々も熱狂的に拍手するのが目に見えてくるので、将に世界的巨匠の快挙と云えると喜んでいました。然し昨日の新聞には、小澤氏は体調不良のため中国行きをキャンセルし、帰国入院する由。中国へのメッセージとしては、「必ず病気を治して、また行きます」との事です。
私は紙面の調子から、小澤さんの体調は、もう御自身も覚悟して居られるのではないかと察し、益々"頑張れ!!"と奇跡的回復を祈るばかりです。

その四:「渋谷界隈で見る、若い女性達についての感想」

その(1):若い女性の服装
この夏は記録的に暑かったので若い女性達は随分大胆なコスチュームで、街を闊歩して呉れました。中には下着のまま街に出て来たような方々も少なくありませんでした。何年か前に駅のエスカレーターで鏡を活用して、教職を棒に振った先生が居ましたが、昨今は鏡は無くても、こっちが目をそむけたくなる様なシーンによくお目にかかります。卑劣漢を弁護する気は全くありませんが、女性側にも責任の一端はあるのではないでしょうか?

その(2):若いママさんの度胸
駅やデパートの廊下を、猛烈なスピードで走り廻っている幼児を毎日何人か見ます。中には、ピカピカに磨き上げた廊下もあります。幼児達は無邪気に走っていますが、私の様な老人から見ると、転んだら大怪我をするのではないかと冷や冷やします。然し当の母親は平然として放任しています。これからの幼児達は、転び方も上手なのでしょうね。また少し位の痛さは我慢し馴れているのでしょう。 よく考えると、私の頃の小学校の校庭はコンクリート張りで、転べばひざ小僧は皮がむけ出血しました。保健室で赤チン(マーキロ)を塗ってもらい、ひどければ包帯を巻いてもらった事も度々でした。子供はこうやって育つのですね。

その(3):若い女性の会話
私は原稿を書く為に渋谷駅付近の喫茶店に毎日出掛けますが、可成りの頻度で隣のテーブルからの若い女性同士の会話が耳に入って来ます。私が世代の違いを感ずるのはボキャブラリーの違い、特に"超(チョー)"という接頭語の度々出てくることです。それから"ケイタイ"によるメールの会話は、以前にも書きましたが、確かに凄いと感心します。

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最新フッ素関連トピックス

「フッ素化合物の酵素合成」

1、はじめに
フッ素化合物の合成について酵素を触媒として使用する方法が開発されてきた。特に不斉合成については真価が発揮できそうであり、また特殊なポリマー合成においても興味ある研究がなされているので紹介したい。
2、不斉合成
gem-ジフルオロシクロプロパンが液晶の材料として注目されてきたが、伊藤らは、下記に示す螺旋状のgem-ジフルオロシクロプロパンの誘導体を化学-酵素触媒を用いて合成した。1)
Cyclohexane-1,4-dionを出発物資として、2つのジフルオロプロパン環をシクロヘキサンで繋ぐ構造1を化学触媒を用いて合成した。その後、下図に示すように、酵素触媒Lipaseを用いて光学活性体とすることに成功した。各種Lipaseを用いた場合の光学収率などをTable1に示す。光学的にピュアな化合物が得られている。
本化合物を下図の9e誘導体とすると優れた液晶性を示すことがわかった。
北爪らは、イオン液体中でフッ素化合物の不斉還元反応を酵素を用いて行い、下表の結果を得ている。2)この反応では水の存在が重要であることがわかった。
3、位置選択的合成
Steve S.F. Yuらは、下図に示すようなgem-difluorinated octanesの酵素触媒による位置選択的ヒドロキシル化反応を検討し、11が選択的に合成されたことを報告している。3)
4、機能性材料合成
Y.Poojaliらは、下図に示すシリコーン含フッ素脂肪族ポリエステルアミドをLipaseを触媒として合成した。4)
Table3に各種組成のポリマーの分子量と分子量分布(PDI)を示す。
柔軟なシリコーン部位と剛直なフルオロアルキレン部位が主鎖に並ぶユニークなポリマーでOFODの結晶性の白色固体からAPDMSの増加とともにアモルファス性が増大し、粘性液体からワックス体に変化した。
Debuigneらは、下図に示す、糖とフッ素含有カルボン酸とをLipaseを触媒として反応させ界面活性剤を合成した。ここで、CALBはCandida antarctica lipaseである。反応は80℃24時間で40%程度の転化率であった。界面活性能についてはFigure1に示す。低い表面張力と臨界ミセル濃度cmcが得られている。
5、おわりに
酵素を触媒として用いたフッ素化合物の合成は、温和な条件での光学あるいは立体選択性の高い化合物やユニークな機能材料の創出などの可能性があることが分かった。今後、重要な分野に発展していくことが期待される。


文献
1) Toshiyuki Itoh et al Journal of Fluorine Chemistry 130(2009) 1157
2) Tomoya Kitazume et al Tetrahedron Letters 47(2006) 4619
3) Steve S.F. et al Tetrahedron Letters 52(2011) 2950
4) Yadagiri Poojari et al Polymer 51(2010) 6161
5) Antonie Debuigne et al Carbohydrate Research 346(2011) 1161
発行:ダイキン工業株式会社 化学事業部 ファインケミカル部 WEBマガジン事務局
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